技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
浜岡1号機圧力容器の中性子照射脆化評価に基づく
4 号機の長期運転可能期間算定に関する応用研究
Applied Research on Long-term Operable Period of Hamaoka Unit-4 based on Radiation
Embrittlement Evaluation of Unit-1 Reactor Pressure Vessel.
クラッド直下熱影響部の中性子照射脆化の調査結果から言えること
執筆者
浜岡 1 号機の原子炉の内表面クラッド溶接部近傍を対象に照射脆化度を各種機械試験
(シャルピー衝撃試験など)で確認した結果、予想した通りの結果が得られた。今回、こ
の成果の応用編として、浜岡の各号機の中性子束の差を考えることで、浜岡 1 号機の試験
結果が他号機にも展開できることを新たに考察できたので報告する。
原子力安全技術研究所
プラントグループ
熊野 秀樹
1
はじめに
2
中性子束と運転可能期間との相関性
評価概要
原子炉は発電所の心臓部であり、重要な機器である。当
浜岡各号機の中性子束と運転可能期間との相関性の概念
社の浜岡のような沸騰水型炉(BWR)では、万が一原子
を図 1 に示す。ここで 1 号機の約 15 万時間分と等価な照射
炉につながる配管が破断した場合でも、蒸気は飽和圧力温
量が 4 号機の運転可能期間となり、これを推定することと
度に沿って移動するので、圧力容器(Reactor Pressure
した。
Vessel:RPV)は高圧のまま低温にはならず、安全である。
RPVの劣化については、運転に伴い炉心で中性子が発生
し、その照射量(=中性子束 ×時間)に伴い原子炉は徐々に
脆化する。そこで、あらかじめ炉内に置いた試験片を一定期
間毎に取り出して確認する、いわゆる監視試験が法令で定め
られている。しかし、その試験片はプラント運転期間が 60
年超と長期になると枯渇してしまうので、事業者らはこれま
でのシャルピー衝撃試験片から更に小さなミニチュア破壊靭
性試験片を加工して評価する方法を規格化しようとしている。
一方、約 5 年前に当社はこれまで脆化評価例の少ない部
第 1 図 号機間比較の概念図
位の研究を実施した。その部位は以下の特徴を持つ。
①浜岡 1 号機 RPV 部材のベルトライン(RPV の中で最も
図 2 に脆化に寄与するエネルギーが 1MeV 以上の中性子
中性子照射を受け、照射脆化が進んでいる部位)、かつ
束計算の方法を示すが、RPV 径の差が運転可能期間の長
②母材内表面のクラッド材の溶接熱影響部 (監視試験片
期化の要因となる。これは 1 号機と 4 号機では後者の方が
不足に備え、監視試験からの除外を期待している部位)
RPV と炉心の距離がより大きく、中性子がより減衰するた
今回は①について、解析的手法により 1 号機の中性子照
めである。なお、監視試験片(ドジメトリ結果)で校正を
射量と等価となる 4 号機の運転可能期間を推定したので、
行うこととした。
その成果について述べる。解析ツールとして、中性子束計
算コード ANISN や DORT を用いて浜岡 1 および 4 号機を比
較することとし、導出に必要な各種核データは両者で同じ
ものを用いた。同じデータを用いたのは、燃料集合体から
RPV までの距離の差など、両者の構造的な差のみを計算結
果に反映する目的のためである。
なお、②については、1/3 サイズのシャルピー衝撃試験
片やミニチュア破壊靭性試験片を用いて試験を実施し、
シャルピー衝撃試験は従来の監視試験と整合する結果を得
ており、破壊靭性試験については継続実施中である。
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
第 2 図 中性子束計算の方法
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