
RESEARCHERS
原子力安全技術研究所
吉川 美奈子
MINAKO YOSHIKAWA
PROFILE
所属 | 原子力安全技術研究所 |
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研究・専門分野 | 原子炉材料工学、非破壊検査 |
学位 | 修士(工学)福井大学
(注)博士課程在学中(東北大学、2024.10~) |
趣味・好きなこと | ピアノ、ミュージカル観賞、ラーメン屋巡り |
研究キーワード | 材料工学、原子炉、中性子照射脆化、廃炉材、非破壊検査 |
(注)2025年2月取材時
吉川さんの専門分野を教えてください。
私の専門分野は原子炉材料工学と非破壊検査です。
特に、原子炉材料の脆化(注1)に関する研究をしています。
原子力に興味を持ったのは、中学生の頃ですね。当時、福島第一原子力発電所の事故が発生し、その対応や復興を目指していく様子をテレビで見て、新しい原子炉を作るよりも、事故が起こった場所をどう復興し、安全に片付けていくのかということに強い興味を抱きました。
この興味をきっかけに、大学院では迷うことなく原子力関連の研究室を選びました。そこで、クリアランス制度(注2)の対象物の測定・評価方法を学び、効率的な方法の検討を行ってきました。


中部電力に興味を持ったのは、私が就職先を考える時期に、中部電力がクリアランス対象物の再利用を積極的に進めていこうとしていたことです。
原子力の安全向上への強い意欲も大きな魅力でしたね。
研究職という職種があることを知り、自分の専門分野を活かして浜岡の再稼働や有効活用に貢献できると思い、入社を決めました。
(注1)脆化とは
材料がもろくなる現象。材料が衝撃や応力に対して割れやすくなる状態のこと。
(注2)クリアランス制度とは
原子力発電所の運転・保守や解体に伴って発生する放射性廃棄物のうち、極めて低い放射能濃度であることを国が確認したもので、放射能濃度が極めて低く人の健康への影響が無視できるレベル(自然界の放射線から受ける線量の1/100以下)であり、一般の廃材(金属、コンクリート、ガラスなど)と同様に再利用が可能。
現在の研究について、詳しく教えてください。

主なテーマは2つあります。
1つ目は原子炉材料で、特に原子炉の圧力容器材料の脆化に関する研究に取り組んでいます。
具体的には、中性子と呼ばれる燃料の核分裂で生じる微細な粒子の照射(衝突)を受けることで、圧力容器の材料がどのように脆化するか、その特性を細かく調査しています。
当社では、2019年度まで、廃止措置中のプラントから原子炉圧力容器の一部を採取し、実際に数十年間実機で中性子の照射を受けた材料の脆化の程度を調査してきました。私は2022年からプロジェクトに参加したのですが、これまで得られた知見や成果を確たるものにするため、現在は中性子に照射されていない材料の状態と比較する調査をすすめています。
材料の原子レベルでの変化や強度・耐久性の維持度を明らかにし、原子炉圧力容器の長期的な健全性を正確に評価するこで、今後の原子力発電所の安全な運転を支えることができると考えています。
また、テーマの2つ目として、非破壊検査技術の研究にも積極的に取り組んでいます。
この技術は、対象物を壊さずに金属の内部や表面のひび割れなどの状態を調べることができるため、原子力に限らず非常に高いニーズがあります。
特に、原子力発電所では、格納容器から部品を取り出すことなく、超音波を利用して傷の有無を確認し、安全性を評価することが求められています。これは、運転期間延長認可申請に伴う特別点検の中で重要な役割を果たすと期待されているので、今後もこの技術の確立に尽力していきたいと考えています。
吉川さんの研究における今後の目標や夢を教えてください。
浜岡原子力発電所の構内に研究所があるという地理的な利点を活かして、現場が近いからこそできる研究に取り組んでいきたいですね。
電力会社の研究員として、専門知識を高め続けることはもちろんですが、原子力発電所で働く方々との連携や人脈をすごく大切にしています。2年前に、原子力部門との間で「研究ネタ投稿BOX」という研究テーマ提案システムを導入し、現場のみなさんの声を、より直接的に伺えるようになりました。
今後は、いただいた意見やリクエストをもとに、実際の運用に役立つ研究を進めて、現場の安全や効率化につながる解決策を提供したいです。
また、いろいろな意見を取り入れて、独自の研究テーマを追求し続けることで、新しい技術や方法を考案して、原子力業界全体の技術革新に貢献するのも目標です。
未来のエネルギーの在り方を、より効率的で環境に配慮したものにするために、自分の力を活かせたらと考えています。

技術報告(技術開発ニュース)
研究内容(ポスター)
所属学会
日本原子力学会
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