公開情報

再循環系配管改善超音波探傷試験結果

2003年7月15日点検情報3号機4号機

■4号機

昨年、原子炉再循環系配管の応力改善工事に先だって実施した超音波探傷試験により、2溶接線にそれぞれ1箇所のひび割れの徴候が確認されました。(昨年10月30日公表)この2箇所のひび割れの徴候について、国の「原子力発電設備の健全性評価等に関する小委員会」(公開)の検討に資するため、改良された超音波探傷法によるひび割れの寸法測定を実施し、また、当該配管を切断してひび割れ長さと深さを実測してまいりました。(2月26日公表)
この度、測定結果がまとまり、本日、国に報告いたしました。これらの測定結果から、改良された超音波探傷法による測定誤差は、従来の知見の範囲内に入っていることが確認されました。測定データは、今後健全性評価小委員会において評価される予定です。なお、ひび割れの徴候がそれぞれ1箇所ずつ確認された2溶接線につきましては、切断調査の結果、ひび割れが、それぞれ5箇所と2箇所であることがわかりました。
これにつきましては、昨年実施した超音波探傷試験は溶接線にひび割れがないことを確認することが目的であり、1箇所でもひび割れの徴候が確認された場合には応力改善工事はできないため、残りの部位の一部で確認されていた判断が難しいエコーについて、それ以上の探傷がなされなかったことによるものです。ひび割れは、その後の再確認試験において全数確認されています。詳細については、添付の「4号機 超音波探傷試験結果一覧」をご参照下さい。
切断調査を行った2溶接線と本年4月以降に行った応力改善工事対象外の溶接線の追加調査によりひび割れの徴候が確認された4溶接線については、取替を終了しました。(6月24日公表)


浜岡4号機 改良型超音波探傷試験の調査結果(測定値と実測値の比較)

 改良型超音波探傷試験(フェーズドアレイ法および端部エコー法(縦波+横波))の誤差は、いずれもこれまでに行われたUTS(発電設備技術検査協会「超音波探傷試験による欠陥検出性及びサイジング精度に関する確証試験」)の下限精度(4.4mm)以内でした。




4号機 原子炉再循環系配管の超音波探傷試験結果一覧(1/3)
(IHSI前試験~切断前確認)



(注) 溶接番号661-901-F13位置(3)及び661-A01-S01位置(1)は、ひび割れの徴候として既に公表したもの。
:斜線は実施していないことを示す。

(注1):

切断後の液体浸透探傷試験(PT)による再確認時の位置を記載。

(注2):

応力腐食割れ対策である高周波誘導加熱処理法(IHSI)施工による応力改善に際しては、施工の条件である溶接線にひび割れがないことを事前に確認する目的で超音波探傷試験が実施される。同試験により、当該溶接線に有意なエコーを1箇所確認した検査員は、残りの部位の一部で他の部位より高めで柱状晶伝搬エコーとの分離判断が難しいエコーを確認したが、既にIHSIが実施できないことを承知していたことから、それ以上の探傷を行わず、試験を終えた。IHSI対象の18溶接線のうち、本表に示す2溶接線以外の16溶接線については、詳細な探傷を行い、その結果有意なエコーは確認されなかった。IHSI施工前試験にて確認できなかったひび割れの徴候は、切断後の再確認試験(3/3頁に記載)において、全数確認されている。

(注3):

ひび割れの開口部と認識したが、先端部を明確に確認することができなかった。

(注4):

手動クリーピング波法では、45°斜角法で有意なエコーが確認された箇所を繰り返し詳細に探傷し、エコーを評価する。今回用いた自動装置による探傷は、全体の状況把握を目的としており、同一箇所を繰り返し詳細に探傷していないため、手動クリーピング波法並の精度がなく、検出されなかったものと推定。

(注5):

干渉物により自動探傷装置が取り付けられなかったため、試験実施せず。このため手動クリーピング波法により全周の探傷を実施。

(注6):

検査実施会社から当社への報告(H14.10.29)

(注7):

検査実施会社から当社への報告(H15.4.3)


