技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
(2)開発 MMS の机上性能評価
従来機が 4 月の撮影データであるのに対し、開発機は 6
前述した技術の各オブジェクトの抽出精度への主な影響
月の撮影データであり、樹木の成長により、架線の点群
要素は、「電柱抽出」では点群データの絶対位置精度が重
取得が困難になったことが主な原因と考える(第 6 図参
要であり、「電線抽出」では取得したデータの粒度が重要
照)。このため、撮影時期の違いを考慮すると、同等の
となる。これらの要素に関して、MMS 機器性能との関連
取得が可能と考えられる。
性を整理し、過去の研究で検証済の従来機と、本研究の開
発機の比較性能評価を第 1 表に示す。IMU 性能と点群相対
精度は劣るものの、取得可能な GNSS 数や点群密度につい
ては優れていることが分かる。
第 1 表 抽出精度要因で整理した開発機の比較性能評価
第 6 図 4 月・6 月の違いによる植生の変化例(井川地区)
(
GNSS
(
IMU
3
)
Heading 0.03°
Roll/Pitch 0.015°
RTK-GNSS
70
4
6
(
ウ 障害物との最接近離隔距離計測・評価
)
二機種の MMS にて、電柱および架線抽出が実施でき
Heading 0.15°
Roll/Pitch 0.02°
(
/
ichimill
)
/
結果例を第 7 図に示す。双方、同一の障害物(樹木)が
±5cm
最接近離隔の対象であることが分かる。距離の値が若干
120
±2cm
た箇所について、配電線と樹木の最接近離隔の自動計測
RTK-GNSS
ichimill
異なるが計測時期(4 月と 6 月)による植生の影響と考
(3)開発 MMS の現場検証による性能評価
えられる。
ア 検証走行ルート
従来機と開発機の性能
MMS
を比較評価するため、現
場での検証を行った。具
(2022 4 )
MMS
(2022 6 )
0.58m
0.33m
0.54m
0.30m
25 982
体的には、第 5 図に示す
静岡市内の都市部、郊外
25 981
地域、山間部の各ルート
でそれぞれ走行し、点群
データの取得を行った。
26 881
SBS
第 5 図 MMS 検証の走行ルート
26 882
第 7 図 障害物との最接近離隔距離計測結果
イ 電柱および架線の自動抽出率
二機種の MMS で走行した地域での電柱および架線
(高圧配電線)の自動抽出率をそれぞれ、第 2 表と第 3
表に示す。都市部・郊外では、電柱の抽出率では従来機
(4)検証結果
今回開発した安価な MMS は配電部門の伐採調査業務に
が開発機よりも約 10% 高い精度を示し、一方、電線の
おいて、導入可能な性能であることを現場での検証により
抽出率では開発機が従来機よりも約 10% 高い精度を示
確認した。
している。ただし、山間部の電線抽出率については従来
機の方が約 10% 高い精度を有している。この違いは、
第 2 表 二機種の電柱抽出率 [ 左:都市部・郊外地、右:山間部 ]
299
294
294
98.3% 262
87.6%
246
243
81.3% 212
70.9%
104
83.7%
35.4%
243
1
106
82.7%
36.1%
1
51
17.1%
50
16.7%
142
48.3%
137
46.6%
5
1.7%
37
12.4%
48
16.3%
51
17.3%
第 3 表 二機種の架線抽出率 [ 左:都市部・郊外地、右:山間部 ]
138
68.8%
99
56.3%
9
6.5%
11
8.0%
1
25
14.2%
28
15.9%
2
12
17.1%
3
2.2%
2
5
2.8%
17
9.7%
3
32
8.7%
22
15.9%
3
25
14.2%
32
18.0%
6
0
0%
2
1.4%
85
今後の展開
今後も、安価な MMS による 3 次元点群データ取得を通
じて電力業務の効率化を目指していく。その過程で、性能
軽減の結果と効果を適宜検証・評価していく 。
参考文献
1) 技術開発ニュース No.163
3 次元点群データを活用した保安伐採業務の支援技術
176
121
1
2
5
61.6% 100
72.5%
2
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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