技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
AIを活用した水力発電計画策定支援システムの開発
AI-based system for planning hydropower generation
水系一貫で複数の水力発電所における発電計画の最適化を実現する
3 つの AI 技術
執筆者
再生可能エネルギーカンパニー
水力事業部
運用・システムグループ
中瀬 友之
川辺水力制御所
松尾 光徳
水系一貫での水力発電計画の最適化を目的とした、水力発電計画策定支援システムへ搭
載する各種 AI を開発した。AI は、(1) 流量予測 AI(2) 最適化計算 AI(3) 過去検索 AI の 3
つであり、これらを搭載する本システムの運用により発電計画の最適化に加え、計画策定
業務の効率化および技術継承にも寄与する。
1
背景
水力運用では、ダム流入量の予測を元に水資源を最大限
有効活用した最適な発電計画を策定することを目指してい
る。一方で、近年は線状降水帯やゲリラ豪雨が頻発し、国
主体で治水・利水を目的にダム運用自体の見直しが各地で
検討されており、今後水力発電にはさらなる運用の柔軟性
が強く求められると想定される。
加えて、従来の水系一貫での水力発電計画の策定業務
は、ベテラン社員のノウハウに頼ることが多く、その技術
継承も課題となっていた。
本検討では、当社管内で最も複雑な運用を行う飛騨川水
系を対象として、AI ソフトを用いて水系一貫での最適な発
電計画を提案する手法を確立した。これにより、発電量お
G
よび収入の増加を見込むことができるだけでなく、効率的
かつ今後の運用変化にも対応可能な柔軟性をもった発電計
A
画支援体制を構築することができる。現在、システム化の
B
工事期間中であり、
2024 年度中の運用開始を予定している。
C
D
2
水力発電計画策定支援システムの概要
第 1 図 飛騨川水系図
機械学習を採用しており、2019 ~ 2022 年度の各ダム集
水力発電計画策定支援システム(以下、本システム)
は、当社の中でも運用ルートが複雑な飛騨川水系(第 1 図
に示す)を対象に、(1) ダムへの流入量を予測する流入量
予測 AI、(2) ダムおよび発電所の運用制約を守りつつ 3 つ
の目的関数(発電量最大、売電金額最大、溢水量最小)が
最適となる発電計画を提案する最適化計算 AI、および (3)
翌日の諸条件に近い過去の日の計画を参照する過去検索
AI、の 3 つの AI ソフトを活用し、増電および増収を目指す
ものである。これらの AI を活用した発電計画策定フローを
第 2 図に示す。運用者は最適化計算 AI と過去検索 AI の結果
を参考に、翌日の発電計画を策定する。以下に各 AI につい
て説明する。
(1) 流入量予測 AI
発電計画の元データとなる各ダムへの流入量について、
第 1 図に記載する各ダムにおける流入量予測 AI(機械学習
アルゴリズム)を開発した。予測手法には教師データあり
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
第 2 図 AI 提案による発電計画策定フロー
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