技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
劣化
異なる発電所の最もボイドが出にくい先進
合金鋼製のタービンロータで材料検査を実施
ボイド
イメージ
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•
•
イメージ
ボイドの発生と増加が寿命を支配
使用限界
予測した箇所にボイド発見
新しいボイド指標により寿命を
定量評価(寿命延長を実現)
605℃ 100MPa
ボイド
新ボイド指標
5μm
結晶
粒界
ボイド(約1μm)
10µm
電子顕微鏡によるボイド探索
0
今後取替不要
585℃ 150MPa
570℃ 200MPa
0%
電子顕微鏡写真
第 3 図 蒸気タービンロータのボイド観察
0.2
寿命
寿命
0.4
0.6
0.8
1
100%
発電所での検査状況
約1週間かけて、初めて、先進合金鋼からボイドを発見す
ることができた。しかし、見られたボイドの数は数個と少
なく、材料が劣化しているのかしていないのか判断が難し
く、寿命の定量評価に課題が残った。
ボイド自体は発生することが確認できたため、時間と費
用をかけ異なる製造メーカの主な合金鋼6種類について、
実機環境を加速再現した延べ 20 年相当におよぶ長期材料
劣化試験と、人工劣化材総数約 100 点について、ボイドの
発生時期やその形態の特徴に関して延べ 100 週間研究した。
その結果、先進合金鋼特有の現象として、ボイドの発生
数は少ないが、一つのボイドが大きく成長する特徴を見出
した。ボイドの個数、または大きさを評価した面積率のど
(翼部は未描写)
2: 外表面
ちらかでは十分ではなく、その両者を併用した新たな評価
解析による寿命消費分布
1: 中心孔
指標を考案することで、寿命全般にわたって高精度に評価
予測した2箇所でボイドを発見
できることがわかった。
回転中心
第 4 図 タービンロータの材料検査状況および数値解析結果
5
再現性確認と技術確立
第 2 の壁、設計情報がなく各機器の弱点部位が不明であ
6
成果、まとめ
ることについて、実機運転データおよび独自の寿命評価ア
本研究では、蒸気タービン主要機器の余寿命診断技術を
ルゴリズムを組み込んだ数値解析により、検査が可能な弱
開発し、ユーザーサイドでの「手の内化」に成功した。具
点部位を特定することができた。第 3 の壁、高頻度起動停
体的には、適切な寿命評価指標が不明であったことに対し
止の影響について、多数の材料試験の結果、現実的な実機
て、ボイドの成長に着目した新しい寿命評価指標を確立で
稼働条件ではその影響は無視し得ることを明らかにできた。
きた。また、検査すべき弱点部位や今後の高頻度起動停止
以上の開発技術に関する再現性確認のため、異なる発電
の影響についても明らかにすることができた。
所における最もボイドが出にくい先進合金鋼製のタービン
本研究成果は ( 株 )JERA 西日本の全てとなる 10 発電所
ロータで材料検査を行った(第 4 図)。その結果、数値解析
および東日本 7 発電所相当に適用可能で、その内 4 発電所
にて予測した第 1、2 番目の弱点部位において劣化度に応
相当については、すでにロータ以外の翼、車室、主要弁を
じたボイドを確認するとともに、新しいボイド指標により
含めて余寿命診断を実施済みで、寿命延長を実現している。
寿命を定量評価し、十分な余寿命を有すると診断でき、今
後取替不要とすることができた。以上の結果、ボイド検査
による新しい寿命評価指標が確立できた。
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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