眠れるデータを拾い上げ、 地域の未来を変えていく

~電力事業で培った技術を他業界へ広げる、水道テレメータリングプロジェクト~

PROJECT MEMBER
Y.M

現在、中部電力の電力供給エリアのほぼ全てのお客さま(約980万台)にご利用いただいている電力スマートメーター。これにより30分ごとの電気の使用量を自動で計測し、内蔵された通信機能によって遠隔でメーターの指示値を取得することが可能となった。これは、中部電力の供給規模だからこそ実現できた自動検針システムだ。この技術を電力だけなく水道やガスでも活用できれば、地域はもっと暮らしやすくなる。そうした思いのもと、水道事業に自動検針を取り入れる、新プロジェクトが動き出した。

PROJECT FLOW

  1. 01.
    2014年 
    電力スマートメーター設置開始
  2. 02.
    共同検針の検討開始
  3. 03.
    2020年 
    共同検針に係わる技術検証
  4. 04.
    2021年 事業開始
  5. 05.
    2022年 電力スマートメーター
    ほぼ全てのお客さまに設置完了・
    MDMS(注)
    (メーターデータマネジメントシステム)
    提供開始
  6. 06.
    2024年~現在 データ利活用発展
  7. 2030年に向けマルチインフラDXの提供を検討中

(注) スマートメーターによって計測された水道使用量やアラートなどのデータを一元的に収集し、
管理・活用するための重要なシステム

PROJECT POINT

  • Check01 電力自動検針の枠を超える
  • Check02 一筋縄ではいかない水道事業」の現実
  • Check03 データを集めて終わりにさせないために
  • Check04 このシステムを当たり前の社会へ

CHAPTER 1

中部電力だからこそできる共同検針を、他業種へ広げていく

当社では、早くから電力の自動検針システム・電力スマートメーターの導入に取り組んできた。
この電力スマートメーターには、メーター機能と通信機能が備わっている。高層ビルが多い都市部や、起伏の激しい山間部でも安定した通信を可能にするデータ送受信機能。国の基準に従った万全のセキュリティ性能。水道やガス事業をもリードする自動検針技術がすでに完成されている。

「実は以前から、この検針技術をガスや水道にも転用できないかという声は、ガス会社や自治体からも頂戴していました。検針員が各戸を回り、目視で使用量を確認する。それは電気/ガス/水道のどれにも共通することです。日本は少子高齢化が進んでいて、検針員が不足する日が訪れるのは明らかです。そこで、私たちは当社の技術を他分野へ水平展開する共同検針(テレメータリング)の実現へ舵を切ったのです。」

テレメータリング事業を進めるのは中部電力の事業創造本部。長年、地域に根ざして事業を展開する中で培ったネットワークと技術を通して、地域の課題を解決し、電力事業の枠を越えた新しいサービスを生み出す部門である。

Mさんは、このプロジェクト参加へのきっかけをこう話す。
「事業創造本部へは社内公募で立候補しました。ちょうど私が異動したのが、本プロジェクトを立ち上げるタイミング。それまでの法人営業の経歴を買われてアサインされましたが、水道については全くの初心者。水道事業の基礎を学びながら、中部地方の自治体を一つひとつ訪問し、お話を聞くことからスタートしました。」

水道事業は各自治体が取り仕切っている。その訪問先はおよそ200。市役所や水道事業者などを地道に訪問し、テレメータリングのメリットについて説明していった。気が遠くなるような話だが、やがてその取り組みはひとつずつ実を結んでいく。

CHAPTER 2

「水道」だからといって一括りにできない現実と直面

水道事業の管轄は市町村のため、全国共通の運用はおこなわれていない。独立採算制で、水道料金収入によって事業に関わる費用や施設の維持管理費をまかなうこととされている。

「水道分野にも自動検針を、と自治体などから声は上がっていました。しかし、フタを開けてみると自治体ごとで水道事業の運営状況も、予算もニーズも全く違いました。中山間部は一戸一戸が離れているため検針に時間がかかることが課題、一方で、都市部は検針よりも取得データの活用に関心がある。また、降雪が激しい地域はそもそも冬季に検針がおこなわれていないなど、気づかなかった背景がどんどん見えてきました。当社の電力供給エリア全域に導入を進めていた電力スマートメーターとは違い、一律で話が進められるものではありませんでした。」

