技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
配管振動抑制自動提案システムの適用拡大
Enhancement of the application of an Automatic Piping Vibration Control Proposal System
配管振動を抑えられる固定サポート位置の自動提案
執筆者
火力発電所等の小口径配管振動に対して、問題のある振動かどうか短時間で判別し、問
題があれば振動を抑えることができる固定サポート位置を早期かつ安価に自動提案できる
手法(システム)を開発した。
開発および最適化を進め、実機での実証を積み重ねてきた。社内外への適用拡大を進め
ている技術について報告する。
電力技術研究所
材料化学グループ
佐藤 克良・宮岡 俊
1
●:測定点
背景および目的
共振解消
近年、出力変化の大きい再生可能エネルギーが急激に増
加し、需給バランスを調整するため、火力発電設備の起動
Y
外部振動
停止回数が増加している。起動停止過程では、配管の内部
X
固有振動数
流体の変動が大きいため、振動が増加する。従来の運用方
周波数
法でユニット寿命まで耐えられていた振動も起動停止回数
が増えることにより配管に不具合が発生し、電力安定供給
の支障となることが懸念される。
配管モデル(例)
Z
ずらす
第 2 図 共振解消方法の考え方 第3図 測定箇所選定
従来、配管振動がユニット運用上問題ある振動レベルか
操作者が入力した配管情報(長さ、形状)をもとに、シ
どうかの判断が容易ではなかった。また、配管振動を抑制
ステムが振動測定箇所(測定点)を提案(第 3 図)し、測
するためには、適切な位置へ固定サポートを追設する必要
定結果を SwRI ※配管振動評価基準および ISO20816‐8 小
があるが、その位置の特定には、専門技術者による振動測
口径接続管振動基準の評価線図に照らし、振動レベルを判
定および高度な解析を行う必要があり、大幅な時間と費用
別する設計としている。(※ SwRI:米国の研究機関)
を要していた。
そこで、配管振動トラブルを撲滅するため、問題のある
振動かどうかを短時間で判別し、振動問題発生時に、振動
を抑えることができる固定サポートの位置を早期かつ安価
3
研究成果
に自動提案できるシステム(第 1 図)を開発した。(技術開
至近の本システム適用例を以下に紹介する。(株)JERA
発ニュース No.164 2021/2 参照)また、さらに評価パラ
火力発電所のタービン軸受潤滑油配管(第 4 図)にき裂が
メータの最適化を図り、実用化した。
(技術開発ニュース
発生し、発電停止した。
No.167 2023/3 参照)
2
固定サポート位置自動提案システムの概要
過去の配管不具合実績を調査し、対象範囲を小口径配管
の共振振動に絞り込んだ。共振振動は、配管側に固定サ
ポートを追設し、固有振動数をずらすことで解消(第 2 図)
される。
センサー
演算装置
PC
第 1 図 配管振動抑制自動提案システム
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
第 4 図 タービン軸受潤滑油配管
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