技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
研 究 紹 介
Introductions of Research Activities
細胞凍結・培養・評価設備の構築
Introduction of cell freezing, culturing and evaluation equipment
未来の医療を目指した細胞凍結保存の研究設備
先 端 技 術 応 用 研 究 所 は、 国 立 研 究 開 発 法 人 医 薬 基 盤・ 健 康・ 栄 養 研 究 所( 以 下
NIBIOHN)、株式会社菱豊フリーズシステムズ(以下菱豊フリーズ)と共同で「未来の
医療を目指した細胞凍結保存に関する共同研究」を実施している。この研究をより積極的
に推進していくため、新たに細胞凍結・培養・評価設備を、技術開発本部(大高地区)構
内に構築するので、これを紹介する。
執筆者
先端技術応用研究所
先端技術ソリューショングループ
森 秀樹
1
ヒト細胞の研究について
3
培養・評価設備
当社は、これまで食材の美味しさを保ちながら強磁界下
当社は、これまでにも植物や海洋生物の実験が行えるバ
で冷凍する技術の研究開発を菱豊フリーズと共同で進めて
イオ関連の実験設備を有していたが、新たにヒト細胞用の
きた。一方、NIBIOHN は、菱豊フリーズ製の凍結機を使用
培養・評価設備を構築している。2025 年 4 月から運転開
することで、従来困難であった神経の機能を有した細胞製
始予定である。これは、清浄度グレード B のクリーンルー
品をその機能を損なうことなく生きたまま凍結保存するこ
ム内にヒト細胞用の保存・培養・評価・滅菌機器を備える
とを見出した。そこで、3 者は、これまでそれぞれが培っ
(第 1 表)。そこで開発した凍結機を使用して、オルガノイ
てきた知見を組み合わせて、細胞製品の凍結条件の最適化
ド / スフェロイドなど細胞製品を温度、磁束密度など各種
や、これに必要な凍結機の開発に共同で取り組み、再生医
条件にて凍結し、解凍培養し、凍結の効果を検証していく
療・創薬の発展に貢献することを目指している。
予定である。
第 1 表 クリーンルームと主な装置類
2
冷凍実験装置の製作・改良
当社は共同研究の役割分担として、菱豊フリーズと共に
細胞用の凍結機の設計・製作を担っている。現在、永久磁
清浄度
広さ
空調温度
空調湿度
主要装置
石の強磁界を利用した凍結機を使用し、様々な条件下で細
胞凍結実験を実施している。さらに、当社の強みである電
磁界制御技術を活かして、より広い実験条件で凍結試験が
行えるように超電導磁石を利用した細胞凍結装置を製作・
改良し、細胞凍結に供している。
4
グレード B(クラス 10,000)
6,000×4,000×2,300h [mm]
温度 23±2℃
湿度 60%以下
超低温冷蔵庫
安全キャビネット
小型細胞凍結装置
冷却機能付き遠心機
CO2 インキュベータ
細胞カウント装置
蛍光・光学顕微鏡
オートクレーブ
将来への展望
共同研究において、実験の評価は NIBIOHN のみで実施
していた。評価箇所が 2 拠点になる事で、偶発事象への対
応が迅速になり、実験の精度が上がる。加えて、各種の実
験条件を広げることができ、個々の細胞に最適な凍結条件
を見つけやすくなる。さらに、当社の得意とする DX/IT 技
術を利用して、2 拠点をより近づけ、研究情報の共有化を
図っていきたい。最後に本研究を発展させ、誰もが健康長
寿でいきいきとした社会生活をおくるための基盤を提供で
第 1 図 超電導細胞凍結装置
きるようにしていきたい。
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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