電力を止めない日々を支え続ける、
「電力会社」のシステム開発

~500人を超える開発者がバトンを繋ぐ、配電業務総合支援システム再開発プロジェクト~

PROJECT MEMBER
Y.A 業務統括、アプリ開発(工程管理)担当 / Y.S アプリ開発(設計領域)、インフラ調整担当 / M.Y アプリ開発(工事管理)、インフラ調整担当

中部電力の技術系職種は多岐にわたる。その中の一つ「IT部門」は、中部電力グループ内のシステム開発・運用、DX、セキュリティマネジメントなどIT領域を専門に担うプロフェッショナル集団だ。デジタル技術を駆使して、各種業務の高度化と効率化を支えている。そんなIT部門が扱うシステムのひとつに「配電業務総合支援システム」がある。「配電業務総合支援システム」とは、電柱の建設位置などを決めるシステムである。このシステムはリリースから20年以上が経過しており、2021年からは再開発に着手している。中部電力パワーグリッドの中でもトップクラスの規模を誇るプロジェクト。既存システムの課題を解決しながら、より使いやすい形へ変えていく。これは、業務の根幹に関わる新たなシステムを作り出す挑戦である。

PROJECT FLOW

  1. 01.
    2002年
    配電業務総合支援システムを
    開発・リリース
  2. 02.
    2021年
    再開発仕様検討開始
  3. 03.
    2023年
    要件定義確定
  4. 04.
    2024年
    設計開始
  5. 05.
    2025年
    プログラムテスト開始
  6. 2027年1月
    運用開始予定

PROJECT POINT

  • Check これまでの業務のあり方を変える、新しい挑戦
  • Check IT部門でこそ大切なコミュニケーションスキル
  • Check システムの先には、常に「人」がいる

CHAPTER 1

現行システムを踏まえながらも、新しいシステムを作り出す。
業務のあり方を変える挑戦。

日常生活において当たり前のように電気が使える。
中部電力グループで働く社員が胸に刻む使命の一つは、そんな「電気を止めない日々を守る」ことだ。
電力供給を止めないためには、業務を止めないことが必要となる。

現在、電力事業に関わる業務の多くは、専用のシステムを使っている。常に動作・処理が安定していて、不測の事態が発生してもすぐにリカバリーできる。
そんな「業務を止めない」システムを開発し、運用する。それがIT部門の役割のひとつである。

■電力会社における「システム開発」とは

生活インフラである電力事業は、セキュリティなど情報管理の重要度が高く、業務知識も専門的なため、これまでは信頼できるベンダーとともにスクラッチ開発(注1)でシステムを作り上げてきた。しかし近年では、パッケージシステムやクラウドといった外部サービスを有効に活用しながら、状況に応じて最適な開発手法を選択するスタイルへと変化している。外部企業と一体となって開発を進めることで、スピード感・柔軟性・コスト面など開発・運用の合理化にも努めている。ベンダーの技術をうまく取り入れることによって、当社の業務に最適化されたシステムに調整していくのだ。
(注1)既存のシステムを利用せず、要件に合わせてゼロからシステムを構築する開発手法

「私たちが生活の中で使うシステムは、その多くは代替が効き、トラブルでメンテナンスが停止したとしても大きな不都合が生じるリスクは少ないです。しかし、電力事業のシステムはそうはいきません。システムに不具合が発生した場合、安定した電力供給に支障が生じることもあります。これが、私が電力会社のシステム開発にやりがいを感じる理由のひとつです。」(A)

電力事業においてシステムは非常に重要な存在である。しかし、レベニューキャップ制度(注2)の導入などの社会的事情により、電力事業は整備や維持のコスト管理にとても厳格で、システム開発における予算配分の制約も増えているのが実情だ。そうした中でも低コストで業務を円滑化できる効率的な機能を実装していくために、IT部門の業務は常に挑戦の連続だと3人は語った。
(注2)電力託送料金制度。一般送配電事業者が送電網の整備や維持にかかる5年間の年間収入に上限(キャップ)を設け、料金設定や収益を一定範囲に抑えるための規制。コストが増えても価格に転嫁できない。

■20年ごとに訪れる大改革

今回再開発するシステムは、20~30年使い続けているシステムである。システムの運用開始後も現場の要望に応じて機能を付け足していくが、追加を繰り返していくと構成が複雑化し、ブラックボックス状態に陥ってしまう。システムのレガシー化(注3)を防ぐために、一定の期間で改修ではなく新たに作り替えていく必要がある。
(注3)老朽化・複雑化して最新技術や時代の変化に対応できなくなった状態のこと

