技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
半教師あり学習画像 AI による生産品目判別・
計量技術の検証
Application of Semi-Supervised Learning AI to Classification in Production Lines
生産ラインでのエネルギー原単位改善に向けた安価・簡便な生産情報
の取得
工場での生産ラインのエネルギー原単位改善には、エネルギー使用情報に加え、品目や
数量の情報が不可欠である。教師データ準備の手間が少ない半教師あり学習によって生成
した画像 AI と汎用的なエッジデバイスを組み合わせ、内製化により安価で簡便にリアル
タイムで生産品目の判別・計量が可能なデバイスの実現性を見出した。
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背景と目的
執筆者
先端技術応用研究所
情報技術グループ
中村 剛
グが必要であるのに対し、半教師あり学習では収集した教
師画像の一部へのラベル付けでモデル学習が可能である。
複数の半教師あり学習アルゴリズムを評価し、性能やパラ
IoT やクラウドといった ICT 技術は様々な業種や分野の
メータ設定の容易さなどから FixMatch[2] を用いて開発を
業務に進化をもたらした。中部電力ミライズにおいても、
進めることとした。
こうした技術を活用し、工場のユーティリティ設備である
コンプレッサの電力使用状況をリアルタイムでモニタリン
グ・分析してチューニングを行うコンプレッサ IoT 最適運
用サービス [1] など、新たなお客さま向けサービスの創出
へと繋がった。一方で、生産設備の省エネ・運用改善支援
サービス(エネルギー原単位の改善)では、電流や空気量
といったエネルギー使用量に加え、ラインを流れるワーク
AI
の品目や数量といった生産情報の収集が不可欠である。数
(
量は近接スイッチなどで容易に把握可能だが、品目情報は
)
お客さまの手書き帳票でしか提供されないなど、データの
精度や入手性に課題があった。
昨今の AI 技術の進展は著しく、画像 AI による判別を利
用すれば、生産ラインに設置したカメラ画像によりリアル
タイムな品目判別・計量の実現が期待できる。しかしなが
ら、一般的に画像 AI を活用するには膨大な量の学習データ
第 1 図 教師あり学習と半教師あり学習の比較(例)
(教師画像取得+ラベリング)が必要である。対象品目が
毎回不特定であり、設置が短期間なお客さま生産ラインの
省エネ支援の用途となると、都度大掛かりな学習データ準
備と AI モデル改修は画像 AI 技術活用の大きなハードルと
3
検証環境の構築と評価
なる。
学習データには、第 2 図に示す 11 種類の市販の煎餅菓
そこで、半教師あり学習 AI のアルゴリズムを用いて、学
子を生産品目に見立て、第 3 図のように背景差分法を用い
習データ準備の手間やコストを極力抑えつつ、汎用デバイ
てベルトコンベア上を流れる煎餅の画像をトリミングして
スやオープンソースソフトウェア (OSS) を活用した内製化
保存した(各 100 枚 x11 種類)。
により、安価で簡便な工場生産ライン向けの画像 AI 判別・
計量デバイスの試作・評価を行った。
2
半教師あり学習 AI の概要
半教師あり学習とは、少量のラベルありデータと大量の
ラベルなしデータを用いて学習させる AI モデル生成手法で
ある。第 1 図に教師あり学習との比較の例を示す。犬と猫
の判別を行う AI モデルを学習する場合、従来の教師あり学
習では収集した教師画像のすべてに犬または猫のラベリン
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
第 2 図 学習データ(煎餅 11 種類)
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