技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
2.0 ~ 2.4 倍になり、更なる効果を得られることがわかっ
生状況を定期的に確認した。ATP ふき取り検査(A3 法 ) と
た。フィールド試験では、既製品の電気ヒータ付き産業用
は、すべての生物の細胞内に存在する ATP(アデノシン三
送風機を用いて効果検証することとした。
リン酸)を酵素などと組み合わせて発光させ、その発光量
(Relative Light Unit;RLU)を測定するもので、表面の
汚れや付着菌量を簡易的に評価する方法である。
(3)試験結果
ATP の測定結果を第 3 図に示す。対策無では、6 月中旬
から値が急増しているのに対し、いずれの対策を行った場
(a) 横吹き
合には、顕著な値の増加は見られず、一定の抑制効果が確
認された。ただし、熱・気流による乾燥については、6 月
途中から約 1.5 か月の間、機器が停止していた時期があっ
たため、正確な検証ができなかった。試験終了時点で、対
策無では顕著にカビが発生していたが、特に防カビボード
や銀イオン除菌剤塗布ケースについては目視でカビの発生
が認められなかった。
(b) 上吹き
第 2 図 装置の設置および効果範囲のイメージ
[RLU]
(2)防カビボード
400,000
350,000
200,000
要素試験でも用いた除菌剤が混入された吉野石膏(株)
150,000
製の石膏ボード(不燃ジプトーン防カビタイプ)を使用し
100,000
ATP
た。このボードは通常の石膏ボードの母材および表面材に
300,000
250,000
50,000
除菌剤を付加したもので、商品化前の試作サンプルにて効
0
果検証することとした。
(3)銀イオン抗菌剤
第 3 図 ATP ふき取り検査結果
要素試験において抑制効果を確認した防カビボードは新
規店舗向けとしては有効であるが、既設店舗に適用するに
は、天井材を貼りかえる必要がある。したがって、選択肢
の一つではあるものの施工の手間やコストの観点から適用
が難しい場合がある。
そこで、国立大学法人岐阜大学の協力を得て、各種除菌
技術・抑制技術を調査した結果、銀イオンが他の除菌剤と
比較しても安価で天井のカビ防止剤として期待ができたた
め、既設店舗向けとして銀イオンを既設の天井材表面に塗
布し、天井材内部に浸透させて定着できるような手法を開
(a) 対策無し (b) 防カビボード
第 2 写真 10 月 30 日におけるカビ発生状況
発し、天井材に施工した。
4
フィールド試験におけるカビ抑制効果検証
(1)試験概要
5
まとめ
カビ生育に有利な環境下であっても、防カビボードと銀
各技術のカビ抑制効果の検証と天井面におけるカビの発
イオン除菌剤は一定の抑制効果を発揮し、目視にてカビ
生状況を把握することを目的として、某食品スーパーの冷
の発生が認められなかった。銀イオン除菌剤については研
蔵・冷凍ショーケース上部に各技術を適用し、適用有無で
究段階の抗菌剤であり、商品化へ向けて更なる検証が必要
のカビの発生状況を比較した。試験期間は、2023 年 3 月
であるが、防カビボードは検証試験を進める中で、吉野石
から 10 月末までの約 8 ヶ月間とした。
膏(株)から商品化されている。食品スーパーの天井カビ
(2)試験方法
抑制対策として、本技術が活用されることが期待される。
天井石膏ボードのカビ抑制効果を確認するため ATP ふき
取り検査による汚れを指標とする検査と、目視でカビの発
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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