日本初進出!世界基準のプリスクールで
地域の暮らしを支えていく
日本初進出!
世界基準のプリスクールで
地域の暮らしを支えていく
~フィンランド教育モデルのインターナショナルプリスクールを開設する子育て支援プロジェクト~
- PROJECT MEMBER
- S.N
2026年4月、名古屋の一等地にあるザ・ランドマーク名古屋栄ビルに「HEI Schools Nagoya Sakae」が開園した。このインターナショナルプリスクールの運営に中部電力が携わっている。世界中に展開する「HEIスクール」の日本初進出となる本事業。なぜフィンランド式教育が選ばれたのか、どうして中部電力が乗り出したのか。そこには「今」だけでなく、この先何十年もの街の暮らしを見据えた大きな希望があった。
PROJECT FLOW
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01.2022年
HEIスクールの誘致に動く -
02.2023年
開園に向けて準備開始 -
03.2025年8月
子育て支援事業会社
「TCK Global Education合同会社」設立 -
04.2025年夏
入園希望者向け説明会スタート -
2026年4月
HEI Schools Nagoya Sakae開園
PROJECT POINT
CHAPTER 1
中部電力の子育て支援。すべてはこの街の暮らしのために
2026年4月に開園した新しいインターナショナルプリスクール「HEI Schools Nagoya Sakae」。この運営には中部電力が参画している。
なぜ本事業に乗り出すことになったのか。その背景には、継続して中部電力が注力してきたまちづくりの取り組みがある。
中部電力はこれまで「電気を安定して届ける会社」として地域の暮らしを支えてきた。今、その役割をさらに広げ、「暮らし全体を支える存在」へ進化しようとしている。数年前から当社では、「中部電力のまちづくりとは何か」という問いから出発し、人々の暮らしを豊かにする街の機能の開発に着目して検討を進めてきた。その中でも、私たちがこれからのまちづくりにおいて最も欠かせない分野だと考えたのが「子育て支援」である。世の中に目を向けると、子育てを社会全体で支えてほしいという声やニーズは年々高まっている。子どもたちが元気に育つ姿は、家庭や地域に安心を届け、それが街全体の活力を生み出す原動力になる。社会全体で子育てを支えるしくみが強く求められる今、安心して子どもを育てられる地域を築いていくことは、この街に深く根ざす当社が果たすべき、最も本質的な役割だと考えた。
では、子育てにおいて今この街はどのような課題に直面しているのか。未来の予測が難しく、過去の延長線上にない社会を迎える今、市場や保護者の関心は「学力一辺倒の教育」から、正解のない問いに立ち向かう「人間力(非認知能力)」の育成へニーズが高まっている。また、ライフスタイルの変化に伴い、幼少期から英語や多様な文化に親しみつつ、豊かな人間性を育める環境へのニーズは急速に拡大している。世の中の期待が一心に集まる領域だからこそ、これまでにない新しい選択肢をこの街に届けたい。そうした社会のニーズを形にするために模索を続け、行き着いた答えが、日本初進出となるフィンランド式のインターナショナルプリスクールであった。
■強力なパートナーと共に、事業化を進める
そうはいっても、私たちの基盤はエネルギー事業。グループ全体で見ると多彩な事業を取り扱ってはいるが、プリスクールの運営は全く新しい挑戦だ。また、高い専門性が求められる世界だからこそ、ゼロから自社だけで進めるのではなく、最適なパートナーと手を組むことが不可欠であった。
「連携先として選んだのは、幼児教育・保育分野で確かな実績を持つアルファコーポレーションです。地域密着で信頼を築いてきた私たちと、教育・保育のプロフェッショナルが一つになる。この組み合わせだからこそ、世の中にない新しい価値を届けることができると考え、2025年8月に「TCK Global Education合同会社」の設立へと至りました」(N)
そう語るのは、当社から本プロジェクトに携わっているNだ。Nは学生時代に小学校教員課程を経ており、子どもに関わる分野に強い関心があった。子どもの成長や子育てを通じたまちづくりに携わりたいという想いから社内公募でこの部署に異動した。面接の場でもその想いを伝えており、その後本事業の話が持ち上がった際には手を挙げ、このプロジェクトに加わることになった。
「学生時代に学んだといっても本プロジェクトにおいては私自身が指導者になるわけではありません。私たちが主に担うのは経営面。事業のしくみの構築から収支の管理まで、いわばバックヤードの担当です。当然ゼロからの経験で、日々手探りで試行錯誤を重ねていきました。」(N)
