渡邉 将人

RESEARCHERS

原子力安全技術研究所

渡邉 将人

MASATO WATANABE

PROFILE

所属 原子力安全技術研究所
研究・専門分野 原子炉物理、放射能測定評価
学位 修士(原子核工学)名古屋大学
博士(量子エネルギー工学)名古屋大学(注)入社後、博士課程に在籍し取得
趣味・好きなこと ジョギング、筋トレ、資格取得(情報系・電気系に挑戦中)
研究キーワード 廃止措置、クリアランス、低レベル放射性廃棄物、放射能測定評価、放射線計測、遮蔽計算、放射化計算、炉心設計、AI

(注)2024年7月取材時

渡邉さんの専門分野を教えてください。

専門分野は「原子炉物理」や「放射能測定評価」です。
入社以降、最適燃料配置による燃料費の低減や、設備保全業務の合理化を目指す研究などに取り組みました。2010年頃からは、浜岡原子力発電所1、2号機の廃止措置のうち、主にクリアランス制度(注)を適用したい対象物(以降、クリアランス対象物)の放射能測定評価に関する研究などに取り組んでいます。

原子力に興味を持ったのは、中学生の頃にたまたま見た映画がきっかけでした。原子力発電所員が奮闘するサスペンス映画でしたが、運転員が身を挺して原子力発電所を守ろうとする、その使命感に燃える姿に感銘を受けたんですよね。また、発電所の制御室がまるで宇宙船のコックピットのようで、その巨大技術の「船長」になりたいと憧れたのも理由です。

渡邉さん

そうして進学した大学では、迷わず原子力を専攻し、原子炉物理学の研究室で沸騰水型軽水炉(BWR)の動特性の研究に没頭しました。
当時は映画の登場人物のような運転員を目指していましたが、機会を得て見学した中部電力の研究所で、放射線測定装置やガンマ線照射装置などの設備の充実ぶりに度肝を抜かれました。研究者の立場から原子力発電に関わることに魅力を感じ、研究職として入社しました。

(注)クリアランス制度とは
原子力発電所の運転・保守や解体に伴って発生する放射性廃棄物のうち、極めて低い放射能濃度であることを国が確認したもので、放射能濃度が極めて低く人の健康への影響が無視できるレベル(自然界の放射線から受ける線量の1/100以下)であり、一般の廃材(金属、コンクリート、ガラスなど)と同様に再利用が可能。

現在はどんな研究に取り組んでいるのでしょうか。

クリアランス対象物の放射能測定・評価技術の研究開発に取り組んでいます。
クリアランス対象物の再利用は、一朝一夕にできるものではありません。
クリアランス対象物を測定する前段階として、放射能をどのように測定・評価するか方法を考案し、国の認可を得る必要があります。その方法を開発するのが私のミッションです。

1、2号機の解体作業は現在進行形で進んでおり、この廃止措置で発生する解体物45万トンのうち、クリアランス対象物は約8万トンもあります。次々に廃棄物保管所に運び込まれるクリアランス対象物の処理をスムーズにおこなうために、いかに迅速かつ正確に放射能を測定・評価できるか、日々挑戦を続けています。

これまで、鉄などの金属廃棄物の放射能を評価する方法を2種類開発し、国の認可を得て、一部をクリアランス金属として再利用してきました。ただ、現在の方法は正確に測れる一方で、測定容器内に入れる際、対象物の形状や並べ方を同じにしなくてはならず、準備に大変な手間と時間がかかるという課題がありました。

それを効率化すべく、現在は、様々な形状の対象物を不均一に並べても正確に測定できる技術を開発中です。
3Dスキャンで多種多様なケースデータを取得しつつ、物理エンジンも駆使してランダムに収納するシミュレーションを繰り返しながら精度を高めているところです。一度の取り扱いで「大量に」「正確に」「迅速に」測定・評価する技術の確立を目指します。

大部分がクリアランス対象物

大部分がクリアランス対象物

クリアランス対象物の放射能測定の様子

クリアランス対象物の放射能測定の様子

測定容器内の対象物形状や並べ方がバラバラでも測定可能を目指す

測定容器内の対象物形状や
並べ方がバラバラでも
測定可能を目指す

クリアランス金属を再利用したグレーチング(浜岡原子力発電所構内)

クリアランス金属を再利用したグレーチング
(浜岡原子力発電所構内)

今後の目標や夢について教えてください。

先ほどもお伝えしたとおり、現在取り組む測定評価方法にはまだまだ改良の余地があると思っているので、妥協を許さず、更なる効率化を目指したいですね。
また、これまで認可を取得した鉄などの金属以外にも、コンクリートやグラスウールなど、多種多様な性状の廃棄物があり、それぞれに測定・評価方法を設定する必要があるんです。
1つの方法の認可を取得するには1年以上かかるため、正直骨が折れますが、いずれはそうした性状が異なるものにも適用できる汎用的な測定・評価方法を開発していきたいですね。

また、数年前から、AI技術を学び始めました。専門家の知見も得ながら、安全保護具が規定どおり正しく着用できているか瞬時にチェックする装置(通称:AIゲート)の開発導入など、発電所作業の効率化支援もおこなっています。様々な観点から廃止措置をサポートしていきたいですね。

現在、全国の電力会社で原子力発電所の廃止措置を進めていますが、測定・評価方法の認可を取得し、処理を進めるのは、商用軽水炉というタイプの原子炉では、実は、中部電力が国内第一号なんです。
先行事例がなく全てが手探りという状況で、予期せぬ困難に直面することもありますが、廃止措置のトッププランナーとしての自負を持ちながら、安全・安心な廃止措置を目指して突き進んでいきたいです。

渡邉さん

放射能測定装置

技術報告(技術開発ニュース)

研究内容(ポスター)

特許等

放射能評価方法及び放射能評価プログラム(特許第6228024)

スミヤ濾紙(特開2024-050149)

所属学会

日本原子力学会

日本保健物理学会

日本機械学会

関連リンク

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