技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
自動放射温度計測システム
「MiEL Thermo HT」の開発
ミエル
サーモ
エイチティー
Development of Automatic Radiation Temperature Measurement System“MiEL Thermo HT”
執筆者
鋳造工程の自動温度計測により生産性向上と品質管理を実現
高熱環境下での被加熱物の測温は、品質管理の観点でとても重要である。特に 1400℃
以上にもなる溶けた鋳鉄の測温は、市販放射温度計では誤差が大きいため、熱電対を用い
た手作業で行われており、自動化や無人化が求められていた。そこで、鋳鉄溶湯の温度計
測にも適用可能な高精度の自動放射温度計測システムを開発した。
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
棚橋 尚貴・藤本 貴之
1
鋳鉄溶湯
背景と目的
ヒューム
ヒューム
金属部品等を製造する鋳造工場では、不良品の発生を防
ぐため、高熱で金属を溶解して合金を添加する工程(第
1 図 (a))や、金属を鋳型に流し入れる注湯工程(第 1 図
(b))など複数の工程で、溶湯温度の適切な管理が必要と
スラグ
スプラッシュ
(a) 溶湯表面 (b) 溶湯上部 (C)注湯
第 2 図 放射測温における異常値検出時の事象例
なる。
この溶湯温度を一般的な放射温度計で計測する場合、第
2 図(a)のように溶湯表面に形成されるスラグ(金属や
不純物などで構成される金属酸化物の膜)や、第 2 図(b)
(c) に示されるヒューム(湯煙、ダスト)やスプラッシュ
( 飛沫 ) が計測画面内に含まれると、実際の温度とかけ離れ
2
システムの概要
(1) システム構成と計測仕様
システムの構成と計測仕様を第 3 図、第 1 表に示す。カ
た異常値が出てしまうことがあり、一般的には、接触式の
メラを所定の位置に固定し、常時監視とすることで、計測
ため、外乱の影響を受けにくい熱電対を用いた手作業での
対象の高温被加熱物を検出したタイミングで、無人かつ自
温度計測が行われている。高熱環境の手作業で危険を伴う
動での温度計測が可能である。また、オプションの中継器
ことや、計測に時間を要するため全ての鋳物の注湯温度が
を用いて鋳造機制御盤内の PLC と PC を接続することによ
計測できない等の課題があり、温度計測の自動化や無人化
り、操業 PLC との通信連携も可能である。例えば注湯工程
が求められていた。
において、計測開始に対応する信号を PLC から受信後、計
そこで、金属溶湯など高熱の被加熱物を高精度かつ自動
測・解析した温度データを瞬時に PLC に自動送信する。
計測が可能な放射温度計測システムを開発した。
この機能により、各鋳型への出湯時にリアルタイムに温度
なお、本開発システムの鋳造工場における適用評価は、
を確認することができるほか、全ての鋳物製品に対して注
中央可鍛工業株式会社様のご協力を得て、実施した。
湯温度を紐づけることができるため、品質管理等に活用で
きる。
熱電対
取鍋
鋳鉄溶湯
熱電対
取鍋
鋳鉄溶湯
鋳型
(a) 合金添加工程 (b) 注湯工程
第 1 図 鋳造工場における鋳鉄溶湯の温度計測状況
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
オプション
放射測温システム
温度解析
ツール
既設
PLC
中継器
PC
第 3 図 システム構成
カメラ
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