
RESEARCHERS
原子力安全技術研究所
稲垣 博光
HIROMITSU INAGAKI
PROFILE
所属 | 原子力安全技術研究所 |
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研究・専門分野 | 原子炉水化学 |
学位 | 修士(原子核工学)名古屋大学 博士(材料科学)北陸先端科学技術大学院大学 (注)入社後、社会人ドクターとして取得 |
趣味・好きなこと | 散歩(目標 12,000歩/日)、ゴルフ練習(目標 100切り) TOEIC勉強(目標 800点)、ひとりカラオケ(目標 90点) |
研究キーワード | 水化学、高温水腐食、放射能付着、被ばく低減、 放射線可視化、レーザー除染、ウルトラファインバブル |
(注)2024年5月取材時
稲垣さんの専門分野を教えてください。
専門分野は「原子炉水化学」、原子力プラントの水質管理による材料の健全性確保・放射線被ばくの低減を目的とする分野です。
原子力に興味を持ったきっかけは、高校の物理の授業でアインシュタインの方程式「E=mc2」を学んだこと。物質がエネルギーに変わる、こんな夢のようなことがあるのかと衝撃を受け、原子核工学科に入学しました。その後、大学院で放射能の化学挙動の研究に取り組み、中部電力に研究職として入社。入社後は「原子炉水化学」の研究に従事し、在社中に「放射能移行挙動の解明」をテーマに博士号を取得しました。

これまで、どんな研究に取り組んできたのでしょうか。

入社後は、博士研究テーマをベースに、原子力発電所内の作業場所における「放射線被ばく量の評価ツール」を構築し、作業者の放射線被ばく量低減を目指す研究をメインに取り組んでいました。
契機となったのは、東日本大震災後の2012年7月に、原子力発電のさらなる安全性向上に資することを目的として、「原子力安全技術研究所」が浜岡原子力発電所構内に設立されたことです。それまでは名古屋市内にある研究所で研究を進めていましたが、より発電所に近い場所で、現場で働く皆さんからニーズや課題を直接聞ける環境となりましたので、「現場へのお役立ち」を研究スタンスに追加。自身でも研究を進めながら、現場の多種多様な要望・課題(ニーズ)と、研究所が持つ技術や知見(シーズ)をマッチングさせる 「研究の企画・営業」のような立ち位置で取り組んできました。
現在の取り組みは。
現在は研究グループの長として、プラント運営・長期運転・廃止措置に資する技術開発などの研究に加え、カーボンフリーの水素利活用など、新たな領域の研究のマネジメントをおこなっています。こうした自社研究に加え、公募研究にも力を注いでおり、原子力の安全利用に必要な新しい技術の研究を、地元企業や全国の大学・研究機関と連携して進めています。
ちなみに、公募研究でおこなったテーマが別領域の研究に派生したものもあります。例えば「ウルトラファインバブル技術」は、当初は放射性廃棄物の効率的な除染方法として研究してきましたが、他分野への応用として、現在では魚の仔稚魚育成における環境改善・生残率向上など、地域の水産業に貢献する技術として期待されています。
今後の夢や目標について教えてください。
まず、私の専門分野でライフワークとする「放射線被ばく量の評価ツール」をほかの電力会社や海外に展開し、作業者の被ばく量低減に取り組んでいきたいと思います。
また、原子力安全技術研究所の設立メンバーのひとりとして、当研究所がより現場や地域の皆さまから頼られる研究所として存在感を発揮できるよう、研究のマネジメントのみならず、社内外のニーズとシーズをマッチングさせ、その成果を世の中に出す(社会実装)まで、最大限の取り組みをしていきたいですね。
私のポリシーでもありますが、「研究をおこなうこと自体を目的とする」のではなく、「研究を様々なステークホルダーからのご要望にお応えするためのツール」として活用し、研究所一丸となって、原子力発電事業に貢献したいと考えています。

技術報告(技術開発ニュース)
研究内容(ポスター)
特許等
- 放射線の表示方法、放射線表示装置(特許第6215530号)
- 原子炉冷却材浄化系のシリカ除去方法及びシリカ吸着量の推定方法(特許第6178095号)
- レーザ照射装置及び表面処理方法(特許第6602007号)
- 放射性有機ヨウ素除去装置(特許第5591598号)
所属学会
日本原子力学会、腐食防食学会、日本保全学会
関連情報
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