社会
人権の尊重、人権デュー・ディリジェンス
ビジネスのグローバル化による企業の人権に関する影響力の拡大に伴い、国際社会による企業の人権尊重の取り組みに対する要請の一層の高まりを踏まえ、中部電力グループは、2023年7月に「中部電力グループ人権基本方針」を改定いたしました。
本方針に基づき、人権デュー・ディリジェンスをはじめとする人権尊重の実践により一層取り組んでまいります。
中部電力グループ人権基本方針
中部電力グループCSR宣言に基づき、人権に関する基本方針を以下のとおり定める。
中部電力グループは、「国際人権章典」および国際労働機関(ILO)「労働の基本原則および権利に関する宣言」をはじめとする人権に関する国際規範を支持、尊重します。
また、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の実践に努めます。
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人権の尊重
事業活動に関わる全ての方々の人権を尊重します。
また、人権侵害に加担しません。
中部電力グループは、事業活動をおこなう国や地域で適用される法令を遵守します。
万一、各国や地域の法令と国際的な規範・原則との間に差異や矛盾がある場合は、国際的な人権の規範・原則を尊重する方法を追求します。 -
適用範囲
本方針は、中部電力および連結子会社のすべての役員および従業員に適用します。
また、上記のサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーの皆さまにも、本方針への理解・協力を求めるとともに、本方針が尊重されるよう、継続的に働きかけます。
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具体的な人権課題へのコミットメント
中部電力グループは、事業活動におけるあらゆる機会において、人権に関する国際的な規範・原則に則り、以下の権利と尊厳を尊重します。
(1)人種、国籍、出身地、信条、年齢、性別、性的指向、性自認、社会的身分、門地、障がいによるあらゆる形態の差別をおこないません
(2)パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントをはじめとするあらゆる形態のハラスメントをおこないません
(3)結社の自由と団体交渉権を尊重します
(4)ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを推進します
(5)人身取引、強制労働および児童労働は、いかなる形態であるかを問わずおこないません
(6)最低賃金の確保と生活賃金を支持します
(7)労働時間を適正に管理し、過剰な労働時間を削減します
(8)健康かつ安全な職場・作業環境を確保します
(9)個人情報およびプライバシーを保護します
(10)地域社会の環境保護に努めます
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人権デュー・ディリジェンスの実施
事業活動が及ぼす人権への負の影響を特定・評価し、そのリスクを防止または軽減するために、人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、継続的に実施します。
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救済と是正
中部電力グループは、人権に係る問題に適切に対応するため、通報窓口を社内外に設けます。
通報窓口は、中部電力グループの役員および従業員だけではなく、サプライヤーを含むビジネスパートナー、地域コミュニティの皆さまを含むあらゆるステークホルダーも利用可能とします。通報においては、通報者の匿名性や、通報内容の秘密を守ることはもちろん、通報者に対する不利益な取り扱いや報復措置を禁止し、通報者の保護を徹底します。
中部電力グループの事業活動が、人権に対する負の影響を引き起こしたり、あるいは助長したりすることが明らかになった場合、適切な手続き・対話を通じてその救済と是正に取り組みます。
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対話と協議
人権に対する実際の影響あるいは潜在的な影響への対処について、関連するステークホルダーと対話や協議をおこなっていきます。
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教育と研修の実施
人権に関して正しい理解と認識を深めるため、教育・研修を計画的かつ継続的に実施します。
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情報開示
中部電力グループは、本方針に基づく取り組みについて定期的に情報開示します。
2023年7月10日改定
中部電力株式会社
代表取締役社長
中部電力全社人権啓発推進計画
中部電力グループ人権基本方針に基づき、すべての人権が尊重される社会の実現に向け、企業の社会的責任を果たすため、次のとおり、啓発活動を計画的かつ継続的に実施する。