「今回再開発をすることになった“配電業務総合支援システム”も度重なる改修の結果、構成が複雑化していました。加えて、人口減少に伴って働き手が減っていく社会の到来や電力供給手段の多様化など社会情勢も開発当時と大きく変化しています。現在、そして未来にアジャストできるシステムの再開発は喫緊の課題でした。」(S)

「配電業務総合支援システム」とは、配電部門の中でも配電設備工事の設計業務に関連したシステムである。元々は土地の特性や電力の系統などに合わせて、電柱を立てる最適な位置や電線の配線ルートを設計するシステムだった。このシステムが担っているのは設計のみで、建設ノウハウのデータ化や他現場への横展開は守備範囲外。また、工事に関する事務手続き・管理も担当者が別のシステムを使って手動で処理をしていた。

「機能性の向上はもちろん、工期の短縮や業務コストの削減も目標に掲げました。2021年から2年間にわたり企画検討を進め、システム同士を必要最低限だけ繋げる“疎結合”方式と“他業務システムとの統合”という方針を決めました。」(A)

複数の機能を搭載しながらも、改修しやすく、これまで業務ごとに使い分けていたシステムを一元管理できる新システムへ。リリース日は2027年1月。社内メンバーだけでなく、従来の各システムのベンダーを含め、500人以上が携わる社内指折りの大規模開発が動き出した。

再開発が目指す変化。業務とシステムのこれまでとこれからの比較

API:異なるソフトウェアやプログラム、Webサービス同士をつないで機能やデータをやり取りするための接続口のこと

CHAPTER 2

IT部門でこそ大切なのが
コミュニケーションスキル

長期大規模プロジェクトには多くの人員が携わる。3人も進行中のプロジェクトにジョブローテーションで途中から加わった。同じIT部門であっても、それまで従事していたものは全く違う業務である。

「自分から周りに聞き、学ぶことが必要不可欠でした。上司・先輩に質問するだけでなく、配電業務の基礎から現行システムの特徴、新開発の方針まで早く理解できるよう、自分用の教育資料を作成するなど、最初は苦労しました。」(Y)

Aも「学生時代に“システム開発にはコミュニケーション力が必要”といわれていた意味を痛感した」と口にする。特に今回は、通常は1社のベンダーと開発を進めるところ、複数のシステムが関連するため複数社のベンダーが参画していたため、なおさらだ。

■大規模プロジェクトを経て身につけた自信

「ベンダーごとに見解や得意分野も異なるため、さまざまな情報を集めて最適解を見定め、全員の向かう方向をとりまとめる必要がありました。コミュニケーション力とは“話す”だけではなく、“傾聴”、相手の気持ちに寄り添い、心の内を聞き出す力も大切だと気づきました。プロジェクト全体を俯瞰して管理する立場を経験して自分自身も成長できました。」(A)

当社の業務の知識を踏まえた上で、各ベンダーの意見に耳を傾け、真に必要なことを見極め、決断していく。それが本プロジェクトメンバーの役目でもあり、求められる力量だ。
今回のプロジェクト進行にあたっては、1つのフロアに社内メンバー、開発メンバーがデスクを並べる体制をとっている。

社内メンバーには、IT部門の技術者以外に、配電部門出身で実際の現場にて電柱の設計・建設を数多く経験した技術者も名を連ねる。システムのプロと現場業務のプロ、両者が協力し、必要なシステムは何か突き詰めていく。分からない領域は聞き、意見を伝え合い、最適な環境を整えていく。共に開発する体制は、システムの精度を高めるための力となった。

■直接話すことが、新たな一手に繋がる

「プロジェクト進行にあたっては、直接話すことを大切にしてきました。メールやチャットで済ませるのではなく、相手の元へ足を運び、意見を交わす。この行動が当たり前になっていることで、後からプロジェクトに参画するメンバーも遠慮することなく疑問をぶつけて学ぶことができています。」(S)

直接話すことで、その場で新たな策が見つかるなど業務が円滑に進んでいるという。相手と向き合う姿勢は信頼関係の構築にも繋がったとそれぞれが語った。
各社の業務タイミングによるスケジューリングの難しさや、念入りなリスクヘッジの検討など、マルチベンダーが関わる大規模プロジェクトならではの壁も多く、乗り越えたことは自信になったと、全員が成長を実感している。

