技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
エッジコンピューティングを用いた
画像 AI システムの検証
Study on image recognition with edge computing
栽培施設での作業員見守り AI システムの作成
通信遠隔監視に係る通信ネットワークの負荷軽減の一手法として、画像の AI 処理をカ
メラ端末側で行うエッジコンピューティングがある。今回、イチゴ栽培施設における作業
員管理をユースケースに、エッジコンピュータによる画像 AI システムを構築するためカ
メラおよびエッジデバイスの技術要件整理やシステム構成検討を行ったため紹介する。
1
背景・目的
3
執筆者
先端技術応用研究所
情報技術グループ
説田 武文
エッジコンピューティング技術の活用
通信技術の発展やディープラーニングを中心とした画像
エッジコンピューティング技術のユースケースとしてイ
AI 技術の飛躍的な進歩により、遠隔地の画像監視は容易
チゴ栽培施設での作業員見守りシステムを第 1 図に示す。
になり遠隔画像 AI 監視システムが様々な場面で導入されて
栽培施設では広大な敷地の中、多くの作業員の位置や状況
いる。
の把握を実現するため AI を活用した遠隔監視システムを構
また、エッジコンピュータの処理能力が年々向上してお
築した。分散処理を指向したシステムとするためエッジコ
り、遠隔地側での AI 画像処理の分散処理を指向したシステ
ンピュータを活用した構成で検証を行った。
ム構成によりその活用範囲の拡大が期待されている。
2
エッジコンピューティングとは
データの収集や処理をインターネットに接続されたサー
バやデータセンターで行うクラウドコンピューティングに
A
B
対して、ローカルなデバイスやネットワークの端末側で行
うことをエッジコンピューティングという。
大容量のデータを送受信することは、通信ネットワーク
に大きな負荷を与えデータ遅延時間が発生するが、エッ
ジコンピューティングの利用によりエッジコンピュータ側
でのリアルタイムの処理が可能となり、ネットワークの負
第 1 図 栽培施設での作業状況把握(ユースケース)
(1) システム構成
荷軽減につながる。また、エッジコンピュータ側でデータ
イチゴ栽培施設内にカメラ 6 台を設置して、エッジコン
処理することで、プライバシーやセキュリティの面でも利
ピュータで AI 技術の処理を行う、作業員見守りシステム
点がある。エッジコンピュータ本体も小型のマイクロコン
を第 2 図に示す。エッジコンピュータは現地に設置してお
ピュータやシングルボードコンピュータなど数多く市販さ
り、現地のパソコンで直接確認することができる。また、
れて容易に入手することが可能になっている(第 1 表)。
離れた事務所からも確認できるように、モバイルルータを
用いて通信環境を構築した。
第 1 表 エッジコンピューティングの特徴
・リアルタイムな処理が可能
メリット
・分散処理やトラフィックの最適化
・通信コスト削減
・セキュリティ強化・プライバシーの保護
デメリット
・エッジコンピュータ側機器の処理能力に限界
・現場環境に制約
・導入や運用のハードルが高い
(2)主な使用機材
①エッジコンピュータ
NVIDIA 製の Jetson AGX Xavier を用いた。Jetson は
高速演算が可能な GPU 処理を搭載したコンピュータであ
らゆる自律動作のための AI プラットフォームである。ロ
ボットや IoT など組み込み機器向けの開発・研究で使用さ
れており、誰でも先進的なエッジ AI ソリューション開発
に取り組むことができる。従来は AI 開発に高速な演算処理
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
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