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人権啓発研修の実施
同和問題をはじめとした人権問題を正しく理解し認識を深めるため、階層別研修、事業場研修の機会を捉え、教育を実施する。また、関係行政・諸団体が主催する人権問題に関する社外研修へ積極的に参加する。
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人権意識啓発活動の実施
人権尊重意識の高揚を図るため、男女共同参画週間(6月23日~29日)や、人権週間(12月4日~10日)などの時期を捉えた意識啓発活動を実施する。
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相談窓口の浸透
明るく働きやすい職場環境づくりに向け、それをサポートする「ハラスメント相談窓口」や「人事相談室」に対する従業員およびともに働く仲間の認識を高め、存在を浸透させる。
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グループ企業との連携
グループ企業全体の人権意識を高めるため、グループ企業と連携して人権啓発活動を実施する。
中部電力グループの人権尊重の取り組み全体像
中部電力グループでは、企業と人権に関する最も重要な国際的枠組みの一つである「ビジネスと人権に関する指導原則」などの人権尊重の枠組みに則り、人権への負の影響を防止・軽減し、救済するための具体的な措置として、「(1)方針によるコミットメント」「(2)人権デュー・ディリジェンスの実施」「(3)救済措置」を実施しています。
3つの取り組み | 一般的な内容 | 当社での取り組み |
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(1)方針によるコミットメント | 人権に関する対応方針を策定し、企業としてのコミットメントを表明 | 「中部電力グループ人権基本方針」改定 |
(2)人権デュー・ディリジェンスの実施 | 社内外で調査を実施して人権への影響を把握・特定し、特定した人権に関するリスクに対して予防策・対応策を実施 |
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(3)救済措置の整備 | 企業が引き起こし、又は助長する人権への負の影響に対して救済を可能にするプロセスを整備し、運用 | 救済窓口の整備と適切な運営 |
人権尊重のガバナンス体制
- 「CSR推進会議」は、代表取締役社長を議長とし、役付執行役員および中部電力パワーグリッド株式会社、中部電力ミライズ株式会社それぞれの代表取締役社長によって構成されています。
- CSR推進会議は、原則、年1回人権に関する議題を扱い、前年度取り組みの進捗確認、当年度計画の審議、人権デュー・ディリジェンスのモニタリングなどをおこないます。
中部電力人権啓発推進委員会で検討・決定した事項は、必要に応じて、経営執行会議などに報告します。
人権尊重の取り組み議論実績
開催日 | 議題 | 出席状況 |
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第8回CSR推進会議 2022年11月11日 |
事業活動における人権尊重の取り組み方向性 | 13名/15名 |
経営執行会議 2023年7月10日 |
人権基本方針改定 | 17名/17名 |
第13回CSR推進会議 2024年4月15日 |
2023年度活動実績の総括 2024年度活動の方向性 |
14名/17名 |
人権デュー・ディリジェンスの実施
中部電力グループ人権基本方針に基づき、人権デュー・ディリジェンスを実施しています。サプライチェーンを含めた当社グループのビジネスモデルにおいて関連する人権リスクを把握・評価し、優先度が高い人権リスクを定め、従業員およびサプライチェーンをはじめとするステークホルダーの人権尊重に取り組んでいます。
人権リスクの特定・評価
実効性が求められる人権デュー・ディリジェンスでは、中部電力の事業活動において発生の可能性がある人権リスクのうち、関連するステークホルダーと対話をおこないながら優先して取り組む人権リスクを下記手法を用い特定しました。
これらのリスクは、自社従業員、ビジネスパートナー、地域住民、お客さまだけでなく、女性や子ども、非正規雇用者、先住民の方々、移住労働者の方々を対象としています。
今後も内外の事業環境変化に合わせて、定期的に評価内容の点検・見直しをおこないます。
- 優先して取り組む人権リスク特定の手法
- STEP1: 調査・社内インタビュー
- 人権を取り巻く各種動向(国際規範、業界、ステークホルダーなど)調査
- 各事業会社、本社機能部門、グローバル事業本部を網羅した14部門にインタビューを実施
- 過去の訴訟事案や人権に関する相談・通報内容などを分析
- STEP2: 人権リスクの特定
- 国際人権基準やエネルギー業界特有の事情を踏まえ、人権リスクを網羅的に抽出
- 社内インタビューなどから示唆された当社に関わる人権リスク項目を特定
- STEP3: 人権リスクの優先順位付け
