技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
ヒートポンプを用いた洗浄液加温システム
「エコdeヒートEX」の開発
Development of“Eco de Heat EX”cleaning liquid heating system using heat pump
Contribution of decarbonization for factories by introduction of unit with high energy savings
高い省エネ性を持つ機器導入により工場の脱炭素化に貢献します
執筆者
当社は(株)ディグリーおよびファインマシーンカタオカ(株)、中部電力ミライズ(株)
と共同で、主に工場のお客さま向けに、ヒートポンプを用いた洗浄液加温システム「エコ
deヒートEX」を開発した。高い省エネルギー性とメンテナンス性を持つ本システムの導
入により、効率よく洗浄液を加温でき、お客さまが進める工場の脱炭素化に貢献できる。
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
中山 浩
1
開発の背景と目的
冷媒と温水を熱交換する熱交換器を配置するが、エコ de
ヒート EX では、新規開発したコイル式熱交換器を本体の
外側に配置することで、熱交換器のメンテナンス性を向上
金属製部品の生産工程では、切削や研磨等により部品を
させている。
加工した後、部品に付着する金属片や油分等の汚れを除去
また、従来は温水ヒートポンプを既設の洗浄機に取り付
するため、60℃程度に加温した洗浄液で部品を洗浄する
ける場合、制御盤、熱交換器、ポンプ、配管の配置をお
必要がある。現在は、洗浄液を加温する熱源として、蒸気
客さま毎に検討する必要があり、導入前検討に時間を要し
ボイラや電気ヒータを用いることが一般的であるが、工場
ていたが、開発機では、洗浄機への接続を前提とした設計
の脱炭素化を志向するお客さまの増加に伴い、エネルギー
となっており、ヒートポンプの制御は洗浄機から行うこと
効率の高いヒートポンプによる加温方法に注目が集まって
や、熱交換器、ポンプ、配管の配置を考慮したことによ
いる。
り、導入時の設計負担を大幅に軽減した。
ヒートポンプを用いて洗浄液の加温を行う場合、多くは
洗浄液と温水を熱交換するためにプレート熱交換器を使
用するが、洗浄液に混入する汚れが熱交換器内に堆積し、
詰まりが発生した場合、専門業者により熱交換器を分解し
たうえで、洗浄が必要になる等、メンテナンス性が課題で
あった。また、従来の加温システムの導入にあたっては、
洗浄機への接続に必要な周辺設備の改修作業やコストも課
題となっていた。
そこで、この課題解決のため、中部電力株式会社は、株
式会社ディグリー、ファインマシーンカタオカ株式会社お
よび中部電力ミライズ株式会社と共同で、ヒートポンプを
用いた新しい洗浄液加温システム「エコ de ヒート EX」を
開発した。
開発システムは、従来システムに比較して熱交換器洗浄
第 1 図 エコ de ヒート EX 外観
が容易になったことに加え、洗浄機への接続を前提とした
加温システムとしたことにより、ヒートポンプ導入に伴う
改修作業やコストを低減でき、洗浄機を利用するお客さま
の導入障壁を低減した。
また、従来は加熱された冷媒と洗浄液の熱交換に温水を
項目
性能
定格加熱能力 (kW)
13.0
定格 COP ※ 1
3.14
熱源
空気熱源
介していたが、開発システムでは冷媒と洗浄液を直接加温
温水取出温度 (℃ )
40 ~ 65
するため、従来の温水ヒートポンプのシステムと比べ、高
温水流量範囲 (L/min)
50 ~ 250
外気温度使用範囲 (℃ )
5 ~ 43
効率かつ省スペース化を実現した。
2
開発システムの概要
第 1 図に「エコ de ヒート EX」の外観、第 1 表に基本仕
様を示す。従来の温水ヒートポンプの多くは、機器内部に
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第 1 表 エコ de ヒート EX の仕様
技術開発ニュース 2024.03/No.168
冷媒
R134a
外形寸法 (mm)
本体 :H2,250×W1,300×D570
熱交換器:H1,350xW450xD450
製品重量 (kg)
本体:250kg、熱交換器 70kg
※ 1 外気乾球温度 25℃、外気湿球温度 21℃:洗浄液入口温度 60℃、
出口温度 65℃条件
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