プレスリリース

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世界初の「軸流式水冷媒冷凍機」の開発について~ 究極の自然冷媒「水」を用いた冷凍機の本格実用化に大きく前進 ~

2011年01月19日
株式会社神戸製鋼所
東京電力株式会社
中部電力株式会社
関西電力株式会社

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株式会社神戸製鋼所と東京電力株式会社、中部電力株式会社、および関西電力株式会社の4社(以下、「4社」という)は、このたび、Danish Energy Agency(注1)の支援と、財団法人電力中央研究所、Danish Technological Institute(注2)、およびJohnson Controls Denmark ApS(注3)の技術協力を得て、ビルや工場の空調や冷却プロセスなどに使用される冷凍機として、自然冷媒である「水」を採用した「軸流式水冷媒冷凍機」の試作機を世界で初めて完成させ、実用化に向け大きく前進いたしました。

地球温暖化問題を背景に、近年開発された空調用冷凍機や冷蔵庫の冷媒には、主に「フロン系冷媒の中では環境に優しいHFC冷媒(注4)」や自然冷媒である「二酸化炭素」、「アンモニア」、「イソブタン」等が採用されておりますが、本試作機では、より高い環境性を有する自然冷媒である「水」を冷媒として採用いたしました。

また、「水」を冷媒とした冷凍機は、これまでも遠心式圧縮機(注5)を搭載した冷凍機がありましたが、大容量機においては圧縮機の構造上、装置全体の小型化が困難という課題を有しておりました。このたび、4社が完成させた試作機は、専用の軸流式圧縮機(注6)を新たに開発し、遠心式圧縮機採用の水冷媒冷凍機(注7)に比べ、現時点において、直接熱交換器タイプ(注8)で設置面積は約3分の1(間接熱交換器タイプ(注9)は約2分の1)のコンパクト化を達成しております。また、冷房・冷却性能(COP(注10))はフロン冷媒冷凍機と同等の約5.4(間接熱交換器タイプは約4.8)を達成見込みで、今後、性能試験で確認してまいります。

今後、4社は、試作機の更なる改良と信頼性確認運転を継続し、本開発機の早期市場投入を目指してまいります。

「軸流式水冷媒冷凍機」の主な特長は、以下のとおりです。

1 冷媒として究極の自然冷媒「水」を採用

水冷媒の採用により、フロン冷媒等における「オゾン層破壊」、「地球温暖化」、「可燃性」、「毒性」等の問題点を全て解決。また、圧縮機の軸受潤滑剤としても水を採用。

2 大幅なコンパクト化

専用軸流式圧縮機の開発により、遠心式圧縮機採用の水冷媒冷凍機と比べ、現時点において設置面積が約3分の1(間接熱交換器タイプで約2分の1)と大幅なコンパクト化を達成。

3 フロン冷媒冷凍機並みの高性能化

目標冷房・冷却性能(COP)は、約5.4(間接熱交換器タイプで約4.8)。インバータ制御で部分負荷性能を向上。

4 多様なニーズに対応可能

他の冷凍機と併用できる「間接熱交換器タイプ」と単独運転用の「直接熱交換器タイプ」の両タイプの開発により、多様なニーズに対応可能。


(注1) Danish Energy Agency
デンマークエネルギー庁。

(注2) Danish Technological Institute
デンマーク国内外の業務用、産業用関連の幅広い技術開発やその普及拡大を目的に、デンマーク政府から認可された非営利研究所。

(注3) Johnson Controls Denmark ApS
デンマークの冷凍機メーカ。ビルのエネルギー効率を最適化する商品や技術を提供するJohnson Controls社(本社はアメリカで世界150カ国に展開)のグループ会社。

(注4) HFC冷媒:ハイドロフルオロカーボン冷媒
フロン系冷媒の中でもオゾン層破壊係数がゼロの環境に優しい冷媒であり、現在日本で製造される冷凍機にはこの冷媒が使用されている。

(注5) 遠心式圧縮機
気体を羽根車の外周部へ吐き出すことにより、主に遠心力の作用で昇圧させる圧縮機。ターボ圧縮機とも言われる。

(注6) 軸流式圧縮機
気体を回転翼の軸方向から吸込み、軸方向に昇圧させる圧縮機。ジェット機のエンジンと類似の構造。同一外径の場合、遠心式に比べ、より多くの風量を処理することができ、コンパクトで大風量処理に適している。

(注7) 遠心式圧縮機採用の水冷媒冷凍機
デンマークのLEGO社のオモチャ工場に設置されている同容量の冷凍機。外形寸法は、長さ12.2m、幅5.2m、高さ10.9m。

(注8) 直接熱交換器タイプ
水冷媒冷凍機は冷媒として水を使用しており、冷媒である水の流路と冷水、冷却水の流路を分離する必要がないため同じ空間内で混合させて熱交換させる熱交換器を使用したタイプ。

(注9) 間接熱交換器タイプ
従来のフロン冷媒冷凍機に採用されている熱交換器と同様に、冷媒である水の流路と冷水、冷却水の流路が分かれている(伝熱管の管壁によってお互いが隔てられている)熱交換器を使用したタイプ。

(注10) COP:Coefficient of Performance(【成績係数】=(冷房・冷却能力/消費電力))
値が大きいほど省エネルギー性が高いことを示す。
なお、COP値は、日本工業規格JIS B 8621に準拠した「冷水入口/出口水温12°C/7°C、冷却水入口/出口水温32°C/37°C」の条件における値で、COPが5.4とは、エネルギー投入量(消費電力)に対し5.4倍の熱エネルギーが取り出せることを意味する。

添付資料

以上

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