当時の驚きは相当だった。しかも自分たちは水道事業のプロではない。何をどうしていけば水道事業のためになるのか、正解が分からない。「これはもう地道に声を集めるしかない。そうすれば次第に形が見えてくると信じていました。」今でこそ軽く話せるが、新規事業ならではの困難の連続だった。その一方で、訪問を重ねる中で中部電力への期待や信頼を感じる出来事もあった。

「当社のネームバリューは、自治体に営業に赴く中でひしひしと感じました。アポイントメントを取るときも、“中部電力”と名乗るだけでお話を聞いてくださる。長年築き上げてきた信頼の賜物です。私たちが自動検針技術の効果性を説くと、“中部電力さんが言うなら真剣に考えないといけないな”、“怪しい話ではないな”と関心を示してもらえる。電力事業の枠を越え、これから先も健全に発展できる地域を作るため、当社が新規事業に取り組むべき使命を自覚しました。」

さらに、自治体の方々と話をしていく中で、当社だからこその強みを感じた。一般的に、行政同士の連携は、近隣市町村との連絡協議会がある程度で、十分な情報共有はされていない。しかし、隣り合う市町村は立地環境が似ていることが多い。第三者から見れば、しくみを共用することは可能だと考えられた。

「私たちが情報を一手に集め、近隣の自治体をつなぐハブになる。そんなビジョンが見えました。実際に“隣町はどうしていますか?”と聞かれることも多々ありました。ライバルだから表立っては聞けない、というケースも。私たちだから、心を開いて相談してくださるんですね。この信頼関係があれば、当社が中心となり情報をまとめ、効率的に事業を展開していくこともできるのではないかと、ここにも新たな可能性を感じました。」

そうした地道な面談を重ねることで、一つひとつ中部電力らしい水道テレメータリングサービスを具現化していった。

CHAPTER 3

本当に必要だったのは「データの利活用方法」

水道テレメータリングの最初の全数導入自治体は、静岡県湖西市。全国に先駆けて導入された。「愛知県豊橋市と静岡県浜松市に挟まれた湖西市は、早期にデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することを表明しており、DXを活用した新たなチャレンジには積極的だった。」とMさんは話す。一つ導入が決まると、他でも導入しやすくなるのが地方行政というもの。関心を示す自治体・事業者が増えていく一方で、新たな課題にも直面した。

データを収集したあと、そのデータをどう使うか、だ。

当社では水道検針で入手したデータを、福祉サービスなどに展開することも視野に入れて、提案を行っていた。例えば、高齢者福祉分野に展開すれば、水道使用量から生活状態を把握し、フレイル(加齢による心身の活力低下により健康と要介護の中間の状態)に陥っていないか検知することができる。画期的かつ効率的だと考えていたが、自治体の立場になると一概にそうとは言えないのが現実だった。

「自治体は縦割りで事業が進められており、水道事業と福祉事業では管轄部署が違います。その枠を越えるのが非常に難しい。両方の領域にまたがると予算配分はどうなるのかなど、検討すべきことが多岐にわたり、調整が難しくなってしまうんです。」

そこで、同じ事業創造本部で、福祉の面から自治体に働きかけていた別ユニットのメンバーと共同で説明をしたり、自治体の中でもDX推進課や企画課などのようなソリューションに取り組む部署を巻き込んだりしながら、一歩ずつ進めていった。
これでスムーズに進むかと思いきや、新たな壁が出現する。

「その収集したデータは役立ちそうだけど、うちでは活用する手段がない。」という声があった。

「当初、私たちのサービスは、収集したデータを検針のために提供することを想定していました。収集したデータは各自治体・事業者でとりまとめ、活用をしていただく。しかし実際にサービスを広げていく中で、“データを受け取った後のしくみづくり”が大きな壁になっていることが分かってきました。」

自治体側では、データ活用のためのシステム要件が複雑で、自前で準備するにはハードルが高いという声が多かった。さらにネックとなったのが、コストである。

「独自にシステムを構築しようとすると、どうしても高額になってしまいます。財政状況が厳しい自治体では、これだけで導入がストップしてしまうほどでした。そんな状況で、“中部電力でデータ活用のためのシステムまでセットで提供してもらえないか”という相談をもらうようになりました。」

