技術開発ニュース No.169

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研 究 成 果
Results of Research Activities
配電自動化システムのサーバ集約
Server Consolidation of Distribution Automation Systems
サーバ集約による高信頼性確保と保守運用の合理化の実現
執筆者
従来の配電自動化システムの各サーバは、60 事業場に分散設置され、信頼性や保守な
どの課題があった。そこで、新たに集約サーバを開発し、設置環境が充実したスマートメー
ターシステム拠点にサーバを集約した。それにより、高信頼性確保と保守運用の合理化に
加えて、スマートメーターシステムとの一体運用による高度な管理体制を確立した。
中部電力パワーグリッド
配電部 配電系統高度化グループ
内山 佳祐
1
今後の環境変化に対応していくため、配電自動化システ
背景・課題
ムの各サーバの集約により、「高信頼性確保」と「保守運
用の合理化」が可能となるとともに、スマートメーターシ
(1) 配電自動化システムの位置付け
ステムとの一体的な運用による高度なシステム管理・運営
配電自動化システムは、配電系統の遠隔監視・制御によ
る「配電系統運転業務の省力化」、「公衆保安の確保」、「供
給信頼度の維持・向上」などの役割を担う配電部門の基
幹システムである。昨今の「PV 大量連系に起因する電力
品質管理困難化への支援」、「激甚化・頻発化した災害に対
する早期復旧ニーズへの対応」なども期待されており、更
も可能となることから、サーバ集約の検討を開始した。
2
集約サーバの開発
(1) 集約サーバの要求水準の検討
配電自動化システムの集約サーバの開発(2016 年度~)
に、可用性(システムが機能停止しないこと)やシステム
にあたり、系統運転員(ユーザ)のニーズ、将来的な環境
保守運用(点検・保守や機能向上の迅速化)に関しての要
変化および、技術革新などの非機能要件に対する検討が必
求水準が高まっていた。
要となる。これらの検討には、独立行政法人情報処理推進
機構(IPA)が当時公開していた非機能要求グレード表の
(2) 分散設置された配電自動化システムの経緯と課題
全 238 項目に対し、要求水準の明確化を行った(第 2 表)。
従来の配電自動化システムの各サーバは、1980 年代か
第 2 表 非機能要求グレード表の項目
ら段階的に設置箇所を拡大し、60 箇所ある各事業場に 80
台のサーバが分散設置された(以下、このサーバを「分散
サーバ」という。)構成となった(第 1 表)。
第 1 表 分散サーバの構成
機能サーバ
設置単位
台数
配電自動化メインサーバ
事業場
60台
20kV級配電線用サーバ
特定事業場
3台
給制システム連係用サーバ
給電制御所
11台
支社間連係用サーバ
県対応支社
6台
80台
項目数
項目
可用性
33項目
性能・拡張性
43項目
運用・保守性
71項目
移行性
18項目
セキュリティ
37項目
システム環境・エコロジー
36項目
238項目
(2) システム管理用サーバの開発
スマートメーターシステムの監視に加え、配電自動化シ
このサーバ構成ではシステム保守に際し、「広域に散在
する分散サーバへのベンダー出向ロス」、「事業場の系統運
転員による対応」など、時間や費用といったコストを要し
ステム全体を、専任保守員による 24 時間 365 日の常時監
視を可能とするためにシステム管理用サーバを開発した
(第 1 図)。
ていること、環境変化を受けた将来的なシステム対応(機
能向上)の限界等の課題があった。
システム管理用サーバ
②結果連係
(3) スマートメーターシステム拠点への集約検討
スマートメーターシステム拠点は、以下の充実したシス
SMシステム
②結果連係
①状態監視
テム環境を有している。
専任保守員
(24時間365日)
・ベンダーの保守拠点から 1 時間以内の立地
・専任保守員による 24 時間 365 日の監視体制
・サーバ設置に適したデータセンター
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
状態監視
各機能サーバ
(配電自動化システム)
第 1 図 システム管理用サーバの概要
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