その他の記者会見

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平成25年2月度 電事連・社長記者会見

2013年02月15日
中部電力株式会社

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  • 本日、私からは、
  • LNG調達の課題と対応
  • 東清水周波数変換設備の30万kWの運用開始

について、お話しいたします。

LNG調達に関する課題と対応

  • 最初に、LNGの調達に関する課題と対応についてお話しいたします。特に、調達の安定性、経済性、柔軟性という3つの切り口に分けて、ご説明したいと思います。

【1.安定性に関する課題】

  • まず、LNG調達の安定性に関する課題についてお話しいたします。

(急増するLNG需要)

  • 世界のエネルギー需要は、中国・インドなどの新興国の経済成長に牽引されて増加を続けており、2035年には、石油換算で、現在の約120億トンから、約170億トンまで、4割程度増加すると言われております。特に環境負荷の小さい天然ガスの需要は、最も高い増加率で伸び続けると予想されています。
  • このような状況において、LNGについても、伝統的な買主である日本・韓国・台湾に加えて、インド・中国などの新興国による輸入が急速に増加しております。世界のLNG需要は、現在の約2億トンから、2025年には、4億トン程度にまで達すると言われております。したがって、急速に増加するLNG需要に十分見合う供給力を確保し、LNGの需給バランスを保っていくことが必要となります。

(需要増加に見合う供給源の開発)

  • そのためには、豪州等におけるLNGプロジェクトを、着実に開発していくとともに、米国・カナダという北米地域や東アフリカなど、新たな調達源と期待される地域においても、プロジェクトの新規開発を進めていく必要があります。
  • このような状況において、米国ではシェールガス革命の効果により、天然ガス生産量は、LNG換算で、現在の年間4億トン程度から、2020年には、5億トン程度にまで拡大すると想定されており、その一部がLNGとして輸出されることが、大いに期待されているところです。
  • ただし、米国からのLNG輸出については、国策等の観点から、数量が制限されるであろうと予想されており、輸出数量は、年間5千万トン程度に留まるという見方もあります。このため、米国からのLNG輸出のみでは、将来のLNGの供給力の不足をすべて解消することはできません。
  • 当社はLNGを安定的に調達するため、調達源の多様化に取り組んでいるところですが、同時に、こうした調達源の多様化を進めていくことを通して、買主として、LNG供給源の開発を支援していきたいと考えております。
  • 具体的には、すでにゴーゴンやイクシスといった、豪州の新規プロジェクトからの調達に合意しており、昨年には、米国のフリーポート社の子会社と、天然ガス液化加工契約を締結し、そこからのLNG調達を計画しております。また、カナダや東アフリカからの新規調達の可能性についても検討しております。
  • さらに、これまでは売主側の役割であったプロジェクト開発についても、LNG買主として、出資や事業参画という形で関わっていくことにより、LNG調達の安定性を確保していきたいと考えております。

【2.経済性に関する課題】

  • 次にLNG調達の経済性に関する課題についてお話しいたします。

(東アジアのLNG価格)

  • 日本のLNG調達価格は高いと言われておりますが、これは日本のみならず、東アジアのLNG輸入国すべてに共通する課題です。
  • 天然ガス需要が急増する東アジアでは、欧米と異なり、域内に天然ガス資源が乏しく、国際ガスパイプラインも整備されていないことなどから、天然ガスの調達手段が、LNGに限定されるという構造的な課題が存在します。この構造的要因により、現在の東アジアのLNG価格は、欧米の天然ガス価格と比べて、割高となっているのが実情です。こうしたLNGの価格差を縮小していくことは、重要な課題であると認識しております。

(価格ポートフォリオの構築)

  • 東アジアのLNG価格についての課題を解決するためには、現在はほとんど原油価格連動で決まっているLNGの価格体系を変えていく必要があると考えています。具体的には、欧米ガス価格に連動する価格や、LNG市況を反映した価格を導入するなど、価格体系の多様化に取り組む必要があると考えています。
  • しかしながら、例えば、欧米ガス価格連動の価格導入という一点をとりましても、売主との合意が必要であり、簡単に実現できるものではない、というのが実感であります。
  • このため、当社が参画するフリーポートLNGプロジェクトでは、自らがLNG生産者になって、米国ガス価格連動のLNGを、長期に亘って、確実に日本に持ち込むことにより、価格体系の多様化を進めていこうと考えております。

(合理的なLNG価格水準)

  • 一方で、新規LNGプロジェクトの開発には、巨額の投資を要します。したがって、LNG需要の増加に見合う供給源を、確実に開発していくためには、プロジェクトの開発を担保できる価格水準を、長期的に実現する必要があることにも留意しなければなりません。欧米との価格差を縮小しつつ、LNGプロジェクトの開発を促進できる、合理的な価格水準を実現できるようなLNG市場を形成することが、必要であると考えております。

