技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
配電設備の3 次元データ取得のための安価なMMS開発
Development of Affordable Mobile Mapping System for 3D Data Acquisition of Power
Distribution Facilities
モービルマッピングシステムの導入拡大による 3D 点群データ取得の
拡大・加速
執筆者
配電設備の 3 次元データを取得するモービルマッピングシステム(以下、MMS)の導
入コスト低減に係る開発・評価を実施した。開発した MMS は高価なセンサ機器を安価な
ものに置き換えることで従来型 MMS と比較し導入コストを 1/6 に抑えると共に、特定
の機能・性能を軽減・排除することで要求される最低限の性能を有することを評価し、導
入可能であることを確認した。
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先端技術応用研究所
情報技術グループ
難波 隆博
章で、今回開発した安価な MMS(以下、開発機)の性能評
背景・目的
価を示す。
配電部門では、配電保守業務や建設業務の効率化・高度
4K
LiDAR
化を期待し、MMS の走行による沿道の設備の 3 次元点群
LiDAR
GNSS/IMU
データの取得を検討している。しかし、従来型の MMS は
(
)
高価であり、全社的な導入拡大には MMS の導入コストが
課題となる。そのため、MMS の低コスト化および要求性
能を満足する安価な MMS の開発・評価が必要となった。
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第 2 図 開発 MMS の機器構成・外観
MMS の機器構成と課題
MMS の基本構成を第 1 図に示す。MMS はレーザスキャ
ナ、全球測位衛星システム(以下、GNSS)アンテナ、慣
性計測装置(以下、IMU)、カメラ等で構成される。これら
の組み合わせにより、相対的な 3 次元座標と位置情報を利
用して、絶対座標による 3 次元点群データと映像を取得す
る。しかし、高度な計測精度が求められる構造物の調査・
測 量 で は、 高 性 能
IMU
な IMU を 採 用 し た
センサ機器が使用
さ れ る た め、 配 電
GNSS
第 3 図 開発 MMS で取得した 3 次元点群データ
PC
4
設備への導入には
コストが大きな障
壁となる。
3
第 1 図 MMS の基本構成
安価な MMS の開発
安価な MMS の性能評価
(1)3D オブジェクトの自動抽出技術
前述の通り、配電部門では MMS の導入に際し、配電線
と樹木の接近状況を調査する保安伐採業務を想定してい
る。この業務で MMS を利用する場合、MMS で取得した 3
次元点群データを、
「電柱抽出」→「架線抽出」→「障害
配電部門では、配電線と樹木の接近状況の調査支援など
物抽出」の 3 工程の解析により、配電設備や樹木などの 3D
に活用する観点から、従来型 MMS(以下、従来機)が有
オブジェクトを自動抽出する技術 1)の活用を検討している
している高精度なセンサ性能は全て必要ではないため、
(第 4 図参照)。
IMU をはじめとする高価なセンサ機器類を、最新で且つ安
価なセンサ機器類に置き換え、一部の高精度性能を軽減し
た。具体的には、IMU の精度を下げ、写真と点群の同期性
<
>
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能(点群への RGB 付与)を排除した。これにより導入費用
を約 1/6 に抑えることが可能となる(第 2 図:構成、第 3
図:開発した MMS で取得した 3 次元点群データ)。以下の
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
第 4 図 3D オブジェクトの自動抽出技術の工程
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