技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
3
4
システム監視機能
時刻同期手法
プロセスバス適用の監視制御システムは、従来の監視制
IED ~ MU 間 の 時 刻 同 期 は、IEC 61850-9-3 お よ び
御システムに比べて屋外 MU 装置、L2SW(レイヤ 2 スイッ
IEEE 1588 で定められている電力用プロファイルを用い
チ)、時刻同期サーバーなど構成装置が多いことから、装
た PTP(Precision Time Protocol) を 適 用 し た。PTP は
置や伝送路の不良時の故障部位特定に時間を要すること
伝送路遅延の補正が可能であり、マイクロ秒オーダー以下
が懸念される。このため、本システムでは各 IED および各
の時刻同期精度を有する高精度な時刻同期方式である。本
MU の自動監視機能にて通知される遠方表示の組合せで故
システムでは A 系と B 系のプロセスバスそれぞれに時刻同
障部位が容易に特定できるよう考慮した。監視制御システ
期サーバー(時計装置)を設置した。プロセスバスは A 系
ムの監視区分を第 2 図に、故障部位と遠方表示例を第 2 表
と B 系がそれぞれ独立しており、時刻同期サーバー故障時
に示す。第 2 図および第 2 表より、各故障部位に応じた遠
に片系のプロセスバスの継続運転が困難となる。その解
方表示が出力されることから、障害発生時においても故障
決方法として、各装置の設定を第 3 表のように設定するこ
部位の特定が容易にできる。
とで、時刻同期サーバー故障時においても BC(Boundary
Clock)である L2SW による PTP 時刻同期で継続運転が可
ステーションバス
GPS
アンテナ
IED
IED
A
IED
第 3 表 PTP 同期モードと優先度設定の例
B
※
※
時刻同期
サーバー
L2SW(A
時刻同期
サーバー
C, D
L2SW(B
E
MU_A
MU_B
屋外MU装置
MU_A
MU_B
F
装置種別
PTP モード
Priority 1
Priority2
時刻同期サーバー
MC
128
1
L2SW
BC
128
2
IED
OC
128
-
MU
OC
128
-
MC:Master Clock、BC:Boundary Clock、OC:Ordinary Clock
屋外MU装置
第 2 図 監視制御システムの監視区分
第 2 表 各故障部位に応じた遠方表示例
故障部位
能となるように設計した。
遠方表示例
5
まとめ
当社は、国内他社に先駆けてプロセスバスを適用した監
視制御システムを実変電所に導入し、そのシステム構成、シ
A
IED 故障
○○ IED 不良(重)または(軽)
B
IED ~ L2SW 間
全 MU** 系不良 + ○○ IED 不良(軽)
ステム監視機能および時刻同期手法を紹介した。本システ
ムでは従来のシステムと比較して MU 等の装置が増加するも
C
L2SW 故障
全 MU** 系不良 + 全 IED 不良(軽)
D
時計装置故障
時計装置不良 ** 系
E
L2SW ~ MU 間
○○ MU** 系不良(重)
F
MU 故障
○○ MU** 系不良(重)または(軽)
○○:回線名称等、**:A または B
のの、将来を見据えた合理的なシステム構成を検討し、障
害対応等を考慮した機能実装や設定を工夫することで、信
頼度および運用・保守性を維持したシステムを構築できるこ
とを示した。本システムは 2024 年11月より運用開始してお
り、他の変電所へも今後展開していく方針である。
加えて、変電所全体を監視する SCADA にて第 3 図に示
現状の課題として、MU の 2 系列設置に伴う装置費用の
すプロセスバス監視画面を構築することで、プロセスバス
増加、保護リレー装置のプロセスバス適用および MU のマ
の故障や状態を集中管理および視覚化し、保守性を向上さ
ルチベンダー接続の評価などが挙げられる。これらに課題
せている。
解決に向けて、各 IED に実装している機能の統合化および
屋外 MU 装置のコスト低減をすべく、今後更なる検討およ
び改良を行い、IEC 61850 を適用したデジタル変電所の標
A送電線 1L
A送電線 2L
B送電線 1L
B送電線 2L
ブスセクション
第 3 図 SCADA のプロセスバス監視画面
準化を進めていく。IEC 61850 の適用により、異メーカー
の装置で構築したシステムにおいても、様々な情報が共通
の通信フォーマットで伝送可能となる。今回、系統電圧・
電流値等の信号をデジタル化する MU を導入したため、将
来的にそれらの情報を含めて様々なデータをサーバーで蓄
積・分析することで、アセットマネジメントによる投資最
適化や、設備状態の自動記録による保守・管理業務の効率
化・高度化などの実現を目指していく。
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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