RESEARCHERS
電力技術研究所
大岩 徳雄
NORIO OOIWA
PROFILE
所属 | 電力技術研究所 |
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研究・専門分野 | 熱流体力学、熱力学 |
学位 | 修士(工学)名古屋工業大学 博士(工学)名古屋工業大学 (注)入社後、社会人ドクターとして取得 |
趣味・好きなこと | 野球、スキー、ウォーキング、読書 |
研究キーワード | 水素、アンモニア、バイオマス発電、資源循環、ソルガム、熱力学、熱流体力学 |
(注)2024年5月取材時
大岩さんの専門分野を教えてください。
「熱流体力学」・「熱力学」を専門としています。
興味をもったきっかけは、航空機や自動車の空力設計における流体解析画像を見て、その先進的なイメージにすっかり魅せられたこと。大学では主にプラスチック射出成型において、不良品が出来やすい樹脂の流れ方を数値解析シミュレーションするなどの研究を推進しました。大学院修了後は、自分の専門知識を活かしつつ、世の中を支えるインフラ産業でエネルギーに関わる仕事につきたいと思い、中部電力へ入社。
その後、現在まで、主に「エネルギー」に関わる分野で研究に取り組んでいます。
具体的には、どんな研究に取り組んできたのでしょうか。
入社後は、先輩が進めていたガスタービン火力発電の夏場の出力回復に関わる実証研究に携わりました。これは、ガスタービンは気温が高すぎると出力が下がるため、それを回復させる液体空気(注)などを用いたガスタービン吸気冷却技術で、私は、この実証試験を通して、火力発電所の現場を体験することができました。
その翌年からは、当時注目されていた分散型電源(マイクロガスタービン)の適用可能性評価やバイオマスガス発電の調査・検討といった新エネルギー分研究の担当に任命され、発電分野の幅広さや奥深さに夢中で取り組みました。それ以降、さまざまな発電システムの適用可能性評価やプロセス検討・改良などの研究に携わってきました。
直近10年ほどは「水素」・「アンモニア」について、火力発電所での混焼技術から始まり、水素製造に至るまで、幅広く研究を進めています。
具体的には、メタンの熱分解により水素と固体炭素を生産する「ターコイズ水素製造技術」や、アンモニアから水素を取り出す「アンモニアクラッキング技術」、の開発に取り組んでいます。
水素・アンモニアの実用化には技術的な課題がまだまだ多くありますが、、脱炭素社会実現にむけた水素・アンモニアのサプライチェーン構築のため、当社も取り組みを進めていく方針が出されました。今後も、引き続きこの分野で貢献できるよう技術を高めていきます。
(注)液体空気:空気を圧縮または冷却して液化した空気。沸点は1気圧下で摂氏零下約190度
水素・アンモニア研究への想いは。
私が水素・アンモニアに興味をもち調査を始めたのは、国内外のさまざまな企業で取り組みを積極的に推進され始めた頃でしたが、当時、社内では、水素・アンモニアに対する対応方針が定まっていませんでした。
研究を進めることに対する周囲からの疑問の声もある中、自身も多少迷いはありました。ただ、水素・アンモニアによる脱炭素社会の実現に向けた世のなかの動きは無視できなくなり、関連する技術や知見が必ず必要になると考え、独自で調査を進めていきました。
転機となったのは、既存火力発電所でのアンモニア混焼に係る国家プロジェクト(現在、JERAが碧南火力でおこなっている実証試験の足掛かり)へ2016年に参画したことです。ようやく本格的に研究に着手できるようになり、自身の中でも熱量が高まるのを感じました。
その翌年に、水素混焼の国家プロジェクトに参画した頃には、技術開発本部内でも水素・アンモニアに対する熱量や機運が高まりを見せはじめ、現在、多くの研究員が水素・アンモニア関連の研究を進めています。
最近では、技術開発本部の組織を跨いだクロスファンクショナルチーム(CFT)が立ち上がり、多くの水素・アンモニア関連研究が同時進行しています。その中で、私は「技術統括」という立場で関わっており、自分の研究も進めながら各研究に対し技術面からディスカッションをしています。
いずれ来るであろう「水素社会」の実現に向け、当社の専門技術を継続して高め続けたいと考えています。
今後の夢や目標について教えてください。
現在、水素・アンモニア分野に限らず、バイオマスや資源循環に関する分野でも、素材や燃料など有価物をどのように製造し、どのように利活用していくか、常に思考を続けています。そして将来的には、その研究成果を社会実装し、事業化へつなげていくことを目標としています。
それぞれが大規模プロジェクトですので、事業化に至るまでのプロセスは膨大ですし、それを推進する立場としてのプレッシャーも非常に大きいですが、社内外から注目されている分、やりがいも強く感じています。
同時に、研究の将来を見据え、このようなプロジェクトを担える後進人財を育成していくことも役目として考えており、さらに周囲を巻き込みながら、知見を伝えていきたいと考えています。
技術報告(技術開発ニュース)
研究内容(ポスター)
所属学会
日本機械学会
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