技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
AI を用いた三次元点群からの鉄塔等の
骨格座標抽出・推定技術の基礎開発
Basic Development of AI-based Technology for Extracting and Estimating Skeletal Coordinates
of Steel Tower Outlines from 3D Point Clouds
AI による効率的な三次元点群の処理を目指して
執筆者
近年,三次元点群の活用が広まっている。ドローンやヘリコプターで取得した三次元点群
は広範囲の座標系を整備できドローンの航路設計を簡略化すること等に役立てるメリットが
あるが,点の数が膨大なため,処理に人手や労力がかかる課題がある。本研究では点群の中
から鉄塔・電線・風車等を対象に重要な骨格・座標を自動で抽出・推定する技術を開発した。
電力技術研究所
電力設備グループ
八尾 健一朗
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はじめに
(1)腕金端点の座標抽出・骨格推定
第 3 図に示す通り腕金部に関しては,まず Z 軸方向か
ら見た腕金の付け根の 4 点を抽出したうえで腕金側の点
ドローンを用いた鉄塔点検のためには鉄塔部材と適当な
群 を Group A( 奥 側 ),Group B( 手 前 側 ) に 分 け て,
距離を保ちつつ鉄塔の周囲を飛行する航路設計が求められ
RANSAC(1) により直線を推定し,点の集合から直線を算
る。本研究では AI を用いて人手を介さずに膨大な点群デー
出した際に最もバランスのとれた推定直線を計算する。こ
タから鉄塔形状・部位を識別し,鉄塔外形を決定する重要
の交差点を利用して,先端の骨格座標を抽出する。また,
な骨格座標抽出や電線実長の概略計算を自動で行う技術を
その間の RANSAC で算出した直線を骨格として推定する。
開発した。
(2)頂部の座標抽出・骨格推定
頂部は腕金付け根の4 点を使用し,頂部の最下部を構成す
2
深層学習による鉄塔形状・部位の識別
る主柱材から頂部材の重心を通る重心線を求める。頂部の
主柱材の各辺でRANSACを行い,最頂部に直線が収束する
場合は四角錘型の頂部と判定し,頂部材重心線の最頂部を頂
鉄塔の骨格座標を抽出するには膨大な点群がそれぞれど
部点とする。鉄塔全体を処理した結果を第 4図に示す。IB線
の部位に該当するのかを識別する必要がある。このため,
No.10,TT 線No.2ともに腕金端点や頂部の骨格座標が抽出さ
鉄塔・電線・がいし等と部位ごとに AI にて深層学習させる
れ,骨格となる主柱材や腕金材などが直線で推定されている。
セマンティックセグメンテーション処理を行い自動識別を
可能とした(第 1 図)。
第 2 図 鉄塔の骨格座標抽出・骨格推定
第 1 図 鉄塔点群のセマンティックセグメンテーション
3
鉄塔の骨格座標抽出
レーザー測量した点群から鉄塔全体を三次元モデル化す
ることにより,大まかな骨格座標が得られる(第 2 図)。
一方,点群には粗密が生じるため,点群数の少ない腕金端
点,鉄塔頂部については特殊な処理により端点を推定する
必要がある。
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
第 3 図 腕金・頂部の骨格座標抽出
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