技術開発ニュース No.168

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研 究 成 果
しかし、1 分評価の場合、空調能力抑制制御単独では達
EMS
成が難しいことがわかった。
(2) 照明のフィードバック制御
照 明 に お け る DR 制 御 は 目 標 値 に 追 従 で き る よ う な
フィードバック制御を考案した。三次調整力②の場合、
監視間隔が 5 分であるため、目標に合わせられるよう、
1 分粒度にてリソースを制御した。フィードバック制御を
DR
使って DR 実証を行った結果、30 分評価の場合、実績値を
25kW
22kWh
Box type PC
100% 成功範囲内に収めることができたが、1 分評価の場
第 3 図 実証システム概要
合、成功範囲滞在率は 86% 程度となった。負荷制御単体で
は、三次調整力②は達成できるが、三次調整力①以上の応
4
動精度は確保できないことがわかった。
制御手法と効果
(3) 蓄電池との連携制御
早い調整力ほど高いインセンティブが期待できるため、
(1) 空調能力抑制制御
負荷制御に加えて、出力 25kW、蓄電容量 22kWh の蓄電
従来の機器を起動・停止する空調制御では、快適性を著
池と組み合わせて連系制御させることで目標値に対する 1
しく損なうことが多く、また、細かな負荷調整ができない
分値整合を試みた。通常の DR のための照明フィードバッ
ため、調整力を供出することが難しかった。そこで、各空
ク制御を行いながら、目標値との差を埋めるように、制御
調メーカ独自の通信プロトコルと連携して、細かに室外機
間隔を 10 秒にて蓄電池充放電を行った。蓄電池無の結果
能力抑制制御を行う空調 EMS を活用して DR を実施した。
と蓄電池有の結果を第 6 図に示す。蓄電池有の 1 分評価の
この EMS では、10% 刻みで室外機能力を制御できるため、
成功範囲滞在率は 93% となった。100% を達成しなかった
空調を稼働させたままで DR を行うことができ、快適性を
原因は、蓄電池の充電が飽和したことにより連携制御が出
維持したまま空調による調整力供出(消費電力削減)が可
来なくなったためである。そこで、蓄電池の充電率を監視
能となった。
し、他リソースを用いて目標値に対する指令値を意図的に
結果を第 4 図に示す。夏期の空調制御(外気処理空調機
ずらすことで、充電率を中央に維持する制御を考案した。
停止と室外機能力抑制とローテーション運転)の結果、抑
本手法を用いれば、蓄電池の充電率を上下限範囲内に収め
制有の快適温度は制御無時の快適温度と同様に 26℃以下を
つつ、3 時間の三次調整力①の成功範囲滞在率 100% を達
保ちつつ、40kW( 定格消費電力の 4 割削減 )、の抑制が受
成することができる。
定格消費電力の4割削減
温度(℃)
[kWh/30 ]
■制御無(8/11)■制御有
(8/12)
湿度(%)
電点で確認できた。
1 分評価︓失敗
成功範囲外
放電
1 分評価︓成功
成功範囲内
蓄電池が 満充電の
た め 、放電不可
1 分評価︓成功
成功範囲外
滞在率 93%
充電
(a) 蓄電池無し (b) 蓄電池有り
第 6 図 照明 DR と蓄電池の組み合わせ実証の結果
(a) 空調消費電力 (b) 温湿度
第 4 図 空調能力抑制制御の比較
また、空調能力抑制制御にて、DR 実証した結果を第 5
図に示す。三次調整力②を想定した 30 分評価の場合、実
績値の成功範囲内滞在率は 100% となった。
指令値 指令値 指令値
10kW 40kW 20kW
指令値 指令値 指令値
10kW 40kW 20kW
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まとめ
DR 実証の結果、空調や照明設備をエネルギーリソース
とし、快適性を維持したまま、三次調整力②を供出するこ
とができた。さらに、小容量の蓄電池制御を組み合わせる
ことで、高いインセンティブが期待できる三次調整力①を
供出できる見込みを得た。
今後はお客さま向けのエネルギーマネジメントシステム
(a) DR 実証結果 30 分評価 (b) DR 実証結果 1 分評価
第 5 図 空調 DR 実証結果
開発において本成果を適用・実装していく。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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