技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
長尺基礎ボルトの超音波による非破壊検査技術
の実機検証
Verification experiments on nondestructive inspection technology of long embedded bolts using
ultrasonic waves.
超音波シミュレーションと実物大基礎ボルトを用いたモックアップによ
る検討
本研究では、浜岡 3 号機で特別点検の対象となる長尺基礎ボルトを対象に、超音波伝播
シミュレーションによる予備検討と、実物大試験体を用いた検出試験を行い、超音波探傷
試験による欠陥の検出限界サイズを明らかにした。
執筆者
原子力安全技術研究所
プラントグループ
吉川 美奈子・熊野 秀樹
1
欠陥を加えて探傷することで、模擬欠陥の半径方向の深
背景および目的
さに対する検出性を確認した。模擬欠陥の位置は、ボルト
が埋め込まれたときに下部のナットと構造物との境界にあ
浜岡原子力発電所では、3 号機の運転期間延長認可申請
たるボルト底部側のねじ谷部に設定した。UT の試験条件
に向けて「特別点検」の実施方針が検討されている。原
は、説明性を確保するため先行して特別点検を実施した
では、特別点検の中で
他電力の方法にならい、JEAC4207-2008 および原子力
原子炉圧力容器およびサプレッションチェンバ(S/C:
安全推進協会の前身である日本原子力技術協会(JANTI:
Suppression Chamber) の 基 礎 ボ ル ト に 対 し て 非 破 壊
Japan Nuclear Technology Institute)のガイドライン [2]
検査手法の一つである超音波探傷試験(UT:Ultrasonic
に従った。
子力規制委員会の定めたガイド
[1]
Testing)によってボルト内部の欠陥の有無を確認するこ
とが求められている。しかし、浜岡 3 号機の点検対象ボル
トの中には、全長約 3 m の長尺ボルト(第 1 図(a)、(b))
が含まれており、先行して特別点検を実施した他電力の点
検対象と比較すると数割以上長尺であるため、従来の UT
方法では内部欠陥の検出が困難ではないかという懸念が
あった。
そこで本研究では、浜岡 3 号機の特別点検対象である長
尺基礎ボルトの UT による欠陥の検出限界を明らかにする
ことを目的に、超音波伝播シミュレーションによる探傷条
件の予備検討および実物大の試験体を用いた検出試験を
(a) ボルト底部の模擬欠陥 (b) ボルト断面模式図
第 2 図 実物大の試験体と模擬欠陥
行った。
第 1 表 JANTI のガイドラインに定められている試験条件
項目
条件
超音波探傷器
形
周波数
探触子
寸法
パルス反射式
垂直探触子
0.4~15 MHz
試験部の形状及び寸法に対して適合しており、超音波
が十分透過するもの
試験体ボルトの底面エコーを表示器上80%±5%の
基準感度
範囲にあわせ、その4倍の感度
基準感度による表 示機目盛において 、5%以上の
欠陥とみなす判定基準
エコーを有する指示部
(a) 基礎ボルト外観 (b) 埋込状態の基礎ボルト模式図
第 1 図 浜岡 3 号機の S/C サドルサポート用基礎ボルト
2
探傷条件の予備検討方法
(1) 検出試験
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模擬欠陥の半径方向の深さを決定する際には、まず先行
他社で検出限界とされた欠陥サイズを参考にした。先行
他社のボルトと比べて、浜岡 3 号機の点検対象ボルトは全
長が長いことから、ボルト内部での超音波の減衰が大きく
なると考え、先行他社で検出限界とされた深さ 1.6 mm に
対して試験し、検出性を確認した。その結果、欠陥由来エ
検出試験では、点検対象となる基礎ボルトと同寸法のボ
コーの高さは最大 4 %であった。試験にあたっては、複数
ルトに第 2 図 (a)、(b) に示すようなスリット形状の模擬
の探触子径で探傷を試みたが、いずれにおいても欠陥由来
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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