一般的に保育施設の経営は非常に難しい。園の広さや保育士の数によって、受け入れ可能な定員も異なる。経営を黒字化させるにも、保育費のバランスを見た綿密な計算が必要となる。新規参入する領域のため過去の実績もない。前例のない道だからこそ、自分たちにしかできないことを問い続けた。
■私たちにしかない園の価値を作り出す
この事業では、フィンランドの教育メソッドを世界展開できるように体系化した「HEIスクール」とライセンス契約を結び、そのカリキュラムを導入する形をとった。
「フィンランドは世界トップクラスの教育水準を誇る国として評価されています。その優れた教育メソッドを世界に広げる「HEIスクール」は、すでに世界25ヵ国で親しまれている国際ブランドですが、これまで日本には未進出でした。
フィンランド国家教育庁やヘルシンキ大学による最新の研究に基づいた「自ら学び、生きる力を育むカリキュラム」を、この名古屋の地で、日本で初めて受けることができる。学力だけでなく、これからの時代に求められる人間力を育みたいと願う保護者の方々にとって、これほど心強い選択肢はないはず。世の中が今まさに求めている本質的な答えがここにあると、強い手応えを感じました。」(N)
最初に選ばれた立地は、名古屋市・栄に新たに開業するビル「ザ・ランドマーク名古屋栄」。建設にあたり、保育施設の事業者募集がおこなわれていた。地下鉄駅直結、栄通勤の家庭が利用しやすい好立地であり、1号園としての看板効果も見込めると名乗りをあげた。開園は2026年。そこからもまた挑戦の連続であった。
CHAPTER 2
HEIスクールの理念を守りながら日本らしさを取り入れる
HEIスクールにはしっかりと練り上げられた教育プログラムが構築されている。そのため全世界、どのスクールでも同じ水準の教育が受けられることが魅力の一つだ。一方で、誘致にあたり他国のHEIスクールを視察したNには、各国独自のカラーを感じたという。
例えばタイでは客人をもてなす文化をスクールでも取り入れ、Nたちの来校を歓迎してくれた。韓国では、スクールのある島が取り組む芸術振興を受けて、アートに触れる教育に力を入れている。基本の教育方針を遵守しながらも、各国独自のカラーを組み合わせられる柔軟性こそがHEIスクールの魅力だと感じた。日本ならではの文化や価値観を取り入れながら、フィンランドにある本部と議論を重ねることとなった。
「日本初進出のプロジェクトだからこそ、園内の設備一つをとっても、安全面や環境面の基準をどこに設定するかは手探りでした。日本の法律や保育現場の常識と、フィンランド本部が守りたい理念。異なる2つの価値観を突き合わせながら、お互いがベストだと思える着地点を粘り強く見つけていかなければなりませんでした。」(N)
■日本とフィンランドの良さの融合を目指して
フィンランド本部とは英語でコミュニケーションを取っている。しかし、フィンランドの母国語も英語ではなく、お互いが普段使わない言語で意思疎通をしている状態だ。時差の面からも連絡はメールが中心となるため、小さなことでも齟齬がないように念入りに確認する日々だった。
「フィンランドでは子どもの個性を尊重します。子ども自身の“やりたい”や“気になる”などの能動的な興味関心を大切にするため、先生側から何かをさせるというアクションは取りません。ここは日本の教育とは逆です。でも、私たちは日本の教育の良さもあると思っています。例えば発表会。役割を決めて、演じるのはフィンランドの感性からするとなじみにくいものかもしれません。しかし日本、特に保護者からすると発表会は協調性など子どもの成長を実感できる場になります。一方に寄りすぎることなく、日本とフィンランドの互いの良さの融合が必要不可欠だと考えています。」(N)
日本初進出となるからこそ、今後の事業展開を見据えて、自分たちが日本スタイルの土台をつくる役目も担う。これも一つの大きな挑戦だった。
他にもフィンランドとは異なる土地柄ならではの苦心があった。園内のインテリアはフィンランドの方針に則りスタイリングできたものの、屋外環境に頭を悩ませた。
一般的なイメージでもあるように、フィンランドをはじめとする北欧は森林が豊富で暮らしの中に自然とのふれあいが日常化している。今回設立したHEI Schools Nagoya Sakaeは名古屋でも都心部の立地にある。都市型公園の整備が進んでいるとはいえ、ビル街だ。フィンランド式教育を進める中で、マイナスとならないか。入園希望の保護者からも必ず質問に上がる懸念点だった。