「IT部門の業務には今回のように電力事業に関する社員向けのシステム開発もあれば、“カテエネ”のようにお客さま向けのシステム開発も存在します。どちらもシステムに求められる真の目的や背景を理解し、形にしていくことに変わりはありません。今回の経験は、今後のどんな開発にも生きていくと感じています。」(A)

加えて、3人ともが入社前は中部電力に堅苦しいイメージがあったとも話した。

「配電部門のメンバーと話すと、柔軟性に驚かされます。伝統を守るだけでなく、良き所は守りながらも、より良く変えていこうという改革意識を持っています。提案すれば答えてくれる。スケジュールや予算感も踏まえて、開発でやるべきこと、現場の取り組みでカバーできることを一緒に判断して最適解を目指そうとしてくれます。」(Y)

強い矜持を持っているだけではない。今まで「当たり前」であったことでも新しく変えていく。より良い未来に向けて挑戦し続ける。当社の社風を今、肌で感じている。

CHAPTER 3

システムの先には常に「人」がいる。
より良い効果を目指していく

配電業務総合支援システムの再開発にあたっては、20年間現場で活用されてきた旧システムとのギャップが大きくならないよう留意した。使う人が使いやすく。システムを活用する現場技術者が多いからこそ、ハレーションを起こさないことも大切になる。
新しいシステムでできること、システムを使わなくても運用で対処できることを、開発時間・費用などさまざまな背景を考慮してバランスを取った選択をしていく。

■アプリ開発とインフラ整備、両面に向き合う

アプリ開発を進めながら、そのアプリを円滑に使うためのインフラ整備も並行してSやYが担当している。GIS(地理情報システム)性能や操作端末など、開発したシステムの操作性を高めることがミッションである。

「兼任で担当しているため、アプリ開発における課題解決を担うのが、インフラ整備での自分自身というケースも多々発生しました。こうしたいという気持ちは分かるけれど、こっちにはこっちの課題がある。常に頭の中で二人の自分がせめぎ合っていました。しかし、両面に携わることで俯瞰してプロジェクトが把握できましたし、互いの言い分をどう着地させるか、というのは視野を広げる機会になりました。」(S)

さらに、新システムでは新しい業務のあり方を構築している。
例えば、現在は電柱を立てる場所を訪問し、調査した後、支社に置かれている専用端末からでないと設計ができなかった。今回はクラウドを活用し、その場で設計までできるように仕様を変更した。加えて、条件を入力するだけで自動的に最適な設計プランを提示する機能を実装。工程管理・工事管理も同一アプリ内で操作できるようになり、業務の大幅な効率化を実現できる見通しだ。

「IT部門は、“電気を届ける”業務を直接担っているわけではありません。しかし、私たちの業務の先には、安定した電力を届け続けるために日々努力する現場が存在します。スムーズな業務が可能になれば、その分、1つの業務にかかっていた時間を短縮でき、人員を他の業務に回すことができます。私たちの仕事が間接的にお客さまの満足度を高めていく。改めて思う、この仕事のやりがいです。」(Y)

■システムはリリースして終わりではない

実は、今回のプロジェクトも予算や納期の都合上搭載を見送った機能が存在する。

「2027年1月リリースのシステムは第1フェーズと位置づけています。第2フェーズでは、電気を送るルートを制御している制御系システムとの連携や、さらなる業務効率化につながる機能を追加予定です。」(S)

新システムはリリース後、20年、30年と運用を続けていく計画だ。今後さらに進化していくテクノロジーの活用も視野に入れており、AI分析機能など最新技術の研究や検討も並行して進めている。

「私たちはIT部門で別の業務を経験してから、このプロジェクトに参画しています。過去の経験則があるからこそ新たな提案ができることもあり、さまざまな知識を備えたメンバーが入れ替わり立ち替わりシステム開発に携わることで、今後さらに可能性が広がっていくのではないかと期待しています。私もここで得た経験を、これからのシステム開発にも活かしていきたいです。」(Y)

社員向けからお客さま向けまで、さまざまなシステム開発に携わるIT部門特有のジョブローテーションが、こうした効果を生み出しているのだ。
社会の変化は止まらない。今、当たり前の日常は、数年後にガラッと変容していることもありえる。変わりゆく社会やその中でのニーズに対応し、より良い効果をもたらせるシステム開発。今後は当社内に留まらず、開発したシステムを外部の会社に販売していく未来も訪れるかもしれない、とAは語った。

システムで電力事業とその先の生活を支える。IT部門の挑戦は、今日も続いている。

(掲載内容は取材当時のものです。)

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