技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
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圧力容器内中性子束解析評価モデルの
構築
モデル構築は、計算結果と重複するので詳細は割愛する
が、評価のポイントである RPV 炉心からの距離は表 1 に
まとめて示す。この表から、炉心端からシュラウド内側、
シュラウド外側から RPV までの距離はトータルで 16cm ほ
どの差しかない。この差は水ギャップと呼ばれるが、水を
構成する水素は中性子と質量が近く、中性子束の減少の主
な原因となる。
第 1 表 炉心形状の物理的差異
間隔
炉心端から
シュラウド内側まで
シュラウド外側から
RPV 表面まで
1 号機
14 cm
48 cm
4 号機
20 cm
58 cm
号機
間隔の差
トータル約 16 cm
第 4 図 r -θ体系での中性子束分布(E ≧ 1MeV)
図 4 の浜岡1号機のサンプルを採取して健全と評価できた
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中性子束解析評価結果
0° 付近と4 号機最大値は約 5.83 の差があり、図1にて、約
15 万時間は停止期間を包含して 20 年相当であることから、
A 倍(5.83 倍)して約120 年となる。すなわち、廃炉となっ
図 3 は浜岡 1 号機と 4 号機の照射脆化に影響する中性子
た1号機の評価を行った意味は、4 号機の120 年分の中性子
束の r - Z 体系の ANISN による解析結果である。r - Z 体
照射影響を調査していることと同じであると言え、4 号機の
系とは、原子炉を真横から見て、左から炉心部、シュラウ
高経年化評価を事前に行ったことと同じと言える。
ドそして RPV を示した図のことを言う。浜岡 1 号機と 4 号
機の中性子束が最も大きい位置での結果であり、1 号機に
比べて 4 号機は、炉の中央部付近の中性子束は同程度では
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まとめと今後の展開
あるが、RPV 壁近傍では 1 号機の方が大きい。
4 号機の運転可能期間は 1 号機を基準に約 120 年とした
図 4 は DORT で計算した浜岡 1 号機と 4 号機の中性子束
が、1 号機は経済性の観点で廃炉となったため、照射脆化
の r -θ体系の炉内分布である。r -θ体系とは原子炉を
に対する裕度(耐力)はあり、それ以上であると考えら
真上から見た図を意味し、中性子束のうねりを上手く表現
れる。
している。なお、緑色の中の円(〇)はジェットポンプの
上述した監視試験片枯渇問題の解決に必要な、破壊靭性
形状を示している。
試験片による評価は、電気協会が主体となってエンドース
に再度チャレンジしていく。当社としても冒頭で触れた通
り、浜岡 1 号機実機廃炉材を用いてクラッド熱影響部を対
象にミニチュア破壊靭性試験片で計測した成果もあり、エ
ンドースを後押しすべく論文化を計画中である。
なお、BWR では監視試験片を用いた実測結果の蓄積に
より中性子照射脆化量の予測が可能になってきており、大
きな問題ではないことが分かりつつある。監視試験片数の
問題も、例えば廃炉となった 1 号機の照射量の多い監視試
験片を 4 号機に装荷して残数を増やす方法もある。これは
米国で開発されている統合化監視試験と呼ばれる手法の一
種であり、今後、国内への導入が期待される。
以上、本計算の結果は中電シーティーアイ殿への委託研
第 3 図 r - Z 体系での中性子束分布(E ≧ 1MeV)
究の成果であり、ここに記して謝意を表したい。
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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