
RESEARCHERS
電力技術研究所
中地 芳紀
YOSHIKI NAKACHI
PROFILE
所属 | 電力技術研究所 |
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研究・専門分野 | 電力システム工学、電力系統解析・制御 |
学位 | 修士(電気工学専攻)武蔵工業大学(現 東京都市大学) 博士(情報工学専攻)名古屋工業大学(注)中部電力入社後に取得 |
趣味・好きなこと | おやじキャンプ(おじさんだけのキャンプ)、80年代米ポップス(FMエアチェック世代)、競馬、小さいこどものお世話 |
研究キーワード | 電力システム工学、電力品質、系統解析、系統制御 |
(注)2025年2月取材時
中地さんの専門分野を教えてください。
系統運用部門の中でも「系統技術」と言われる分野です。
電力系統には火力や原子力・水力などの電源や、お客さま設備、昨今では太陽光発電設備などさまざまな機器が接続されています。
そんな中で、365日、絶えず安定した電力供給を実現するために、需給バランスの調整や電力の流れを監視・制御するのが「系統運用部門」の役割です。私はその中でも、電力の流れの制御、システムの安定性・電力品質を維持する「系統技術」を専門としています。
ちなみに、需給バランスの調整は「需給技術」と呼ばれています。

入社のきっかけは?
大学と大学院で、電力システムの効率的な数値解析手法を研究している中で、中部電力と共同研究をする機会がありました。当時は「自分の技術が実際に電力供給の現場で役立つかもしれない」と感じたのを覚えています。
そんな期待感と、私自身が中部地方出身だったことや大学教授からの薦めもあって入社を決めました。
これまで、どんな研究をされてきたのでしょうか。
長年、電力系統の解析とシミュレーション技術の研究を行い、特に基幹系統の電圧制御や異常現象解析に注力してきました。
当社では、太陽光発電の普及や設備の高効率化で電力の使われ方が変わる中、これを電力運用に反映するためにシミュレーションを活用しています。シミュレーションは電気を止めずに確認できる便利な方法ですが、結果の正確さを確保するために、実測データと比較し、精度を高めています。
こうして得た結果を運用に活かし、信頼性の高い電力管理を実現しています。
現在はどんな研究に取り組んでいるのでしょうか。

現在はマイクログリッド(注)技術に注力しています。
経営ビジョン2.0の制定に伴い、2021年から経営戦略本部とともにマイクログリッドの研究を行っています。
飯田市と環境省が進める脱炭素先行地域プロジェクトの一環で、メガソーラーいいだ周辺の飯田市川路地区で地域マイクログリッドを構築しています。
マイクログリッドの技術は、系統運用部門の電力需給制御技術と配電部門の運用・品質技術が一緒になって初めて実現できます。
今回、系統用蓄電池の設置やクラウドを使ったエネルギーマネジメントシステムの構築など、経験のない技術に挑戦しました。正直、手探りでしたが、関係者と力を合わせて試行錯誤を重ねた結果、2025年2月に「飯田マイクログリッド」として運用を開始することができました。
(注)マイクログリッドとは
平常時には再生可能エネルギーや小規模分散型電源、蓄電池を最適に運用することで、エネルギーの地産地消を進め、地域内の供給電力を脱炭素化することを目指す。また、万が一の災害時には、その地域だけで電力をまかなえる独立した電力網として機能するため、「レジリエンス(強靭性、回復力)」を強化できる。
今後の夢や目標について教えてください。
当社が、電力システム技術において、国内にとどまらず海外でもNo.1になることが夢です。
仕事を通じて何度か海外に行く機会がありましたが、当社の認知度がまだ十分ではないことを痛感しました。世界の舞台で当社の存在感を高めるためには、技術力をさらに向上させることが不可欠だと思っています。
具体的には、シミュレーション技術の向上やエネルギーマネジメントシステム(EMS)のさらなる高度化などにより、技術力を強化していきたいです。
また、海外の学会への積極的な参画を通じて、当社の技術力を広くアピールし、認知度を向上させることを目指しています。こうした取り組みを通じて、後進を育成することも私の重要なミッションだと考えています。

技術報告(技術開発ニュース)
研究内容
特許等
電力系統の短絡容量監視方法およびそのシステム(特許第5971692号)
所属学会
電気学会
CIGRE(国際大電力システム会議)
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