技術開発ニュース No.168

- ページ: 42
-
研 究 成 果
Results of Research Activities
食品スーパーにおける天井カビ抑制効果の検証
Verification of mold suppression effect on ceilings in food supermarkets
執筆者
従来、食品スーパーでは、冷蔵冷凍ショーケース周りの天井にカビが発生することが多
い。衛生および清潔感が求められる食品スーパーにとって、天井のカビは対応すべき課題
であるが、適切な対策を模索している現状がある。そこで、当社は天井におけるカビ抑制
効果を確認するため、気流による乾燥効果や銀イオン等を利用したカビ抑制技術の要素試
験を行うとともに、実店舗での検証を行った。
1
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
薮崎 良介・中山 浩
(2)試験結果
背景と目的
9 日間培養した結果を第 1 写真に示す。写真に示すよう
に、カビは試験区 No.1(湿潤状態)で発生し、No.2(乾
食品スーパーでは、梅雨から夏季にかけて、冷蔵・冷凍
燥状態)で発生しなかったことから、乾燥による抑制効果
ショーケース周りの天井にカビが生えることによる見栄え悪
があることを確認した。試験区 No.1、3 を比較すると、
化や店内衛生環境の改善が課題となっている。コロナ禍にお
試験区 No.3 は、カビが発生しなかったことから、本試験
いて、人が快適かつ安心して過ごせる「空間」
「空気」の提供
に用いた防カビボードには抑制効果があることを確認した。
は、ますますニーズが高くなっており、省エネルギーかつ衛
試験区
No.
生的な機器やシステムを開発することで、お客さまのニーズ
に応えることが可能と考えられる。そこで、当社は気流によ
初期
発育状況
9 日目
る乾燥効果や除菌効果が優れるとされる銀イオン除菌剤等に
着目し、食品スーパー向けにこれら要素技術を利用した天井
1
カビ抑制対策技術を開発する研究を実施した。
2
要素試験におけるカビ抑制効果検証
2
(1)試験概要
第 1 図に示すように、カビが増殖するには 3 つの要因
(温度、湿度、栄養)があると⾔われている。この中でコ
ントロールが可能な温度および湿度に着目し、乾燥による
抑制効果と、除菌剤が混入された吉野石膏(株)製の天井
3
石膏ボード材(以下、防カビボード)による抑制効果を確
認することを目的として試験を実施した。
第 1 写真 発育状況
試験では、通常の石膏ボートおよび防カビボードの3cm 角
カットピースを試験片として表面に黒カビ菌を塗布した。塗布
後、一定の温湿度で培養し湿潤条件の試験区において十分
にカビが発育するまで培養した。第1表に試験条件を示す。
3
カビ抑制対策の概要
(1)熱・気流による乾燥
従来、食品スーパーでのカビ対策の一つとして、天井面
に横吹きの送風機を取り付けて、乾燥させることが知られ
ている。この装置では、天井近傍の空気が吹出口から水平
に流れるため、天井に対し結露等の抑制が可能な程度の風
を行き渡らせる範囲の広さに限界がある(第 2 図 (a))
。カ
ビ発生の原因となりうる結露等の抑制に十分な量の風が、
第 1 図 カビの発生要因
天井に対し、効率良くより広範囲に行き渡る条件を確認す
第 1 表 試験条件
41
試験区 No.
試験条件
水浸漬
1
通常ボード 湿潤
有
2
通常ボード 乾燥
無
3
防カビボード 湿潤
有
技術開発ニュース 2024.03/No.168
ることを目的として、流体解析を実施し検討した。第 2 図
(b)に示すように、横吹きと風量が変わらない場合、横吹
きから上吹きに変えるだけで、1.6 ~ 2.1 倍の広範囲に乾
燥効果が得られ、さらに電気ヒータによる発熱を加えると
- ▲TOP