技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
3D カメラを用いたアルミ溶解炉操業の
省エネ支援システムの開発
Development of energy saving support operation system for aluminum melting furnace with 3D
camera
材料重量の算定によりエネルギーロスを減らし、省エネに貢献
ダイカスト工場において多量のエネルギーを消費するガス燃焼式の金属溶解炉では、炉
内材料の溶け具合を適切に把握できずに空焚きとなり、エネルギーロスが発生していた。
これまでにもこのロスを低減する省エネ支援システムを開発したが、今回、画像解析によ
り炉内の未溶解重量の算定精度を向上させる機能改良を行い、更なる省エネルギーを実現
したので報告する。
1
2
背景と目的
執筆者
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
棚橋 尚貴
材料重量算定システムの開発概要
ダイカスト製品は、金属材料をガスバーナで溶解し、金
(1) 開発の経緯
型に注いで冷やすことで生産される(第 1 図)。この工程
溶解保持炉に投入する材料重量を計量する機器としては
で、第 1 図の保持室の溶湯が満杯になると、 溶解バーナ停
第 2 図に示すロードセルがあるが、インゴットを搭載した
止など溶解速度が不規則で溶け具合が把握できず、 第 1 図
材料カートの総重量は 300kg 以上となることから、材料投
左上に示す空焚きとなりエネルギーロスが生じていた。そ
入の都度、スロープの昇降で作業負荷が大きくなる。一
こで、 第 1 図の①~④の計測で最適な材料投入時期をお知
方、ロードセルの地下への埋め込みは、既設投入機では対
らせする省エネ支援システム『MiELDieCAST』を株式会
応困難な場合があるほか、高価なロードセルに加え、設置
社トーエネックと共同で開発し、 省エネルギー運用を実現
工事も必要となり、大幅な
した。
コ ス ト 増 と な る。 そ こ で、
今回、更なる省エネルギー運用によるランニングコスト
既設投入機に後付けで容易
低減を図るため、投入する材料の画像を解析して重量を
に取り付けが可能なカメラ
算定する新規の重量算定システムを開発し、株式会社ジェ
を用いた簡易重量算定シス
イテクト岡崎工場様のご協力を得て、フィールド検証を
テムを開発した。
行った。
(2) 重量算定手法の検討
み え る ダ イ カ ス ト
第 2 図 ロードセルによる計量
まず、汎用カメラでカート内の重量既知の材料画像か
ら、カート底面に対する材料堆積エリアの面積比を算出
し、重量毎に同様の画像を得て、重量と面積比の相関式を
求めた。この相関式に基づき、重量未知のカート内材料の
空焚き
切替スイッチ
で材料種別
を選び、投入
重量を算定したが、材料投入機内は非常に暗く、部品形状
インゴッ
インゴット
不良品
返り材
②溶解ガス流量
④満杯検知
により、かさ比重も大きく変化したことから、この手法は
適用できなかった。
そこで、3D Time-of-Flight カメラ ( 以下、3D カメラと
記す ) でカート内の材料を上方より撮影し、二次元の画像
情報ならびに三次元空間座標の情報(距離情報)を取得し
溶解室
①投入釦 保持室
材料投入機
材料投入
タイミング
製品
返り材 お知らせ
モニタ
溶湯
溶解保持炉
みえるダイカスト
③ショット数
ダイカストマシン
ダイカ
MiELDieCAST
た。3D カメラは、赤外光を被写体に照射し、撮影エリア
内の各位置からの反射光がカメラに戻るまで時間を計測し
て、各位置の距離を算出するものである。この原理を応用
し、重量既知のカート内材料の体積を算出した(第 3 図)。
第 1 図 ダイカスト生産工程と省エネ支援システムの概要
重量(カート内充填量)を変えて同様に算出し、重量と体
積の相関式を導出した。さらに AI の活用でインゴット先端
部の形状を学習させてインゴット(新材)と返り材(製品
分離後の端材)を判別し、重量算定精度を高めた。
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
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