技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
大高グリッド試験設備の構築
Construction of the Ohdaka Grid Test Facility
次世代の配電系統の諸課題への対応
将来の地産地消等によるエネルギーの有効活用、大規模災害時のレジリエンス強化など
の流れからマイクログリッド(以下「MG」)が脚光を浴びつつある。また、将来の電気
自動車(以下「EV」)や太陽光発電(以下「PV」
)のさらなる普及により、今までと異な
る電気の使われ方となることが予想され、これらが主に接続される配電系統での諸課題も
懸念される。
そこで、配電系統の諸課題について実設備を用いて対策・実証可能な大高グリッド試験
設備を構築した。
執筆者
電力技術研究所
電力品質グループ
岩田 邦男
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設 6.6kV 模 擬 配 電 線 や 抵 抗 負 荷(70kW)や 小 規 模 同 期
背景および目的
発 電 機( 合 計17kW) などを利 用しつつ、 新 たに蓄 電 池
(500kW)、電子負荷装置(50kW)、PV 模擬装置(50kW)
脱炭素社会に向けてPVのさらなる導入拡大、将来の EV
などを導入し、自由度が高い需給模擬を実現した。模擬配電
の大量普及に伴い、それらが接続される配電系統では今後
線は直列インピーダンスを接続した長亘長模擬が可能である。
様々な課題(過負荷、電圧変動など)が発生することが想定
蓄電池や電子負荷等の設備は現地の手動操作だけでな
される。一方、再生可能エネルギーの有効活用、エネルギー
く、クラウドで構築したエネルギーマネジメントシステム
の地産地消が叫ばれる中、ソリューションの1つとして、再エ
(EMS)による自動制御機能を有しており、MG や需要家
ネ電源と蓄電池を組み合わせた MG の普及も見込まれる。
EMS の制御ロジック検証なども利用できる。
将来の配電系統の諸課題や MG など新しい電力供給形態
特に、非常時の MG 自立運転における地絡故障による保
への対応、新型制御・機器の導入などの検討では、従来か
護制御の検証など実系統では実施が困難な試験が可能であ
ら計算機シミュレーションにより検証しているが、早期の
り、社会実装への大きな助けとなる。
社会実装を実現するためには実系統環境に近いフィールド
による検証が必要となってきた。
そこで、技術開発本部構内の 6.6kV 模擬配電線を有効活
用し、新型制御・機器などの接続や制御ロジックの検証が
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今後の展開
今後、大高グリッド試験設備を活用し、各種検証・試験
可能な大高グリッド試験設備を構築した。
を実施予定である。さらに開発機器や EMS 制御ロジック
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などの検証フィールドとして、当社だけでなく中部電力グ
大高グリッド試験設備の概要
ループ会社や他企業、学術機関などにも広く活用いただけ
るよう整備・充実させていく予定である。
大 高 グ リッド 試 験 設 備 で は、 技 術 開 発 本 部 内 の 既
第 1 図 大高グリッド試験設備の概要
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
2024.03/No.168
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