技術開発ニュース No.169

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研 究 紹 介
たものである。まずはこれらを、機械化方式のものに置き
換える必要があった。
容器の自作
流量計
手動バルブは、遠隔制御が可能で、機械的に開閉状態が
取得できる電動バルブに置き換えた。圧力計は、複数の
圧力センサを評価し、既存と同等以上の精度で機械に取り
込みが可能な圧力センサに置き換えた。温度計は、要件に
マッチした装置がないため、温度センサ素子を利用した装
置を自作した。( 第 3 図 )
現状方式
ハイブリッド流量計
雨量計
第 4 図 水量計測ユニットの開発
新方式
手動バルブ
電動バルブ
圧力計
圧力センサ
温度計
温度センサ
(4)揚圧力計測システム
最終的に出来上がった、揚圧力計測システムは、第 5 図
のような構成となる。これにより目標であった、現地出向
を完全になくすことができた。
水圧・水温計測ユニット
通信環境
電動バルブ
第 3 図 機械化方式の計測装置への置き換え
集約制御装置
LTEルータ
圧力センサ
温度センサ
これらの装置を組み合わせて、水圧・水温計測ユニット
を試作した。試作した計測ユニットを 1 年半かけて安定性
水量計測ユニット
を確認しながら、電気回路やソフトウェアを改良し、水圧
水温計測ユニットを実現した。水圧・水温計測ユニットの
開発により、現場作業時間を 80% 削減した。
(3)水量計測ユニットの開発
最後は水量計測の自動化となるが、水量については、開
ハイブリッド
流量計
WiFi
第 5 図 揚圧力遠隔計測システム
3
まとめ
発当初より課題が見えていた。まず、水の流量は、水滴が
高根第一ダムに、通信環境を整備し、計測ユニットを 10
ポタポタ滴る程度の少量から、水道の蛇口から流れるよう
台設置し、1 年半の試行を経て、揚圧力計測システムを実
な多量な場所があり、計測箇所、時期や水位により流量が
現した。揚圧力計測システムにより、遠隔地への出向及び
変動する。また、水が泥濁りしており、計器が泥詰まりす
急勾配、濡れた、狭いといった現場での作業を排除した。
る可能性がある。これらの条件下でも利用できる、水量計
また、丸一日かかっていた計測業務を、ほぼ 0 時間に短縮
測装置の開発が必要であった。
することができた。
水滴程度のポタポタの流量は、通常の羽根車式流量計で
さらに、揚圧力計測の自動化にて大量データが取得でき
は測れないため、転倒マス方式を用いた「雨量計」で計
るようになり、それらを活用した業務の合理化も期待でき
測する。水道の蛇口から流れるような場合にも対応するた
る。合理化の具体例としては、計測ポイントの削減、計測
め、通常の「流量計」も併用することで、幅広い流量範囲
頻度の適正化等である。
に対応した。泥詰まりは避けることはできないと考えてお
り、分解清掃が可能な構造を設計し、清掃運用で回避する
予定である。( 第 4 図 )
水量計測ユニットを開発することで、現場での計測作業
4
今後の展開
を 100% 削減することができる。水量計測ユニットについ
今後は、愛知の一部ダムから本格導入を開始し、水量計
ては、2024 年度より現地試行の予定である。
測ユニットはそこで現地試行する。2025 年度以降は、全
社展開の予定である。これまでに培った技術を活かし、今
後は社内だけでなく社会全体にも貢献していきたいと考え
ている。
技術開発ニュース 2025.03/No.169
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