【3.柔軟性に関する課題】

  • 最後に、LNG調達の柔軟性に関する課題についてお話しいたします。

(硬直的なLNG契約条件)

  • 現行のLNG取引は、長期契約に基づく相対取引が主流であり、2011年度は震災の影響でスポット調達の占める割合が一時的に大きくなりましたが、平常時は、1~2割程度です。
  • こうした流動性の乏しい取引環境において、買主は、LNGを安定的に調達するため、長期的な契約に合意する傾向にあります。また、大型電源の稼働状況等に応じて変動する自社のLNG需要に合わせて、調達数量を調節することにも、苦心しているのが現状です。
  • 当社は、長期のLNG調達契約において、
  • 事前に調達数量を調整できる割合を増やす、
  • 荷揚港の制限を撤廃する

など、契約条件の改善に努めてまいりました。

  • また、
  • 受入可能なLNGの品質制約の緩和、
  • 大型LNG船の受入を可能とする桟橋増強、
  • LNGタンクの増設

など、設備面での対策も進め、LNG調達の物理的な制約を緩和してまいりました。

(LNGスポット市場の創設)

  • しかしながら、こうした個別企業の取組みのみでは、十分な柔軟性を確保することはできません。LNG調達の柔軟性を飛躍的に高めるためには、平常時のスポット調達の割合を、2~3割程度にまで、拡大できる環境を整備することが重要であると考えております。
  • 近年では、オイルメジャーが保有する複数の供給源からLNGが供給される、いわゆるポートフォリオ供給が増えていますように、長期的な売り先が定まっていないLNGも、徐々に増加しております。
  • このような状況を活用しながら、LNGスポット取引を活性化するためには、LNGスポット取引の確実性や透明性を担保する取引市場を成立させることが必要であると考えております。すでに日本では、政府主導で、LNG先物取引市場の創設について、検討が始まっておりますし、中国や、シンガポールでも、同様の検討が進められていると聞いております。
  • LNGスポット取引市場の発展が、LNG調達にもたらすメリットは幅広く、柔軟性の向上のみに限られるものではありません。スポット取引市場における取引が活発化すれば、LNG市況に基づく、透明性のある価格指標の成立につながります。そして、透明性のある価格指標が活用されるようになれば、LNG調達の経済性も大きく高まることが期待されます。当社も買主として、その実現に向け、協力していきたいと考えております。

【4.結論】

  • 以上申し上げました通り、LNG調達のみに着目いたしましても、様々な難しい課題が山積しており、これらを着実に解決していくことにより、LNG調達の安定性・経済性・柔軟性を達成できると考えております。
  • 課題を解決するために、シェールガス革命により可能となる米国産LNGの輸入が、重要な対応策であることは明らかです。しかし、それのみでは、LNG調達の安定性・経済性・柔軟性を達成することはできません。新たな供給源の開発や、LNGスポット取引市場の創設など、様々な対策を実施していくことが必要です。
  • また、買主が積極的に課題解決に取り組むのは当然ですが、売主の協力や政府の支援も必要となります。LNG調達に関わるすべての関係者が力をあわせ、長期間に亘り、粘り強く課題の解決に取り組んでいくことが重要であると考えております。
  • 本日は、LNG調達の課題についてお話しいたしました。
  • 資源に乏しい我が国において、エネルギー安全保障は、国の最重要施策であります。
  • 当社といたしましても、いかなる情勢下においても、安定的、経済的かつ安全に電気をお届けすることが、使命であると考えております。
  • そのために、LNG火力に加え、原子力、石炭火力、再生可能エネルギー等の多様な電源をバランスよく組み合わせて、様々なリスクに強く、エネルギー安全保障に貢献できる電力供給を実現してまいります。

東清水FCの30万kWの運用開始

  • 続いて、東清水周波数変換設備の30万kWの運用開始についてお話しいたします。
  • 当社は、東日本大震災後、電力会社間における相互応援能力を強化するため、東清水周波数変換設備(東清水FC)の早期運開に向け全力で取り組んで参りました。
  • 2012年12月から実施してきた調整試験を完了し、周波数変換設備の電力融通能力30万kWの運用を、当初計画から約2年前倒して、本日、間もなく開始いたします。
  • 皆さまには運用開始を確認し、準備が整いましたら後ほど、改めてお知らせいたします。

(注)東清水周波数変換設備(東清水FC)は2013年2月15日に運開しました。

  • 東清水FCは、広域的な相互応援による電力需給の安定などを目的に設置されたものです。2006年3月には、10万kWの一部運用を開始いたしました。
  • 2012年11月に同変電所に通じている27万5千Vの駿河東清水線工事2回線の内、1回線が完了し、調整試験を経てこの度30万kWの運用開始となりました。
  • 今後、駿河東清水線の2013年度中の完工に向け、安全最優先で取り組んでまいります。
  • 当社は、電力の安定供給のため、今後も引き続き努力してまいりたいと考えております。
  • 私からは以上です。

参考



以上

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