そこで当社が次に動いたのが、既存のMDMS(メーターデータマネジメントシステム)を基盤にしつつ、収集したデータをさらに使いやすくする「付加価値プラットフォーム」の開発だった。
MDMS自体はすでに当社から提供していたのですが、自治体がデータを手軽に活用できるよう、分析機能や利活用のしくみを私たち側でまとめて提供する必要があると判断しました。これにより、自治体がゼロからシステムを構築しなくても、すぐに活用に踏み出せるようになりました。

「中部電力が付加価値プラットフォームを提供することで、複数の自治体・事業者で同じシステムを活用することができるので、導入コストが下げられます。こうしたしくみのおかげで、導入のハードルは確かに下がりつつあります。ただ、サービスとしてはまだ立ち上がったばかりで、これから導入自治体が増えていくことで、より価値を発揮できる段階だと考えています。」

現在は、水道使用量の検針データを活用し、漏水を検知し通知するサービスや、使用量や請求金額をWeb確認することのできるサービス、さらには先述のフレイル検知による“高齢者見守りサービス”の実証もスタートしている。データを集めることから、その先のデータ利活用まで。地域の課題を解決し、住みやすい街をつくるために、データにはまだまだ可能性が眠っている。

水道テレメータリングの契約数は、2025年10月には40自治体・事業者以上に広がった。行政は予算編成の時期が限られているため、検討から導入まで時間がかかるのが実情だ。本格的な導入は、まさにこれから始まろうとしている。

CHAPTER 4

水道テレメータリングがある生活を当たり前のものにし、
さらにマルチインフラDXビジネスへと昇華させていく

Mさんたちが考える次の課題はもう一つある。それが、「住民への定着」だ。
行政が費用をかけて取り入れるものは、市民生活に還元されるべきもの。住民サービスの提供はもちろんだが、それが生活にしっかりと根付けば、住民の満足度はより高まる。
自動検針された電気使用量も、中部電力ミライズの「カテエネ」によって見える化されたことで市民生活に着実に定着している。でも、水道はまだその段階に到達していない。「最初は物珍しさでどれくらい水を使っているのか意識をするかもしれないが、それを一過性で終わらせてはいけない」とMさんは話す。
例えば、時間帯ごとの水道使用量が分かれば、どの時間にどれくらい水を使ったから、この金額を払っているという実感が湧く。使用量と金額の関係性が明確になれば、日々の水道料金の請求に納得感が生まれやすくなる。それは、自治体や事業者にとって喜ばしいことでもある。

「水道テレメータリングがあると地域サービスの質が向上する、と感じていただけるように取り組んでいきたいです。今後は、通信回線サービス、MDMSに加えてBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)の提供も目指しています。」

BPOとは、自動検針の導入だけでなく、中部電力がその後の検針業務を一括で受託し、サービスを提供する方式だ。人口減少や財政問題が顕在化する中、自治体側は運営コストの削減が期待できる。

「加えて、水道テレメータリングを起点に新サービスも作っていきたいと考えています。ガスでも自動検針を組み込めば、電力・水道・ガスと3つのデータを複合的に分析できるようになるため、新たなサービスが生まれるかもしれません。可能性があると思うと、意欲も高まりますね。」

こうした次の一手へのアイデアは、自治体や事業者の皆さま、協力先のシステム会社、社内の別ユニットのメンバーとの対話の中で湧いてくるという。

「上水部門から下水部門へ異動したお客さまから連絡をいただいたことで、下水分野のデータ活用にも乗り出すなど、他分野への展開も始めました。他にも、水道使用量データを活用した空き家検知も、周りの意見を元に実証を進めています。」

かねてから電気使用量による空き家検知はおこなわれていたが、水道使用量を元に分析することで、今までは判別することの難しかった空き家を判別できるようになるかもしれない。一見関連性がないように見える分野でもデータが活用できる。大きな収穫であった。

「新規事業といっても、ゼロからイチを生み出すこともあれば、イチから広げて新しいイチを生み出すことも価値なのだと学びました。横へ横へと水平展開し、地域の住みやすさに繋げていきたいです。これからも挑戦ですね。」

電力スマートメーターから始まった水道テレメータリングプロジェクト。本サービスは、「スマートメーター通信回線の確立」という小さな事業からスタートした。しかし今後は、このテレメーターサービスをマルチインフラDXサービスへと昇華させ、質の高いインフラの提供やスマートシティの実現を通じて、さまざまな社会課題の解決に貢献していくことを大きな目標としている。
地域社会へ貢献したいと願うその思いが、今日もまた、新たな事業開発を生み出していく。

(掲載内容は、取材当時のものです。)

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