技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
高熱環境下における放射測温システムの開発
Development of Radiation Temperature Measurement System under Hot environment
600℃以上の材料の温度を放射率の設定なしで高精度に計測
高熱環境下での被加熱物の測温は、品質管理の観点でとても重要である。特に 1000℃
以上の溶解金属の測温は、市販放射温度計では誤差が大きいため、熱電対を用いた手作業
で行われており、無人化が求められていた。そこで、600 ~ 1600℃の高熱環境下で高
精度の測温が可能な放射測温システムを開発した。
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背景と目的
執筆者
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
棚橋 尚貴・藤本 貴之
システムの概要
各種製造工場において、被加熱物の測温は、品質管理
(1) 機器構成と機能概要
上、非常に重要であるが、熱電対を用いた手作業で行われ
開発システムは、第 2 図に示す通り、カメラ、レンズ、
る鋳造工場等では、高熱作業の負荷軽減のため、無人化や
フィルタ、カメラケーブル、PC(温度解析ツール搭載)よ
自動化が求められている。1400℃以上にもなる鋳鉄溶湯
り構成される。カメラを所定の位置に固定し、常時監視
の測温状況を第 1 図に示す。特に、多数の鋳型に連続的に
状態にすることで、画角に計測対象の高温被加熱物が映っ
溶湯を注ぐ(c)の注湯工程では全数測温が困難で、取鍋 1
たタイミングで、無人かつ自動的に測温することが可能で
杯に対し、最初や最後の注湯の測温に留まる。
ある。
鋳鉄溶湯の表面は大気中の酸素等との反応で、スラグや
また、オプション機能となるが、鋳造機制御盤内の PLC
ノロと呼ばれる金属酸化膜が形成され(第 1 図(a))、材
と連携させることも可能である。例えば注湯工程におい
質や色目の変化することから、一般的な放射温度計では高
て、計測開始に対応する信号を PLC から取得して瞬時に撮
精度に測温することができなかった。
影し、計測・解析結果となる温度データをリアルタイムに
そこで、600 ~ 1600℃の高熱環境下において、高精度
PLC 側に送信する。この機能により、1 回の出湯毎にリア
の測温が可能な非接触式の
ルタイムに温度を把握することができ、品質管理等に活用
放射測温システムを開発
することも可能となる(第 3 図)。
した。
なお、本開発品の鋳造工
PC
場における適用評価は、中
央可鍛工業株式会社さまの
ご協力を得て、実施した。
(a) 鋳鉄溶湯
第 2 図 放射測温システムの機器構成
(
)
(b) マグネシウム添加工程 (c) 注湯工程
第 1 図 鋳造工場における鋳鉄溶湯の温度計測状況
PLC
PC
第 3 図 操業設備とのシステム連携
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
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