技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
長距離高速光無線ネットワークの実用化検討
Study on Optical wireless system MIMO
光軸調整手法および新たな信号方式の検討について
光無線通信は信頼性・耐干渉性など電波無線通信にない長所がある。一方屋外などの実
用環境では、送受信機の正確な位置合わせや天候などによる伝送品質低下を考慮する必要
がある。そこで、本研究では姿勢方位基準装置を用いた光軸調整手法の有効性や新しい信
号方式について実用化検討した結果を紹介する。
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背景と目的
光無線通信とは、光源の光強度に変調を加えて送信した
光を光検出器で受信することで無線通信を実現するもので
ある。そのシステム構成を第 1 図に示す。光無線通信は電
執筆者
先端技術応用研究所
情報技術グループ
説田 武文
を行った。
【姿勢方位基準装置(AHRS-10)を利用した光軸調整法】
(1) 送信機側アレイ、受信機側アレイが同じ地上高で対
向するように設置する。
(2) 送信機側アレイに AHRS-10 を取付け、三脚の調節
ねじで Pitch、Roll を 0° にする。
磁雑音に強く既存の無線との干渉が無い・盗聴や妨害に対
(3) 受信機側アレイに AHRS-10 に移動し、三脚の調節
する耐性が高い・免許が不要などの特徴がある。また、電
ねじで Pitch、Roll を 0° にする。さらに送受信側双
波が持つ課題に対し、電磁イミュニティ・エミッション、
方のアレイの Heading の差が 180° になるよう調整
セキュリティ等で優位な面があり、周波数資源の枯渇対策
する。
からも、電波の代替手段として有望である。しかし、現状
(4) 受光機の周波数スペクトラムを確認して微調整する。
では速度・通信距離等の観点で実用に至っていない。目に
※従来の光軸調整は、上記 (2),(3) の部分を周波数スペ
安全な LED 素子を利用することで、回路構成が容易で安
クトラムを用いて少なくとも 1 つの信号の受信により
価かつ低消費電力が可能となるため、今後実用的な距離で
粗調整する手法を行っており、試行錯誤で調整して
の高速通信が期待される。
いる。
試験結果を第 3 図に示す。姿勢方位基準装置を用いるこ
とで光軸調整にかかる所要時間が短縮できている。
s-MIMO(Space-Separated MIMO) i-MIMO(Imaging MIMO)
第 1 図 光無線システムの送受信光器
従来から、太陽光や天候(降雨や霧等)の影響を受ける
屋外通信に適用する光無線ネットワーク技術について検
討してきた。今回、システムの実用化を目指し「送受信光
器の正確な位置合わせ(キャリブレーション)の手法の確
立」、「降雨等の天候の影響による屋外通信特性の検証」、
第 2 図 検証に用いた姿勢方位基準装置
「信号強度の低下やキャリブレーション不完全の存在下で
も高性能な通信を実現する新しい信号方式の検討」につい
て検討した。
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光軸調整手法の確立
光 軸 調 整( キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン ) に お い て は、 送
受 光 素 子 を 正 確 に 対 向 さ せ る こ と が 必 要 に な る。 第
2 図 に 示 す 姿 勢 方 位 基 準 装 置 AHRS-10(Alititude &
Heading Reference System) は 加 速 度 セ ン サ・ ジ ャ
イ ロ セ ン サ・ 磁 力 計 セ ン サ を 有 し て お り、3 軸 角 度
(Roll,Pitch,Heading)の数値化により光軸調整(粗調整)
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
第 3 図 試験結果(光軸調整の所要時間)
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