技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
フ沿いの地震をモデルケースに現行手法と開発手法で予測
66% と 19% である。一方で、開発手法における予測波形
地点の津波波形を予測し、予測精度およびリードタイム
(5 分観測)および予測波形(10 分観測)は、正解波形と
(予測出力時刻と津波到達時刻の時刻差)を比較した。
概ね一致する。最大波高で比較すると、開発手法における
検証では、第 4 図に示す断層モデルをもとに、津波およ
予測波形(5 分観測)と予測波形(10 分観測)の正解波形
び微気圧数値解析により、予測地点の津波波形(正解波
に対する誤差は、それぞれ 11% と 6% である。
形)、津波観測位置での津波計算値および微気圧観測位置
リードタイムの比較としては、現行手法で正解波形に近
での微気圧計算値を算定する。津波観測位置および微気圧
似(最大波高で見て正解波形と誤差 20% 未満)とみなす
観測位置はそれぞれ第 1 図および第 4 図に示す通りであ
ことができる観測時間(最短観測時間)が 10 分であるの
る。次いで、計算値を観測値として波源推定法により予測
に対し、開発手法では 5 分である。最大津波の到達が地震
地点の津波波形(予測波形)を出力する。予測精度の比較
発生後 800 秒であることから、現行手法および開発手法の
としては、正解波形と開発手法で求めた予測波形を比較す
リードタイムは、それぞれ 200 秒、500 秒となり、開発手
る。また、リードタイムの比較では、現行手法と開発手法
法は現行手法の 2.5 倍のリードタイムを確保することがで
で正解波形と近似となるのに要する観測時間を比較する。
きる。
以降では、検証の結果について説明する。現行手法お
よび開発手法で求めた予測地点の津波波形をそれぞれ第 5
図(a)、(b)に示す。ここに、凡例の「予測波形(5 分観
測)」または「予測波形(10 分観測)」とは、地震発生後 5
4
まとめ
分または 10 分間に津波観測計器ならびに微気圧計にて観
津波監視システムにおける津波予測の迅速化ならびに高
測されるデータ(本検証では計算値)で予測した予測地点
精度化を目指し、津波より伝播速度が速い微気圧変動を活
の津波波形を意味する。予測精度の比較としては、現行手
用した津波予測手法を開発した。微気圧変動を活用した手
法における予測波形(5 分観測)は正解波形と乖離してお
法では、現行手法と比較して、迅速化ならびに高精度化を
り、予測波形(10 分観測)が概ね一致する。最大波高で比
実現できる可能性が示された。
較すると、現行手法における予測波形(5 分観測)と予測
最後に、本研究で紹介した各種検討は、一般財団法人日
波形(10 分観測)の正解波形に対する誤差は、それぞれ
本気象協会および東京都立大学の皆様にご協力をいただい
た。ここに記して謝意を表する。
津波数値解析
微気圧数値解析
津波観測位置で
の計算値
微気圧観測位置
での計算値
波源推定法
予測地点の津波波形
(“正解”波形)
正解波形
予測波形(5分観測)
予測波形(10分観測)
8
水位(m)
初期波源
(南海トラフ沿い地震モデルから計算)
4
0
-4
-8
0
予測地点の津波波形
(”予測”波形)
600
1200
1800
経過時間(s)
2400
3000
2400
3000
(a) 現行手法
第 3 図 開発手法における検証の流れ
8
水位(m)
微気圧観測位置
(想定)
4
0
-4
-8
0
断層モデル位置
600
1200
1800
経過時間(s)
(b) 開発手法
第 5 図 予測地点(発電所地点)の津波波形(検証結果)
第 4 図 断層モデルならびに微気圧観測位置
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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