技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
小規模発電プラントの運転データ分析
Operational Data Analysis for Small-Scale Power Plants
運転データから異常の早期発見を目指す
バイオマスなどを燃料とする小規模発電プラントの運転支援システムの開発に取り組ん
でいる。プラントで計測された温度、圧力、流量などの運転データを監視し、過去の運転
データから推定される正常な運転範囲から逸脱しているかを判定することで、異常の早期
発見を目指す。データに基づく手法と、モデルに基づく手法を併用していることが特長で
ある。
執筆者
電力技術研究所
機械グループ
山田 康二
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扱いに注意する必要がある。
背景
(1)2こぶ
バイオマスなど小規模な発電プラントにおいては、温
度、圧力、流量などを監視してしきい値により警報を出す
だけでなく、値を記録、保管する仕組みを備えている。し
(2)不連続に変化
(3)正規分布
3年間の
時系列
度数分布
かし、多くのプラントでは、記録した運転データはトレン
ド表示利用にとどまり、有効に活用されているとは言えな
第 2 図 データの分布パターン(一部)
い。大規模プラントでは、過去の運転データに基づいて現
在のあるべき値を予測し、そこから乖離すると警報を出
今後、この分布ごとに機械学習および統計的手法による
す、すなわち「いつもと違う」を検出する仕組みが実用化
異常診断の開発に取り組む。
されているが、多くのコストがかかる。本研究において
は、複数の手法を組み合わせることで高精度かつ安価なプ
ラント異常早期発見手法の確立を目指す。
2
4
モデルに基づく分析手法
モデルに基づく分析手法は、データの物理的な意味に着
運転データ分析手法
目して解析を行う手法である。第 3 図は、プラントの系統
から作成したヒートバランス(装置間で授受される熱量を
運転データを分析する手法を第1図に示す。本研究では、
計算する手法)図であり、これを用いて熱力学的な分析を
第1図に示す 3 つの手法を組み合わせる。
行っている。
運転データ
分析手法
データに
基づく
分析手法
モデルに
基づく
分析手法
機械学習的手法
統計的手法
物理モデル的手法
第 1 図 運転データの分析手法分類
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データに基づく分析手法
データに基づく分析手法は、データの物理的な意味を考
慮せず値のみに着目する手法であり、その分布や値の間の
関係が重要となる。一般に、プラント運転データの分布は
第 2 図に示すように正規分布から大きく外れるものが含ま
れる。第 2 図中(1)は多重系の切り替えや機器の起動停
止による 2 こぶ分布、(2)は手動による設定値変更や機器
調整により不連続に変化するパターンである。これらの性
質を持つデータは統計や機械学習に悪影響を与えるため、
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技術開発ニュース 2025.03/No.169
第 3 図 ヒートバランス図
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まとめ
小規模発電プラントに対し、簡易な異常早期発見手法の
確立を目指し、データに基づく分析およびモデルに基づ
く分析に取り組むことでプラント稼働率の向上に寄与して
いく。
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