技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
個別分散型空調のビルマルチエアコン(室外機 1 台に 4
35000
~ 8 台程度の室内機が接続される)では、運転負荷率が
場合は、負荷率を、やや低くなるように室外機能力抑制を
kWh/
50% 付近で最大効率となるため、50% より負荷率が高い
するために 50% 能力抑制運転を組み合わせて制御する。制
10000
御イメージを第 2 図に示す。夏期は断続運転の代りに送風
5000
運転をすることが可能であるが、冬期は送風では寒くなっ
0
まう懸念があったため、室外機能力抑制運転のみとした。
16.8
3.1
20000
15000
校では教室移動が多く、空教室に対して空調を稼働してし
2023 1~2
6.4
25000
行う。負荷率 50% 以下では、断続運転とリバウンドを防止
てしまうため、室内機の停止・再稼働が必須となる。中学
2022 1~2
30000
H
M
K
第 3 図 月間電力比較(2022 年;通常、2023 年:省エネ)
2022/1/12(通常) 2023/1/23(省エネ)
小学校は能力抑制と断続運転を組み合わせた。
13%
第 4 図 K 小学校における空調運用に伴う快適性の変化
(4)デマンドレスポンス型の実証結果
第 2 図 外気温度と空調負荷率と省エネ運用(K 小学校)
4
結果を第 5 図に示す。節電要請は前日までにミライズか
ら連絡があるため、遠隔制御で当該時間の抑制を強めた指
令を行った。その結果、基準値(過去 5 日の営業日の需要
実証結果
が大きい 4 日間の平均値(High4of5 当日補正あり))と比
較して、実績値としては、70 ~ 130kWh / 3 時間の節電
(1)詳細計測空調系統の省エネ性評価
を実施することができた。
2021 ~ 2022 年度の通常運用と省エネ運用の日電力消
費量を比較した ( 第 4 表 )。各学校とも対象の空調系統に対
250
して、1 日平均で 10 ~ 45kWh の削減率が認められたが、
17-20
200
kWh/3h
M 中については、値のばらつきが大きく省エネの優位性が
認められなかった。M 中は空調稼働が当初より低く、空調
DR
運用が安定していないことが原因である。K 小学校は、教
室数も多く、断続運転も併用しているため削減率が高い。
DR 2 21
第 4 表 詳細計測系統の省エネ量
150
100
50
0
P
124kWh
108kWh
(12.9% ) 2.63×10-04
153kWh
142kWh
(7.2% )
130kWh
85.6kWh
(34.2% ) 3.12×10-11
H
M
K
第 5 図 節電プログラム(デマンドレスポンス型)結果
0.176
(2)月間電力削減量
5
まとめ
普通教室に設置されている空調をすべて制御し、月間
小中学校空調の制御による省エネ・デマンドレスポンス
電力削減量を 2022 年 1 月の通常運用と 2023 年 1 月の省
について実証・評価し、①個室空調に関する省エネ運用手
エ ネ 運 用 と を 比 較 し た( 第 3 図 )。H 中 は 6.4%、K 小 は
法、②メーカ毎の断続運転特性を鑑みた省エネ運用手法、
16.8% と建物全体に対しても省エネ効果が見込めたが、第
③小中学校の教室使用の状況把握と断続運転の必要性、に
4 表に示すように M 中は、当初より空調稼働が低く、安定
ついて知見を得た。
していないため、3.1% と僅かな省エネ効果に留まった。
実証の結果、対象 18 教室以上の規模があり、冬期空調
(3)アンケートによる快適性評価
稼働率が 60% 以上あれば、抑制・断続運転により省エネ効
2022 年 1 月 12 日( 通 常 ) と 2023 年 1 月 23 日 ( 省 エ
果が十分見込まれ、3 年程度のコスト回収が期待できるこ
ネ ) のアンケート結果を第 4 図に示す。両日は、最高気温
とがわかった。今後は、自治体の脱炭素ニーズに対応する
6℃程度の外気温変化が似ている日を比較している。省エ
ために空調制御に加え、学校への PV 等の導入・拠点間融
ネ運用を行っても快適性が極端に低下することはなかった。
通を実現する EMS へ機能を拡大していく。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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