「自然との触れ合いを非常に重視しました。ビルオーナーと協議を重ね、ビルの屋外芝テラスを活用させていただけることになり、日常的な緑との触れ合いの場を確保することができました。近隣の公園も活用しながら、先生方が子どもたちにとって豊かな自然体験となるよう工夫してくれています。今後は、他の園や自然と触れ合える施設との連携も視野に入れています。存在しないものは叶わない。ではどうすれば子どもたちに良い環境を用意できるか。その実現を支えることが、私たちの仕事です。」(N)
本部との調整は細かなところにまで及んでいる。自分の担当パートのみならず、新たに出てくる課題に率先して対処し、急ピッチで準備を進めていった。
CHAPTER 3
入園者向け説明会で気付かされた理想とリアルの差
開園準備として園内の仕様や先生の手配、プログラムの調整を進める一方、もう一つ鍵となるのが園児募集である。ここにも想定していなかった課題が現れた。
■この分野ならではの向き合い方にマインドチェンジ
2026年4月の開園に向けて、説明会は2025年夏から開始された。フィンランドの本部からCEOを招き、HEIスクールの特徴について語ってもらう。ゲストの調整もNの仕事であった。
「正直なところ、話を聞けば聞くほどHEIスクールの教育理念の良さに惹かれていた自分がいましたし、中部電力という地域の認知度の高さもあるので、入園志望者は簡単に集まると考えていました。」(N)
しかし、現実はそう甘くなかった。子どもを預け、託す。その点において親のジャッジは非常にシビアだ。幼児教育・保育への知見豊富なパートナーのアルファコーポレーションからも、園選びは保護者間の口コミが重要になる世界だと話は聞いていた。
新規開園で実績はない。加えて建設中のビルのため、園内の見学もできない。並行して運営方針を固めており教員も決定していない。数ある施設の中から預け先に選んでもらうには、情報量が不十分だった。
「数十組のご家族が説明会に足を運んでくださいました。しかし、そこで私たちがおこなった説明会は1人の話し手が大勢に説明するアナウンス方式。 今振り返るとこれは大きな反省点です。居住地や保護者さまの働き方、園生活において重要視することなどは各ご家庭で異なります。保護者さまが聞きたいことも同じではありません。各ご家庭と1対1で向き合い寄り添うことが必要だと痛感しました。」
保護者の視点に立ってみると、入園先を決めるためには何よりも「子どもが健やかに過ごせるか」が必要だった。どんな先生がいるのか、自分の子どもの性格と合っているか、信頼できる園なのか。ネームバリューやプログラムの充実度だけでは計れない世界が広がっていた。
それ以降は告知の方法に工夫を加え、対話を重ねる方針へ切替えていった。
広報手段も新たに見直し、SNSを中心とした告知だけでなく、当社の営業チームに協力を願い出て、地元企業への直接的なPRも始めた。まずは経営基盤が整った母体をバックボーンに持つ園だというところから関心を持っていただき、そこから個人説明へとつなげていく。当社だからできる既存の強みを活かす形だ。
■このプロジェクトを新規サービスの出発点に
加えて現在は、HEI Schools Nagoya Sakaeならではの付加価値の創出に取り組んでいる。名古屋エリアは私立小学校が少ない公立文化の地域である。幼児期に英語力を高めても、小学校では日常的に使うシーンが少なく、民間の塾に頼らざるを得ない環境にある。その状況にメスを入れ、小学校低学年に向けた英語でのアフタースクールの実施も検討している。低学年の児童の早い時間帯の下校に対して、働く親としてどう対処するか、いわゆる「小1の壁」への支援にもなる。
「私たちはサービスをただ提供するだけでなく、そこから見えてくる課題や気づきを丁寧に拾い上げていきたいと思っています。事業としての視点、現場の視点、そして保護者の方々が求めることを同時に考えながら運営を重ねることで、子育て世代が抱える本当のニーズが見えてくる。その歩みが、いつかより暮らしやすいまちづくりの一助になっていくと信じています。」(N)
新規事業への足がかり、既存事業との紐付け。このプロジェクトには、新たな可能性がまだまだ眠っている。Nも「日々の積み重ねの中から、本事業にとどまらない新たな活路が見えてくればと思っています。このプロジェクトをきっかけに、もっと広い形で地域の暮らしに貢献できるよう成長させていきたいですね。」と展望を語った。
HEI Schools Nagoya Sakaeの開園はゴールではなく、あくまでもスタート地点である。まずはこの場を安定的に運用することが第一ミッションだ。
はじまりを迎えたプロジェクトを「続くもの」「広がるもの」として育んでいく。子育て支援プロジェクトはこれからどんな価値を創出していくのか。挑戦はここからだ。
(掲載内容は取材当時のものです。)