技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
①太陽追尾(発電量最大)モード・・・ 太陽光パネルが受ける日射量を最大にする角度に制御
3
栽培試験結果
(1)2023 年度夏作(2023.6 ~ 2023.10)
太陽追尾モード、-10° 固定ともに、収穫量は対照区の 6
②太陽逆追尾(影最小)モード・・・・ 農作物が受ける日射量を最大にする角度に制御
割程度まで減少した。発電量については -10° 固定と比べ太
陽追尾モードは 14%程度増加するという結果が得られた
(第 6 図)。
③上記の中間をとり、任意に設定した遮光率(影の割合)にする角度に制御
収穫量(1・2番草合計値)
(3)栽培試験について
各試験区(以下、PV 区という)の栽培面積は、12m×
18m(216㎡)であり、比較のために太陽光パネルを設置
16,000
1000
800
600
400
200
12,000
8,000
4,000
0
0
対照区
せずに牧草を栽培する 6m×45m(270㎡)の対照区を設け
PV区①
(太陽追尾)
PV区②
PV区①
(固定)
(太陽追尾)
PV区②
(固定)
※1)発電量はパワーコンディショナ出力値の積算値
第 6 図 発電量を最優先した試験結果
た(第 4 図)。
岐阜大学付属フィールド科学教育センター柳戸農場1号圃場
発電量※1(2023.6.9~2023.10.1)
1200
発電量(kWh)
第 3 図 パネル角度制御方法
乾物収量(gDM/㎡)
は太陽光の入射角度を示す
は太陽光パネルを示す
(2)2023 年度冬作 (2023.11 ~ 2024.6)
太陽逆追尾モード、27%遮光ともに収穫量は対照区と同
等であった。発電量は 27%遮光と比較し太陽逆追尾モード
は 4 割程度低下するという結果が得られた(第 7 図)。
発電量※1(2023.10.30~2024.6.8)
収穫量(1・2番草合計値)
第 4 図 試験圃場レイアウト
年間の栽培スケジュールを第 5 図に示す。夏作として
16,000
1600
発電量(kWh)
PV: Photovoltaic
乾物収量(gDM/㎡)
2000
1200
800
400
対照区
いた。スーダングラスについては 6 月に播種を行い 8 月末
10 月末に播種を行い、翌年 4 月に収穫し(1 番草刈取)、
再生した牧草を 6 月に収穫した(2 番草刈取)。
6月
7月
8月
9月
10月
夏作(スーダングラス)
1番草
2番草
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
PV区①
(太陽逆追尾)
PV区②
(27%遮光)
PV区①
(太陽逆追尾)
PV区②
(27%遮光)
※1)発電量はパワーコンディショナ出力値の積算値
4
今後の展開
2023 年度の栽培試験で発電最優先や生育最優先など基
礎データを採取することができたため、2024 年度以降は
時間帯毎および季節毎に遮光率を変化させる等の試験を行
冬作(イタリアンライグラス)
い、最適化に向けた検討を実施している。
2番草
1番草
4,000
第 7 図 生育を優先した試験結果
に収穫し(1 番草刈取)、再生した牧草を 10 月に収穫した
(2 番草刈取)。同様にイタリアンライグラスについては、
8,000
0
0
スーダングラス、冬作としてイタリアンライグラスを用
12,000
第 5 図 2023 年度 年間栽培スケジュール
夏作および冬作のそれぞれの試験区における制御モード
を第 2 表に示す。PV 区①では発電量を最大および最小にし
た場合に収穫量にどの程度影響を与えるかを確認すること
とし、PV 区②では参考としてパネルの角度を固定した場
合と遮光率 27% の場合の収穫量への影響を確認することと
した。
共同研究先
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
既発表
日本草地学会 /2024 年度日本草地学会帯広大会
(一社)農業電化協会 / 第 60 回農業電化研究会
出典
1) 農林水産省 畜産局飼料課,2024.12,「飼料をめぐる
情勢」,農林水産省 HP
2) 農林水産省「作況調査(水陸稲、麦類、そば、かん
しょ、飼料作物、工芸法作物)確報 令和 5 年度」,農
第 2 表 2023 年度の栽培試験
PV区①
PV区②
夏作(スーダングラス)
太陽追尾(発電優先)
-10°固定※1
冬作(イタリアンライグラス)
太陽逆追尾(影最小)
遮光率27%※2
林水産省 HP
※1︓パネルを東方向へ10°傾けた状態(パネル角度を固定した場合で発電量が最大になる角度)
※2︓夏作の栽培試験結果を基に収穫量が2割以上減収しないと推定される値
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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