技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
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雨天時における屋外通信特性の検証
【LDPC 符号の特長】
・疎な検査行列によって定義される線形符号
・高い符号化率かつ現実的な計算量で誤り訂正が可能
雨天時には降雨により光路が遮られ信号強度低下が生じ
【シミュレーション内容】
るおそれがある。そのため屋外環境で光無線通信伝送試験
(1) 検査行列の生成
を実施し、降雨による減衰がシステム性能に与える影響を
評価した。試験状況を第 4 図に、試験結果を第 5 図に示す。
検査行列をギャラガーの構成法により生成
(2) LDPC 符号の生成
【結果】
情報シンボル列をランダムに作成し、上記の検査行
・降雨による信号強度の低下が見られビット誤り率特性の
劣化があるが、小雨程度であれば 70m の通信が可能で
列から LDPC 符号化を行う
(3) 受信語の生成
ある。(ビット誤り率は 1×10 以下であり、誤り訂正符
各チャンネルの誤り率に基づきランダムに誤りを与える
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号化を行うことで実用可能 )
(4) 送信語の推定
・規格化伝送路行列、行列の大きさ(フロベニウスノル
前記の受信語に対し、検査行列、各尤度に基づき確立
ム)を確認し、降雨の影響は伝搬路行列の各要素を均等
領域 sum-product 復号法により送信語の推定を行う
に低下させる信号減衰であった。
シミュレーション結果を第 6 図に示す。2 種類の符号化
率(R=0.5 , 0.6)の各 2 パターンの計 4 つの検査行列にて
復号を繰り返しビット誤り率の性能改善を確認した。
光変調器台数
光変調器間隔
送信データ速度
対向距離
4[ 台 ]
17.5[cm]
25M×4[bps]
70[m]
第 4 図 屋外試験状況(4×4 s-MIMO)
第 6 図 シミュレーション結果
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まとめ
姿勢方位基準装置を用いた光軸調整手法の有効性が確認
できた。また、新しい信号方式を利用することで、屋外
第 5 図 試験結果(降雨によるビット誤り率の変化)
通信に対してもビット誤り率の改善を図ることが確認でき
た。本研究により高速長距離光無線の要素技術として有用
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新しい送信信号と受信方式の検討
性が確認できた。一方で製品化やシステムへの実装、他の
通信技術との経済性等の課題があるため、今後の技術動向
に注目していきたい。
光変調器と伝送距離の増加に伴い、平均誤り率特性劣化
や各送信光器からの信号誤り率特性のばらつき増大が生じ
る。そこで光変調器毎の性能(誤り率特性)が異なり、か
つそれが時間的に大きく変化しないという光無線通信の特
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あとがき
徴から、光変調器毎のビット誤り率特性を利用した誤り訂
本研究は名古屋大学未来材料・システム研究所片山正昭
正符号化方式として、LDPC(Low-Density Parity Check)
教授、
Chedlia Ben Naila 助教との共同研究により実施した。
符号を検討しシミュレーションで効果を確認した。
技術開発ニュース 2024.03/No.168
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