- 「人権侵害の発生の可能性」、「人権侵害の規模」、「人権侵害が及ぼす範囲」、「是正可能性(影響を被った被害者が、当該人権を享受していた元の状態に復帰できる可能性)」の観点からリスク評価し、特定した人権リスクをマッピング
- 優先順位付けをおこない優先的に取り組む人権リスクを特定
- 優先して取り組む人権リスク
上記の手法を踏まえ検討した結果、以下を優先して取り組む人権リスクとして特定しました。これらのリスクに対し、優先的に防止・是正・軽減措置を実施しています。
優先して取り組む人権リスク
長時間労働、労働安全衛生、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、先住民族・地域住民の権利、賃金の不足・未払、生活賃金、プライバシーの権利、児童労働、強制労働、差別、結社の自由
なお、優先して取り組む人権リスクは以下の人権リスクから、検討・特定しています。
適正賃金、適正な労働時間、労働安全衛生、社会保障を受ける権利、ハラスメント、強制労働、人身売買、移住移転の自由、結社の自由・団体交渉権、外国人労働者の権利、児童労働、テクノロジー・AIに関する人権問題、プライバシーの権利、消費者の安全と知る権利、差別(同一労働同一賃金など)、ジェンダーに関する人権問題、表現の自由、先住民・地域住民の権利、環境・気候問題に関する人権問題、知的財産権、賄賂・腐敗、サプライチェーン上の人権問題、紛争等の影響を受ける地域における人権問題、救済へアクセスする権利 など
防止・是正・軽減措置
是正や再発防止策が適切におこなわれるよう、発生事象を確認し、必要に応じてエンゲージメントやモニタリングを実施しています。
- 主な人権課題への取り組み
- 労働安全衛生
安全衛生委員会で事業場の安全にかかるリスクアセスメントをおこない、危険箇所を把握し、対策を実施。
把握した危険箇所例 対策 駐車場のホースが無造作に置いてあり、躓いて転倒する ・使用するホースは巻き取り式に取り替え
・未使用ホースは撤去夜間、本店西側通用口にチェーンが設置してあり、足を引っ掛けて転倒する(屋外) ・夜間、本店西側通用門を閉鎖するため、チェーンを設置しない運用に変更 また、従業員の安全を確保し、職場環境を持続的かつ効果的に改善するため、安全専門員による安全活動サポート(注)を実施 (2023年度実績:11事業場)
(注)安全専門員が各事業場を訪問し、文書確認、現場視察、インタビューなどを通じて、安全活動・安全管理の状況を体系的に把握する取り組み
- 地域住民の権利
再生可能エネルギーカンパニーにおいて、地域住民の方への戸別訪問時、設備工事によって発生し得る騒音についてご意見を聞き取り、防音シートを設置。
- プライバシーの権利、差別
中部電力ミライズの情報発信・コミュニケーションに対する不快経験者数を調査。2023年度は、人権侵害事象が発生していないことを確認したものの、引き続き把握調査実施予定。
- サプライチェーンに対する取り組み
- 取引先へのアンケート
リスク特定から評価の過程でサプライヤーに起因するような人権に関するリスクが発見された場合は、速やかにサプライチェーンの管理体制やそのスキームを強化する必要があります。当社ではサプライチェーンでの人権リスクの把握のために、毎年重要サプライヤーに対し、人権を含むCSR・ESGへの取り組み状況調査アンケートを実施しています。
- 新規取引先の承認プロセス
新規に合併、買収、合弁事業をおこなう投資などの個別案件の検討・決定に際しては、原則として投資部署の責任者((注)リスクオーナー)が案件ごとに労基法違反などに関するリスクの確認をおこないます。
(注)カンパニー社長、本店の部門長、事業会社社長
- 啓発・教育
中部電力グループ人権基本方針に則り、以下の施策を展開しました。
教育・啓発の時期と内容 | 2023年度の対象 |
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2023年12月 「人権尊重の取り組み」に関するeラーニング |
・中部電力3社従業員および派遣社員の計約16,000人 |
2024年2月 グループ人権連絡会 |
・グループ会社57社 |
2024年2月 人権啓発講演会 |
・グループ会社57社 ・中部電力3社の人権啓発推進委員長および委員 |
連結子会社への対応
2023年度より主要連結子会社約30社を対象に人権リスク評価および人権に関する教育を実施しています。 また、多様なステークホルダーへの防止・是正・軽減措置は、今後対象を拡大し、各社優先的なリスクから順次対応していきます。
人権デュー・ディリジェンスロードマップ
救済メカニズム
中部電力では、従業員だけでなく、あらゆるステークホルダーの皆さまからの人権に関する問題に適切に対応するため、相談・通報窓口を社内外に設けています。
人権侵害の申し立てがあった場合、速やかに調査し、人権への負の影響を是正する措置を講じます。2022年度においては、人権関係の相談窓口に寄せられた件数は31件あり、これらの相談に対しては必要な是正措置・再発防止策を取っています。
中部電力の救済窓口
労使関係について
中部電力では、従業員の結社の自由と団体交渉権を尊重します。
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