技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
工場向けワイヤレス型オイルミスト濃度・温湿度計測システム
「MieruTIME OILMIST」の開発
Development of“MieruTIME OILMIST”, a wireless oil mist concentration/temperature/humidity measurement system for factories
Visualization of the oil mist environment inside the factory and use it for countermeasures
工場内のオイルミスト環境を見える化することで対策に活用
当社は九州計測器(株)、中部電力ミライズ(株)と共同で、オイルミストや粉塵の濃
度と、温湿度の空間・時間変化を表示できるワイヤレス型オイルミスト濃度・温湿度計測
システム「MieruTIME OILMIST」を開発した。本システムにより、工場内のオイルミ
スト濃度や温湿度分布が見える化できることで、高濃度・高温度箇所の特定や環境改善対
策の立案に活用できる。
執筆者
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
中山 浩
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開発の背景と目的
ウド接続に対応している。計測は 1 分間隔から設定可能
で、お客さまの要望に合わせてシステムを構築することが
できる。
金属部品の切削・研磨工程を有する工場では、その工程
で発生するオイルミストや粉塵、温熱の偏りによる作業環
境の悪化が課題である。近年の作業環境改善意識の高まり
により、工場内のオイルミスト濃度、粉塵濃度、温湿度分
布等を見える化し、適切に対策することが求められている。
そこで、当社は、九州計測器(株)および中部電力ミラ
イズ(株)と共同で、濃度や温湿度を計測するワイヤレス
型の小型センサを工場内各所に配置し、無線でパソコンや
クラウドにデータを集約し映像化することで、工場内環境
を見える化できるシステム「MieruTIME OILMIST」を開
発した。
第 1 図 MieruTIME OILMIST の外観
工場内環境の空間・時間変化が確認できることで、例え
ば局所排気、空調の追加設置や給気・換気量の運用変更な
どの対策が立てやすく、工場内環境の改善が実現できる。
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開発システムの概要
第 1 表 MieruTIME OILMIST の仕様
項目
親機
子機
150x120x50mm
44x64x25mm
重量
350g
100g
通信方式
Ethernet
Wi-Fi
(2.4GHz/5GHz)
920MHz UNISONet
920MHz UNISONet
寸法
第 1 図 に 開 発 し た「MieruTIME OILMIST」 の 機 器 外
観、第 1 表に仕様を示す。機器は親機と子機から構成され、
1 台の親機に対して、子機は 99 台まで接続可能である。親
機と子機の間は 920MHz 帯特定小電力無線を用いている。
920MHz 帯は、従来の免許不要な無線周波数 (2.4GHz 等 )
計測範囲
計測間隔
電源
温度:0 ~ 40℃
湿度:0 ~ 100%RH
ミスト濃度:0 ~ 1000㎍ /m3
1 分間隔から設定可能
AC100V
USB Type-C 接続
と比較して、工場内で繋がり易い周波数帯である。さらに
子機間でバケツリレー的に通信するマルチホップ通信機能
を採用することで、無線通信の信頼性を向上させている。
子機はミスト濃度および温湿度を計測可能なセンサ、基
盤、アンテナで構成される。ミスト濃度センサはレーザ散
乱 方 式 を 採 用 し、4 種 類 の 粒 径 範 囲(PM1.0,PM2.5,
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開発システムの特長
(1)オイルミスト濃度分布を容易に見える化
従来、工場内のオイルミスト濃度を計測するには、ピエ
PM4,PM10)での濃度が出力される。各種センサの調子
ゾバランス式や赤外線を利用した光散乱式の粉塵計が使わ
が悪くなった場合には、お客さま自身で容易に交換できる
れている。これらの粉塵計は 1 点での計測であり、工場内
仕様となっている。
で濃度分布を得るには、作業者が場所を移動しながら計測
親機は子機からの情報を収集して保存する機能を有し、
する必要があり、時間と労力を要していたが、本システム
工場内の社内 LAN や PC への接続(ローカル接続)、クラ
は一旦設置すれば容易に見える化ができる。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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