技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
エネルギーマネジメントシステムを活用した
学校空調の省エネ制御と快適性
Energy-saving control and comfort of school air conditioners using energy management systems
執筆者
近年では、熱中症防止等の観点から、小中学校への空調機器の導入が増加している。感
染症対策の観点から一定の換気量を確保する必要があり、エネルギー消費が増大するた
め、省エネルギー運用と快適性の両立が求められる。そこで、エネルギーマネジメントシ
ステムを活用した空調制御を行い、省エネ性と快適性について中部大学と共同で評価した。
1
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背景と目的
学校空調の運用の現状としては、教師の体感に一任され
ていたり、教育委員会の指針で決められた一様のもので
先端技術応用研究所
EaaS グループ
藤田 美和子
実証試験
(1)対象施設
実証試験対象施設の概要を第 1 表に、詳細計測を行った
あったりするほか、教室の配置や方位等を考慮していない
空調系統の機器表を第 2 表に示す。制御対象の空調メーカ
などの課題がある。
は各学校で異なっており、音楽室等の教科別教室以外の全
本実証では愛知県 T 市の H、M 中学校、K 小学校の 3 校
学級教室について空調制御を行っている。
を対象として、空調の監視制御を行い、省エネルギーとな
る運用方法の検証を行った。対象とした学校ではビル用マ
ルチパッケージ型空調システムが設置されており、室内環
境を損なわない範囲で、省エネ運転を実施し、詳細の実態
把握、実態に応じた室内環境維持や省エネルギーとなる運
用方法の導出、遠隔監視・制御装置を用いた試行、効果検
第 1 表 対象施設概要
学校名
契約電力
普通教室数
生徒数 (2021)
H 中学校
129kW
15 室
288 人
M 中学校
120kW
13 室
316 人
K 小学校
185kW
16 室
420 人
証を行った。
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第 2 表 機器表(詳細計測系統)
エネルギーマネジメントシステムの概要
実証に用いたエネルギーマネジメントシステム(EMS)
は、4つのメーカの通信プロトコルに対応しており、空調運
用ログのリアルタイムモニタリングを行うことができる。ま
た、そのデータと気象状況の関係から空調負荷を予測する
名称
台数
H中
室外/室内機
1/8
K小
室外/室内機
1/5
M中
室外/室内機
1/8
冷房能力 (kW)
暖房能力 (kW)
112
34.7
125
42.5
77.5
25.08
90.0
27.69
能力
150
電力
55.2
能力
165
電力
56.7
(1)実証内容
感染症予防のために換気量が大きい場合、冷房期の省エ
モデルを作成し、翌日の天気予報情報から、無理のない空
ネ運用は熱中症防止の観点から適さない。本実証は、コロ
調の省エネ運用計画を作成することができる。室内機のオ
ナ禍の 2021 ~ 2022 年度に実施したため、上記理由によ
ン・オフ・設定温度・風量・風向の制御や、室外 機の能力
り冬期の省エネ運用にて評価を行った。2022 年 12 月には
抑制制御を行うことができる。第 1図にシステム構成を示す。
通常運用、2023 年 1 月には省エネ運用を行い、詳細計測
系統にて省エネ量を評価した。また、全学級教室の省エネ
運用効果は、2022 年度の冬期に中部電力ミライズが実施
GW
12345
1111
12345
12345
12345
12345
した節電プログラムにのっとって、1 月は月間電力削減量
とアンケート調査による快適性について、2 月は節電プロ
グラムのデマンドレスポンス型として評価した。(第 3 表)
GW
第 3 表 実証スケジュールと評価内容
2022 1
GW
CO2
第 1 図 システム構成
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
2022
12
2023 1
2023
2
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