技術開発ニュース No.168

- ページ: 44
-
研 究 成 果
Results of Research Activities
高圧配電線・充電部の離隔距離検出技術の検証
High-Voltage Distribution Line Detection Technology
高所作業車による間接活線工事の安全確保・作業省力化を支援する
デバイス実現を目指して
執筆者
)
500
800
400
100
200
400
1700
(
500
800
1700
中部電力パワーグリッド 配電部(以降「配電部」と表
(
背景と目的
200
1
先端技術応用研究所
情報技術グループ
中村 剛・難波 隆博
)
間接活線工事では作業者の安全確保のため、高所作業車のバケットが高圧充電部と離隔
距離を保つことが重要である。そこで 3D LiDAR と点群データを活用した間接検知方式
による充電部との離隔距離算定の技術を検証評価し、間接活線工事における安全確保や現
場作業の省力化を支援するデバイスの実現可能性を見いだした。
100
記)では、これまでの直接活線作業による配電線工事を
2025 年度以降、間接活線作業に切り替えていく方針であ
る。間接活線作業は充電部との離隔距離を保つことで安全
を確保するが、高所作業車のバケットが不用意に充電部に
接近した場合、接近に対する万全の防護を前提とした直接
活線作業よりもむしろ危険な状況となりうるため、作業者
の安全確保に係る現場監督者の監視はこれまで以上に責任
800
400
重大となる。現場監督者の負荷低減と活線作業の安全を両
立するには、充電部に対しセンシングなど、技術に基づく
安全確保が不可欠である。
第 1 図 離隔距離の検知対象領域
一方で、高圧配電線は一般的な障害物と比べて細い上、
材質的にも光への反射率が低いためセンシングの難易度が
高く、電線検出・測距に適した明確な技術は確立されてい
そこで測距センサでリアルタイムに対象充電部との離隔
ない。加えて、活線工事の際のバケットの進行方向および
距離を直接検知するのではなく、点群マップと 3D LiDAR
作業方位は工事場所により異なり、バケット周囲の全方位
の組み合わせによる間接検知を技術検証の対象として進め
を網羅する離隔距離検出が必要となる。
ることとした。
そ こ で、 様 々 な 測 距 セ ン サ の 評 価 結 果 を 踏 ま え、3D
LiDAR と事前作成した点群マップを組み合わせ、自己位置
の推定と配電線や充電部との離隔距離算出を点群空間内で
リアルタイムに行う間接検知方式を検証評価し、間接活線
工事支援デバイスの実現可能性を見いだした。
2
3
間接検知方式による充電部測距の概要
第 2 図に LiDAR による間接検知のイメージを示す。
離隔距離検出の要件
間接活線工事の支援デバイスに求められる充電部との離隔
距離検出対象の領域を第1図に示す。バケットの移動方向や
作業対象の方位は不特定のため、ピンク色に示す全方位の広
LiDAR
LiDAR
第 2 図 LiDAR による高圧充電部の間接検知
範な領域が対象となる。事前の各種測距センサの要素技術
43
評価においては、ステレオカメラおよび 3D LiDAR が屋外に
作業開始直前に作業者が LiDAR で作業箇所をスキャン
おいて高圧配電線のような細く光への反射率の低い物体に対
し、事前点群マップを生成する。その後 LiDAR を高所作業
し、良好な測距性能を確認していた。しかしながら、離隔距
車に載せ替え、LiDAR の周囲情報から点群マップ内での自
離検出の要件検討の結果、バケット周囲の広範な領域をこれ
己位置を推定し充電部との離隔距離を算出、近接状態でア
らのセンサを用いて充電部までの離隔距離を直接的に検出す
ラートを発報する。障害物を直接検知しないため、1 台の
るのは、センサ設置台数的に困難であることが判明した。
LiDAR で広範囲の領域の離隔距離を網羅できるのがメリッ
技術開発ニュース 2024.03/No.168
- ▲TOP