成果・取り組み紹介
地域社会に貢献する融雪・落雪技術~安価かつ確実な融雪・落雪製品の開発~
背景と課題
豪雪地域では、近年高齢化とともに屋根の雪下ろしをする人や業者が減少しています。高齢者が屋根から落下する事故も多く発生し、雪処理にも多大な労力が必要となることが社会的な課題になっています。

開発の目的
既に商品化されている各種融雪・落雪製品の課題を把握するとともに、安価かつ確実な融雪・落雪システムを開発しました。本研究開発では、特に温水ヒートポンプ融雪、排熱利用融雪、電気ヒータ落雪について評価および開発をしました。
仕様と特長
- 温水ヒートポンプ融雪
通常、床暖房や輻射パネルで利用しているヒートポンプの温水を、降雪時のみ温水配管敷設マットに送り融雪するシステムです。融雪のために新たな熱源を必要とせず、後施工もできるため、大きな追加投資が不要です。なお、降雪時は別の熱源(ルームエアコン等)により部屋を暖房することになります。温水ヒートポンプ融雪システムの概要 融雪マットによる融雪の様子 - 排熱利用融雪
従来、換気扇から排気されていた建物内の暖房熱を、路面下に設置した空間に直接送り込むことで、一般的に用いられている温水ボイラや電気ヒータを使用する方式と比較し、ランニングコストを最小限に抑えつつ、省エネルギーで融雪するシステムです。寒冷地における除雪作業の省力化に向けた融雪システム(注1)の性能向上とさらなるコスト削減に向けた改良を進めており、松ノ木峠パーキングエリア(岐阜県高山市)にて実証試験を行っています。
(注1)本システムは(株)ホクスイ設計コンサルが開発したシステムです。排熱利用融雪システムの概要 融雪の様子 - 屋根落雪
屋根の棟つたいに電気ヒータを設置し、雪割の原理により頂上で雪を割ることで屋根に積もった雪を落雪するシステム(注2)です。豪雪地である長野県飯山市の民宿にて実証試験を行い、良好な結果を得ました。ランニングコストは電気代約200円/日であり、非常に低コストとなっています。本システムは雪庇対策としても有効であり、福島県や北海道で導入が進んでいます。
(注2)本システムは(株)テクノあいづが開発したシステムです。屋根落雪システムの概要 落雪の様子
解説動画
適用先
- 一般家庭の玄関・駐車場の融雪、屋根からの落雪
- 業務用ビル(事務所・PA・SA・コンビニエンスストア)前の歩道融雪、雪庇対策
共同研究先
中日本高速道路株式会社、福井大学、株式会社テクノあいづ
開発者のひとこと
冬になると雪処理に関する事故が頻繁に発生しており、毎年このニュースを見るたびに心を痛めていました。本研究により、安価かつ確実な融雪・落雪製品を開発・検証しましたので、降雪地域のお客さまが抱える雪の課題解決に貢献できれば嬉しく思います。