4号機 原子炉再循環系配管の超音波探傷試験結果一覧(2/3)
(改良型UT~切断試験)



(注)

溶接番号661-901-F13位置(3)及び661-A01-S01位置(1)は、ひび割れの徴候として既に公表したもの。

:斜線は実施していないことを示す。

(注1):

切断後の液体浸透探傷試験(PT)による再確認時の位置を記載。

(注2):

PT結果より求めた内表面のひび割れの長さを示す。

(注3):

フェーズドアレイ法の評価は、目視読みとりが速報的な概略値であり、機械処理結果を正式な評価値とした。
端部エコー法の評価は、縦波、横波の測定結果の内、保守的に値の大きい方を評価値とした。
また、評価の〇印は、切断調査による実測深さとUT測定の下限誤差がUTS下限精度(4.4mm)を超えないことを示す。
なお、「超音波探傷試験による再循環系配管サイジング精度向上に関する確性試験」(平成15年4月17日~平成15年5月10日に改良UT試験実施)に用いられた改良UTは、今回の浜岡4号機での経験を踏まえ、更に技術的改善が図られている。

(注4):

ひび割れの開口部と認識したが、先端部を明確に確認することができなかった。

(注5):

ひび割れの徴候が確認されていなかったため、その部分に対する詳細調査は実施せず。

(注6):

2種類の端部エコー法で検査を実施していないため、評価対象外。

(注7):

検査員の年間被ばく量を考慮し、測定手法を厳選して実施を取りやめた。

(注8):

検査実施会社から当社への報告(H15.4.3)

(注9):

液体浸透探傷試験の実施確認日。

(注10):

断面写真等の記録確認日。


4号機 原子炉再循環系配管の超音波探傷試験結果一覧(3/3)
(切断後再確認検査/参考測定)



(注) 溶接番号661-901-F13位置(3)及び661-A01-S01位置(1)は、ひび割れの徴候として既に公表したもの。

:斜線は実施していないことを示す。

(注1):

切断後の液体浸透探傷試験(PT)による再確認時の位置を記載。

(注2):

浜岡で用いた改良UT(自動測定)は、開発途上のものであり本表の測定値等は参考値である。
その後、「超音波探傷試験による再循環系配管サイジング精度向上に関する確性試験」(平成15年4月17日~平成15年5月10日に改良UT試験実施)に用いられた改良UTは、今回の浜岡4号機での経験を踏まえ、更に技術的改善が図られている。

(注3):

ひびの開口部と認識したが、先端部を明確に確認することができなかった。

(注4):

45°斜角法および自動クリーピング波法で有意な指示がないため評価していない。

(注5):

検査実施会社から当社への報告(H15.5.22)


■3、4号機


昨年11月8日に国に提出した報告書(注1)に記載されている再循環系配管の過去の点検結果等のうち、健全性評価小委員会資料に反映されていなかった点検結果等をとりまとめ、本日、国に報告いたしました。

(注1)

「浜岡原子力発電所1号機および3号機再循環系配管に関わる検査、点検に関する調査結果の報告について」


:斜線は実施していないことを示す。
注1: 第7回定検時に行った研削エリアに発生したひびのため、研削深さの推定困難。
*1: 45度基本探傷において、各DAC20%を超える指示の中で最大波高値(DAC)が認められた探触子位置を示す。
*2: ひび深さの「-」は、端部エコー法で測定できなかったことを示す。
*3: 上段は点検総数、( )内は過去に点検したものと重複した数
下段は正味の継手数
*4: 研削後の最大深さであり、実際の深さはこの値以下である。
*5: 配管の内面PTにより確認したひび。
:誤記を修正しました。
:これまで最新研削データのみ記載していましたが、第7回定検でもひび割れの研削を実施していることから、データ等を追記しました。
:これまで、超音波探傷法による結果と研削結果を比較しやすいように並べて記載していましたが、第9回定検に認められたひび割れの徴候の研削は、第11回定検にて実施しているため、実施時期がわかるようにするとともにPTで確認されたひび割れデータを追記しました。
:これまで、超音波探傷法による結果と研削結果を比較しやすいように並べて記載していましたが、第10回定検に認められたひび割れの徴候の研削は、第11回定検にて実施しているため、実施時期がわかるようにしました。
:研削時のPT検査の実施の有無を明確にしました。
:もともとひび割れの深さに注目しており、研削データがないため記載していなかったPTによる長さ測定結果を追記しました。


