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2006年6月に発生した浜岡5号機低圧タービン羽根損傷の原因と対策
去る6月15日に発生しました、浜岡5号機の低圧タービン損傷トラブルにつきましては、皆さまにご心配をお掛けしております。
これまで原因の調査および対策の検討を実施してまいりましたが、その結果がまとまりましたのでお知らせいたします。なお、この結果については、10月27日、国に報告しており、11月6日に国から当社の原因の推定および対策の方向性について妥当であるとの評価が示されております。
(この内容は2006年11月6日の状況をもとに作成しています。)
トラブルの概要
浜岡5号機は、2006年6月15日午前8時39分、タービンが自動停止するとともに、原子炉が自動停止しました。このトラブルによる放射能の影響はありませんでした。
- その後、低圧タービンのカバーを外したところ、低圧タービン(B)の羽根1本が脱落し、タービン下部に落下していることを確認しました。(図1)
- 脱落した羽根は、羽根の根元取付け部(フォーク部)で折れ、羽根とタービン軸とを固定するためのフォークピンも一部が折れていました。(図2)
![図1、羽根1本が脱落した羽根車とカバーを外した低圧タービン(B)の写真。図2、羽根取り付け概要図。【図解】浜岡5号機系統概要図。改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)、定格電気出力138万キロワット、2005年1月営業運転開始。原子力発電所では、原子燃料の核分裂による熱で蒸気をつくり、その力でタービンをまわして発電しています。蒸気は海水で冷やされて水に戻り、繰り返し使われます。](/energy/nuclear/hamaoka/hama_info/kako/info_02/img/info_02_pho_01.gif)
点検・調査の結果
低圧タービンの点検結果
低圧タービン(A)(B)(C)のいずれにおいても、第12段の「羽根のフォーク部」および「タービン軸の羽根取付け部」の一部にひび割れ、折損が確認されました。
他の段の羽根については、異状は認められませんでした。
![【図解】低圧タービン(A)、(B)、(C)のひび割れ、損傷を確認した箇所。](/energy/nuclear/hamaoka/hama_info/kako/info_02/img/info_02_pho_02.gif)
破面の観察結果
損傷した羽根のフォーク部の破面を詳しく観察した結果、高サイクル疲労特有の模様を確認しました。
- 高サイクル疲労とは
金属材料に一定以上の力が繰り返して加わることにより、ひび割れが発生・進展し破損に至る現象です。
![フォーク部拡大図。羽根フォーク部破面には、ビーチマーク(高サイクル疲労特有の模様で、砂浜に残る波跡に似ているためビーチマークと呼ばれています。これからひび割れ進展の様子などを知ることができます。)がありました。](/energy/nuclear/hamaoka/hama_info/kako/info_02/img/info_02_pho_03.gif)
点検・調査のまとめ
今回の事象は5号機低圧タービン第12段の羽根特有の事象と推定しました。
原因調査の結果
詳細な調査の結果、高サイクル疲労によるひび割れが起きた原因は、5号機の試運転中に「ランダム振動(注1)」および「フラッシュバック振動(注2)」が同時に発生し、それぞれの振動による力が重なり合ったことによるものと推定しました。その後の試運転などでひび割れが徐々に進展しました。
(注1)ランダム振動とは
低出力時などにタービン内の蒸気の流れの乱れによって発生する不規則な振動
![蒸気の流れのイメージ図。低出力時などは、第12段にも大きな渦流が見られます。100%出力時には、蒸気の流れに乱れはありません。](/energy/nuclear/hamaoka/hama_info/kako/info_02/img/info_02_pho_04.gif)
(注2)フラッシュバック振動とは
試験時など急停止時にタービン内に蒸気が高速で逆流することによって発生する振動
![フラッシュバックのメカニズム。(負荷しゃ断試験時)(1)蒸気量が減少または蒸気がしゃ断、(2)タービン内の圧力が低下、(3)給水加熱器の圧力が低下、(4)給水加熱器内で減圧沸騰が発生、(5)蒸気が高速で逆流。](/energy/nuclear/hamaoka/hama_info/kako/info_02/img/info_02_pho_05.gif)
当時の知見では第12段までランダム振動の影響が及ぶことが認識されていなかったため、フラッシュバック振動との重なり合いを想定できず、設計段階での検証が十分ではありませんでした。
点検・調査のまとめ
5号機低圧タービン製作段階における設計上の問題であり、1~4号機で同様の事象が発生することはありません。
今後の対策
(A)設備面の対策
次の2つの対策を適切に組み合わせて実施することとします。
【対策1 第12段羽根の新規設計・製作】
第12段の羽根をランダム振動およびフラッシュバック振動を考慮して設計・製作したものに取り替えます。
また、タービン軸の羽根取付け部にひび割れがあるため、これについても新たに製作します。
【対策2 圧力プレートを設置して運転】
第12段の羽根を全て取り外し、代わりに「圧力プレート」を設置して運転します。(下図参照)
対策1には、検証試験などを含め相当な期間が見込まれるため、新しい羽根の設計・製作ができるまでの間は、対策2により運転することとします。
(B)設計管理面の対策
今後は、タービンの大型化の開発において、知見の適用範囲を十分精査し、試験・解析などにより確実に設計検証を行っていきます。
圧力プレートを設置した運転について
- 圧力プレートは、回転しないプレート(円盤)で、取り外した羽根があった時と同じように圧力を下げ、蒸気の流れを整える役割を果たします。
![【図解】圧力プレートの設置。第12段の全ての動翼・静翼を取り外し、第12段静翼の位置に圧力プレートを設置します。](/energy/nuclear/hamaoka/hama_info/kako/info_02/img/info_02_pho_06.gif)
- 原子炉は通常どおり運転しますので、原子炉の安全性に影響はありません。
- 圧力プレート設置による低圧タービンの他の段への影響はありません。
- 圧力プレートの設置により、タービンの効率が低下するため、電気出力が約8%低下します。(注3)
- 圧力プレートは火力発電所や原子力発電所の低圧タービンで使用実績があります。
- 今後、国による工事計画の審査・使用前検査を受けてまいります。
(注3)海水へ放出される熱がわずかに増加しますが、温排水による環境への影響は建設前の評価結果と変わりません。
トラブルの総評
当社では、今回のトラブルを教訓として、設計管理の改善を図るなど、再発防止に努めてまいります。
浜岡5号機は、地球温暖化問題にも対応しながら、安定した電気をお届けするための重要な電源のひとつです。
今後、国の審査や検査を受けるとともに、節目節目でその対応状況などについて、お知らせしてまいります。
今後とも安全を最優先に原子力発電に取り組んでまいります。