技術開発ニュース No.168

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
ダム揚圧力遠隔計測システムの開発
Development of dam uplift pressure remote measurement system
費用対効果を考慮した電力インフラ現場の DX 推進支援
執筆者
多くの現場において,費用対効果から DX 推進が実現しないことがあり、電力インフラ
でも同様である。今回の揚圧力遠隔計測システムでは、汎用的なマイコンデバイスや通信
機器、オープンソースソフトウェアの活用による低コスト化にて費用対効果を改善した柔
軟な試作システムを構築した。
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背景・目的
先端技術応用研究所
情報技術グループ
志水 洋・中村 剛
PC
DX 推進には一定の費用対効果を期待する。今回紹介す
る再生可能エネルギーカンパニーの揚圧力 ( ※ ) 遠隔計測
システムは、稼働頻度の低さから、この点を満たすことが
難しかった。
厳しい作業環境や国土交通省への報告業務から業務廃止
が困難な中、システム化要望は強く、昨今の技術進化によ
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る汎用的なマイコンデバイス等の低廉化やオープンソース
ソフトウェアの利用可能な環境を鑑み、費用対効果の水準
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)
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に合わせた導入コストの内製システムを試作・検証した。
※揚圧力とはダム堤体を浮き上がらせようとする浸透水の
第 1 図 揚圧力計測システム
圧力のこと
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揚圧力計測の概要と課題
(1) ネットワーク構成
システムの全体構成を第 2 図に示す。
揚圧力の計測作業は、監査廊の 76 箇所の計測点のバル
社内 PC、クラウド、ダム管理事務所はインターネット
ブを閉め、2 時間後に計測を行う。計測と同時に、計測が
に接続。監査廊内は、Wi-Fi 設置の事前検証を実施。検証
終わったバルブは開いた状態に戻す。
結果を踏まえて、通信品質確保のためアクセスポイントを
監査廊は、非常に長い急階段で、複数回往復する揚圧力
5 か所に設置した。
計測は大変な重労働である。計測点によっては、計測しづら
い場所に設置されており、安全性での懸念もある。監査廊内
(2) ソフトウェア構成と開発
は携帯電波が通じず、緊急の外部連絡が必要な場合でも、
地上に戻る必要があり迅速な対応が困難な場所であった。
揚圧力遠隔計測システムの開発にあたり、最大限にオー
そのため、以前からシステム化が望まれていたが、年 4 回
プンソースソフトウェア(OSS)を活用した。
の利用と稼働頻度の低さからシステム化が見送られてきた。
ダッシュボードの開発に利用した OSS を第 1 表に示す。
各サービスをコンテナ管理することで、クラウド用と管理
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システム概要
揚圧力計測の指示および計測結果の閲覧は、社内 PC およ
びダム管理事務所からダッシュボードで行う。計測開始指
示により、電動弁をクローズする。計測値はクラウドと管
理事務所のダッシュボードに表示される。計測終了時は、
タイマにより自動的に電動弁がオープンする。
(第 1 図)
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技術開発ニュース 2024.03/No.168
事務所用でサービス定義を共通化し、コスト削減を図った。
計測ボックス開発に利用した OSS を第 2 表に示す。マイ
コンライブラリが充実しており、入門者にも扱いやすいマ
イコン開発環境を利用することで、コスト削減を図った。
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