:斜線は実施していないことを示す。
*1: 45度基本探傷において、各DAC20%を超える指示の中で最大波高値(DAC)が認められた探触子位置を示す。
*2: ひび深さの「-」は、端部エコー法で測定できなかったことを示す。
*3: 上段は点検総数、( )内は過去に点検したものと重複した数
下段は正味の継手数
*4: 研削後の最大深さであり、実際の深さはこの値以下である。
*5: 材料調査(注)における値。

(注):

第11回定期検査において,被ばく低減を目的とした再循環配管の化学除染作業に際して,除染液注入口として,インディケ-ションの確認された溶接部を切断した。切断した配管より材料試験片を採取し,内面性状や金属組織観察等の材料調査により,ひび割れを確認したが,その原因の特定には至らなかった。

:誤記を修正しました。
:データ等の記載を追記しました。
:研削時のPT検査の実施の有無を明確にしました。


:斜線は実施していないことを示す。
*1: 45度基本探傷において、各DAC20%を超える指示の中で最大波高値(DAC)が認められた探触子位置を示す。
*2: ひび深さの「-」は、端部エコー法で測定できなかったことを示す。
*3: 上段は点検総数、( )内は過去に点検したものと重複した数
下段は正味の継手数
:誤記を修正しました。

上記結果の表においては、変更した箇所を記載しております。


超音波探傷試験方法について

  • 従来型超音波探傷(注)
探触子で、パルス状の超音波を発信し、反射波を受信することにより、ひび割れの有無を確認する手法です。超音波の発信する角度は一定であり、超音波としては横波を用いており、一つの探触子を移動させて探傷する。

(注):探傷:構造物に超音波等をあてて中のひび割れを探知すること。

 
  • クリーピング波法
クリーピング波探触子を用いる手法で、超音波(横波)が媒質の境界面で反射するときに二次クリーピング波(縦波)を出す性質を利用したものである。
表面から内部へ超音波を入射し、配管内面に到達したときに金属から空気に媒質が変わるので、配管内面にほぼ平行に二次クリーピング波(縦波)が出される。この縦波がほぼ欠陥に垂直に当たるため、反射が大きく、感度が高いものである。
 
  • フェーズドアレイ法
多数の振動子を一列に配置した構造をしており、各振動子から発信する超音波のタイミングを連続的にずらすことにより、超音波の発信する角度(位相)に変化を与えて色々な角度から探傷する方法で、検査データの保存や画像評価ができる特長を有している。なお、縦波の超音波を使用する。  
  • 端部エコー法
より指向性の高い超音波を母材に入射し、キズの端部から反射される強いエコー(端部エコー)を用いて、キズの位置や深さを評価する方法。
深さ方向の測定は、探触子をキズに対して垂直に移動し、キズの開口部から超音波の反射波がなくなるキズの端部までの移動距離から深さを算出する。
 
DAC (Distance Amplitude Correction :距離振幅補正)
  • 探傷距離による超音波エコー高さの変化を補正すること。その曲線をDAC曲線という。

同じ傷でも、表面からの距離により、返ってくるエコーの強さが異なる(超音波が距離により減衰するため)。そのため、予め基準となる傷(孔)をつけた試験片を用いて、傷までの距離とオシロスコープに現れるピーク高さの相関関係をとっておき、相関曲線を作成する。これが距離振幅補正曲線、いわゆるDAC曲線である。測定したピーク高さと距離振幅補正曲線を比較し、ピーク高さが曲線上にあればDAC100%、ピーク高さが曲線に対し20%であればDAC20%などと呼ぶ。(社)日本電気協会電気技術規程「軽水型原子力発電所用機器の供用期間中検査(JEAC4205-2000)」においては、供用期間中検査において検出される指示は、DAC20%以上について、記録しその評価を行うこととしている。

以上

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