技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
Results of Research Activities
空調・照明・蓄電池を活用した
デマンドレスポンスシステムの開発
Demand response using air conditioning, lighting, and storage batteries
お客様負荷設備を用いた調整力ポテンシャルを検証
執筆者
当社は、空調 EMS と PV・蓄電池を連系させたシステムを用いて、商業施設における
エネルギーマネジメント実証を行った。本システムでは、ビルや工場に必ずある空調機と
小容量の蓄電池を組み合わせることで、多くの供出量を継続して確保することが可能であ
り、快適性を損なわず運用できることを検証した。
1
先端技術応用研究所
EaaS グループ
村川 敬祥
需給調整市場の商品区分を第 1 表に示す。DR で対応可
開発の背景と目的
能な範囲は二次調整力②までとなっており、早い応答が求
められるにつれて、高いインセンティブが設定されてい
再生可能エネルギーの増加に伴い、天候による発電量の
る。負荷設備の DR 制御は前述した課題があり工夫が必要
変化量が増え、安定した需給調整を行うことが難しくなっ
となる。
ている。従来は発電所側で需給調整を行っていたが、再生
可能エネルギーの導入量が多くなるにつれ発電所稼働率の
(
(High4of5)
)
低下を招き、発電コストが高くなるという課題がある。そ
AC
(kW)
こで、需要家側の負荷設備を束ね遠隔・統合制御し、需給
調整に活用するバーチャルパワープラント(VPP)が構築
±
(
されつつある。VPP の概要を第 1 図に示す。
(
リソースアグリゲータ (RA) によって、遠隔・統合制御
)
DR
)
(
)
(min)
された負荷設備は、エネルギーリソースとして調整力を供
第 2 図 DR 調整力供出イメージ
出し電力の需給調整に活用でき、需給調整市場によって取
第 1 表 需給調整市場の概要・商品要件
引される。
DR
(
Virtual Power Plant
VPP
(DR)
10
TSO:Transmission
AC
VPP
5
5
5
-(
TSO
DR
30
)
45
3
3
30
0.5
30
5
5
1
1
RA
AC:Aggregation Coordinator
RA:Resource Aggregator
第 1 図 VPP システムの概要
2024
エネルギーリソースは大型蓄電池が主だが、導入コスト
)
15
2022
30
(
5
)
2021
が高く需要家が需給調整市場への参画する障害となってい
る。この課題を解決するために、多くの建物に設置されて
そこで、DR 制御の精度を向上させるために、細かな負
いる空調機器や照明を使って、デマンドレスポンス(DR)
荷制御が可能な①空調メーカ独自の通信プロトコルを活
を行うシステムを開発した。既設負荷設備を上手く制御
用した空調能力抑制制御、②照明負荷のフィードバック制
し、蓄電池の充放電と同じように負荷を増減させることで
御、高速調整力に対応するために③小容量の蓄電池と負荷
調整力を得ることができ、蓄電池よりも導入コストを低く
制御を組み合わせた制御ロジックを開発した。実証試験に
抑えることが可能である。
ついては株式会社トーエネックと共同で実施した。
2
DR の課題
実証システム概要
DR 調整力供出のイメージを第 2 図に示す。DR は予め
空調 EMS をベースとしてシステムを改良・構築し、実
申請した調整力を供出する必要があり、受電電力は成功範
証では第 3 図に示すように、各制御リソースの運転データ
囲内になるように制御しなければならない。空調・照明機
をクラウド上にリアルタイムに蓄積し、上位のアグリゲー
器は制御に時間遅れがあるなど精度よく供出できないこと
ションサーバと連携した供出量に基づいて制御を行った。
や、快適性を担保しなければいけないといった課題がある。
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
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